日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL27] 地球年代学・同位体地球科学

2019年5月30日(木) 09:00 〜 10:30 A10 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:田上 高広(京都大学大学院理学研究科)、佐野 有司(東京大学大気海洋研究所海洋地球システム研究系)、座長:田上 高広佐野 有司

10:00 〜 10:15

[SGL27-04] 地震時に石英ガウジが光刺激ルミネッセンス(OSL)信号を消失する深度条件

*蓑毛 裕希1大橋 聖和1長谷部 徳子2三浦 知督3 (1.山口大学大学院創成科学研究科、2.金沢大学環日本海域環境研究センター、3.金沢大学)

キーワード:光刺激ルミネッセンス、活断層

K-Ar法,FT法,ESR法などの年代測定法を用いて,断層岩に記録された活動イベントの年代を特定しようとする試みがなされている(例えばMurakami & Tagami, 2004).提案されている手法の中でも,ルミネッセンス年代測定法は数十年〜数十万年前までの適用年代範囲を持ち,活断層の年代測定に適していることから,歴史地震を引き起こした断層での解析が行なわれている(雁澤ほか, 2013).また,石英ガウジの光刺激ルミネッセンス(OSL)信号がリセットする条件の速度依存性が実験的に検証され,すべり速度0.25 m/sから信号の減少,0.65 m/s以上では完全消失が確認された(蓑毛ほか, 2018, JPGU).本研究では,石英ガウジに対して様々な垂直応力条件下で剪断を加え,高速摩擦に伴ってOSL信号が低下〜消失することを確認した.そこから推定される,地震に伴うOSL信号の消失深度条件を発表する.出発物質は,兵庫県淡路島に分布する都志川花崗岩より抽出した粒径150 µm以下の石英粒子に,400 Gyのガンマ線を照射したものである.実験は回転剪断式高速摩擦試験機を用いて,垂直応力0.5–5.0 MPa,すべり速度0.65 m/s(一定)の条件で行なった.また,マグニチュード7前半の地震を想定し,すべり距離を2.1 mとした.OSL信号に対する破砕の影響を除くため,回収試料のうち75–150 µmの粗粒子のみを抽出し,信号測定を行なった.測定の結果,垂直応力0.5 MPaからOSL信号強度が消失し始めることが判った.0.5 MPaおよび1 MPa信号が完全に消失した粒子と依然信号を維持する粒子があり,アリコット(測定皿)ごとの信号強度の頻度はバイモーダルな分布をなす.一方,2.0 MPa以上ではすべての粒子が完全消失を示した.測定結果から,マグニチュード7前半の地震に伴う石英ガウジのOSL信号は,地下18〜36 mおよび地下72 m以上に相当する静岩圧下で年代値のリセットと完全リセットがそれぞれ起こることになる.

[引用文献]
Bateman, M.D., Swift, D.A., Piotrowski, J.A., Rhodes, E.J., Damsgaard, A (2018), Can glacial shearing of sediment reset the signal used for luminescence dating?. Geomorphology. 306, 90–101.
鴈澤好博・高橋智佳史・三浦知督・清水聡(2013), 光ルミネッセンスと熱ルミネッセンスを利用した活断層破砕帯の年代測定法. 地質雑, 119, 11, 714-726.
蓑毛裕希・赤瀬川幸治・大橋聖和・長谷部徳子・三浦知督(2018),石英ガウジが光刺激ルミネッセンス(OSL)を消失する地震・地質学的条件.JPGU, 2018.
Murakami, M., and T. Tagami (2004), Dating pseudotachylyte of the Nojima fault using the zircon fission-track method. Geophys. Res. Lett., 31, L12604, doi:10.1029/2004GL020211.

[謝辞]
本研究は,平成27〜30年度原子力施設等防災対策等委託費(野島断層における深部ボーリング調査)事業の支援を受けています.