14:35 〜 14:50
[SGD03-04] 次期測地基準座標系の構築に向けた地殻変動モデルの検討
キーワード:測地基準座標系、地殻変動、変動モデル、衛星測位
要旨
国土地理院では、日本における位置の基準として測地基準座標系を定め、この測地基準座標系に基づいて電子基準点をはじめとした基準点の位置を測量成果として公開している。これらの測量成果が世の中の様々な測量や地図等の基準として用いられることで、全国で互いに整合した位置情報サービスを享受することができる。近年の衛星測位技術の進展に伴い、高精度な単独測位手法を用いた位置情報サービスの展開が予想されるが、この単独測位手法で得られる計測時点の位置座標を測地基準座標系に基づき作成された地図等と重ね合わせるためには、測地基準座標系の基準日(東日本:2011.5.24、西日本:1997.1.1)から計測時点までに発生した定常的な地殻変動によるズレを適切に補正しなければならない。
国土地理院では上記の地殻変動によるズレを適切に補正するために、従来のセミ・ダイナミック補正に代わるより高度な補正システムの構築を予定しており、定常的なプレート運動だけでなく、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震後の余効変動やその他の内陸地震等を考慮した地殻変動モデルの検討を進めている。本発表では、検討内容のうち余効変動の影響にテーマを絞り、東北地方における地殻変動モデルの検討・研究状況を報告する。
内容
本研究における地殻変動モデルの検討は、東北地方太平洋沖地震による余効変動が顕著な東北地方のGEONETの定常解析(F3解)を用いて行った。地殻変動モデルの作成及びその検証の手順は以下のとおりである。
東北地方6県に位置する電子基準点(データ品質の悪い点は除く)について、地震後の変動を表現するフィッティング関数を対数関数と指数関数の組み合わせで推定。 ①で求めたフィッティング関数の将来的な予測値精度を明らかにするため、フィッティング関数の推定に用いたデータ期間以降について、各関数による推定値とF3解を比較し、フィッティング関数が達成する予測精度を評価。 ①で求めたフィッティング関数に基づいて任意の時点の地殻変動量を算出し、クリギング法による空間補間を実施することで全国を網羅する任意の時点の地殻変動モデルを作成。空間補間の妥当性を評価するため、空間補間の入力点間に位置する任意の点について、GNSS連続観測の関数フィッティングと空間補間により推定した時系列変化を比較し、残差を評価。
結果と考察
データの使用期間を地震直後(2011/3/11)から2018/7/10までとし、関数を対数(Log)+対数(Log)+指数(Exp)の形としてフィッティングを実施した。フィッティング残差を確認したところ、全161点のRMS平均が、東西成分2.3mm(最大:5.1mm)、南北成分2.0mm(最大:3.1mm)、上下成分7.3mm(最大:12.5mm)となり、概ね1cm以内のRMSで時系列変化を表現できた。
次に予測精度の評価のため、データ使用期間以降の2018/7/11~2018/12/10の期間について、推定したフィッティング関数による計算値と実測値を比較した。残差は時間の経過とともに多少大きくなる傾向があるが、2018/12/1~12/10の残差を確認したところ、RMS平均が、東西成分2.6mm(最大:6.3mm)、南北成分2.3mm(最大:7.5mm)、上下成分7.5mm(最大:22.5mm)となり、概ね2cm以内の良好な整合性が得られた。今回の検証ではデータ使用期間が7年4ヶ月、予測期間は約5ヶ月半であり、余効変動の速度は地震直後に比べ小さくなっているため、フィッティング関数による予測が容易であると言える。しかしながら、地震後のデータ使用期間を2.5年より短くした場合、粘弾性緩和に係る時定数を正確に推定することができず、予測値精度が大きく低下する。データ使用期間が短い場合は、粘弾性緩和による影響を考慮した上で、フィッティング関数を推定する必要がある。
上記の作業により推定したフィッティング関数に基づき、クリギング法による空間補間を実施し、任意の地点における時系列変化(2011/3/11~2018/7/10)を推定した。推定した時系列変化の妥当性を評価するため、当該地点におけるGNSS連続観測による実測値との残差を計算したところ、空間補間におけるデータ入力点と推定地点の位置関係によって、残差にばらつきが生じた。周辺近傍(30km以内)を均等に取り囲むようにデータ入力点が存在する地点では、全期間を通して残差1cm以内に収まる傾向にあるが、近傍点の方向に偏りがある地点や、近傍(30km以内)にデータ入力点が存在しない地点では、時間の経過とともに残差が大きくなる傾向が見られ、地点によって残差(水平)が5cmを超える地点(2018/7/10)も見られた。 データ入力点が不足している地点の補間精度が低下することは一般的だが、現状の補間手法が東北地方における地殻変動モデルを作成する上で最適なものであるかを判断するため、今後はクリギング法の設定値や他の補間手法の採用を検討し、より高精度な地殻変動モデルの構築に取り組む予定である。
