日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD03] 測地学一般・GGOS

2019年5月27日(月) 15:30 〜 17:00 304 (3F)

コンビーナ:松尾 功二(国土地理院)、横田 裕輔(東京大学生産技術研究所)、若杉 貴浩(国土交通省国土地理院)、座長:原田 雄司(澳門科技大学)、松尾 功二

16:35 〜 16:50

[SGD03-10] 地磁気観測による地球回転経年変化への示唆

*浅利 晴紀1栗原 正宜1森永 健司1長町 信吾1 (1.気象庁地磁気観測所)

キーワード:地球回転、地磁気、経年変化、角運動量、核

気象庁地磁気観測所は茨城県石岡市柿岡を所在地とし、同地での地磁気観測では既に百年を
越える歴史を有する。日本の地磁気基準点としての測地的役割を担うと共に、観測技術の開発や
測器の検定に加え、高品質データの安定供給により科学研究や産業の発展を支えてきた。また、
人工衛星機動観測の参照となる定点観測データの即時提供が要求される近年では、世界観測網の
主要な観測所の一つとして、その高い信頼性の継続に益々の期待が寄せられている。
地磁気の変化は異なる起源と時間スケールを持つ多様な成分から構成されるが、地球中心核
に由来する主磁場の経年変化成分に関心が集まるようになったのは、膨大な人工衛星データの蓄
積が進んだごく最近のことである。以前は、その振幅の微小さゆえ、磁気圏・電離層および海洋
起源の磁場変化に埋もれて十分に認知されなかった。同成分の明確な検出に至れば、それは即ち
地球外核中の波動などの経年現象を解明する非常に貴重な鍵となり得る。外核金属流体の対流分
布に対しては地震や重力などの力学的観測量は十分な感度を持たず、観測からの解像は専ら地磁
気に依存するためである。ただし、外核流体運動の全体としての変化の解析には地球回転変化が
有用な観測量となる。
現在、地磁気観測所では過去約50年間分の経年変化の特定に最適化された月平均値データ
ベースの構築を進めている。他起源の擾乱成分を除外するため、データ日時の選定基準を検証し
、これを世界各地の観測所データに適用した結果、どの観測所においても約7割の擾乱成分が除
外されることがわかった。これにより長期にわたる外核流体の流れの経年変化がより鮮明に解像
されうる。本発表では、同調査の進捗と展望を報告し、特に地磁気観測から推定される外核流体
運動を通じて導かれる地球回転経年変化への示唆に議論の焦点を当てる。その中で、最新の両デ
ータからここ数年の加速度的な主磁場変化とLOD(地球の一日の長さ)変化の共通の成因と考え
られている外核流体の北半球高緯度におけるジェット流の時空間的特徴を示す。