国土地理院では、日本における位置の基準として測地基準座標系を定め、この測地基準座標系に基づいて電子基準点をはじめとした基準点の位置を測量成果として公開している。これらの測量成果が世の中の様々な測量や地図等の基準として用いられることで、全国で互いに整合した位置情報サービスを享受することができる。近年の衛星測位技術の進展に伴い、高精度な単独測位手法を用いた位置情報サービスの展開が予想されるが、この単独測位手法で得られる計測時点の位置座標を測地基準座標系に基づき作成された地図等と重ね合わせるためには、測地基準座標系の基準日(東日本:2011.5.24、西日本:1997.1.1)から計測時点までに発生した定常的な地殻変動によるズレを適切に補正しなければならない。
国土地理院では上記の地殻変動によるズレを適切に補正するために、従来のセミ・ダイナミック補正に代わるより高度な補正システムの構築を予定しており、定常的なプレート運動だけでなく、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震後の余効変動やその他の内陸地震等を考慮した地殻変動モデルの検討を進めている。本発表では、検討内容のうち余効変動の影響にテーマを絞り、東北地方における地殻変動モデルの検討・研究状況を報告する。
内容
本研究における地殻変動モデルの検討は、東北地方太平洋沖地震による余効変動が顕著な東北地方のGEONETの定常解析(F3解)を用いて行った。地殻変動モデルの作成及びその検証の手順は以下のとおりである。
東北地方6県に位置する電子基準点(データ品質の悪い点は除く)について、地震後の変動を表現するフィッティング関数を対数関数と指数関数の組み合わせで推定。 ①で求めたフィッティング関数の将来的な予測値精度を明らかにするため、フィッティング関数の推定に用いたデータ期間以降について、各関数による推定値とF3解を比較し、フィッティング関数が達成する予測精度を評価。 ①で求めたフィッティング関数に基づいて任意の時点の地殻変動量を算出し、クリギング法による空間補間を実施することで全国を網羅する任意の時点の地殻変動モデルを作成。空間補間の妥当性を評価するため、空間補間の入力点間に位置する任意の点について、GNSS連続観測の関数フィッティングと空間補間により推定した時系列変化を比較し、残差を評価。
結果と考察
データの使用期間を地震直後(2011/3/11)から2018/7/10までとし、関数を対数(Log)+対数(Log)+指数(Exp)の形としてフィッティングを実施した。フィッティング残差を確認したところ、全161点のRMS平均が、東西成分2.3mm(最大:5.1mm)、南北成分2.0mm(最大:3.1mm)、上下成分7.3mm(最大:12.5mm)となり、概ね1cm以内のRMSで時系列変化を表現できた。
次に予測精度の評価のため、データ使用期間以降の2018/7/11~2018/12/10の期間について、推定したフィッティング関数による計算値と実測値を比較した。残差は時間の経過とともに多少大きくなる傾向があるが、2018/12/1~12/10の残差を確認したところ、RMS平均が、東西成分2.6mm(最大:6.3mm)、南北成分2.3mm(最大:7.5mm)、上下成分7.5mm(最大:22.5mm)となり、概ね2cm以内の良好な整合性が得られた。今回の検証ではデータ使用期間が7年4ヶ月、予測期間は約5ヶ月半であり、余効変動の速度は地震直後に比べ小さくなっているため、フィッティング関数による予測が容易であると言える。しかしながら、地震後のデータ使用期間を2.5年より短くした場合、粘弾性緩和に係る時定数を正確に推定することができず、予測値精度が大きく低下する。データ使用期間が短い場合は、粘弾性緩和による影響を考慮した上で、フィッティング関数を推定する必要がある。
上記の作業により推定したフィッティング関数に基づき、クリギング法による空間補間を実施し、任意の地点における時系列変化(2011/3/11~2018/7/10)を推定した。推定した時系列変化の妥当性を評価するため、当該地点におけるGNSS連続観測による実測値との残差を計算したところ、空間補間におけるデータ入力点と推定地点の位置関係によって、残差にばらつきが生じた。周辺近傍(30km以内)を均等に取り囲むようにデータ入力点が存在する地点では、全期間を通して残差1cm以内に収まる傾向にあるが、近傍点の方向に偏りがある地点や、近傍(30km以内)にデータ入力点が存在しない地点では、時間の経過とともに残差が大きくなる傾向が見られ、地点によって残差(水平)が5cmを超える地点(2018/7/10)も見られた。 データ入力点が不足している地点の補間精度が低下することは一般的だが、現状の補間手法が東北地方における地殻変動モデルを作成する上で最適なものであるかを判断するため、今後はクリギング法の設定値や他の補間手法の採用を検討し、より高精度な地殻変動モデルの構築に取り組む予定である。