日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL27] 地球年代学・同位体地球科学

2019年5月30日(木) 10:45 〜 12:15 A10 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:田上 高広(京都大学大学院理学研究科)、佐野 有司(東京大学大気海洋研究所海洋地球システム研究系)、座長:佐野 有司田上 高広

11:30 〜 11:45

[SGL27-08] 高圧合成試料に基づくメソシデライト・ジルコンのHf-W年代測定

*小山 雄大1高畑 直人1佐野 有司1杉浦 直治1小池 みずほ2羽場 麻希子3坂田 周平4桑原 秀治5入舩 徹男5 (1.東京大学、2.宇宙航空研究開発機構、3.東京工業大学、4.学習院大学、5.愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)

キーワード:ハフニウム-タングステン年代測定、ジルコン、メソシデライト、高圧合成、ナノシムス、相対感度係数

Hf-W年代測定は、182Hfが半減期8.9 Myr(Vockenhuber et al., 2004)で安定同位体182Wへ壊変することを利用した手法である。Hfは親石性元素であるのに対し、Wは親鉄性元素であるため、原始惑星及び隕石の母天体におけるマントルとコア分離の年代を議論する上でHf-W年代測定は重要である。しかしながら、U-Pb年代測定に適し、熱変性に強い性質を持ち、初期太陽系の環境を知る上で重要な鉱物であるジルコン(ZrSiO4)に対して、In-situ (その場)でHf/W比を測定する際には困難が伴う。In-situ分析においては一般に、主成分のマトリックス効果による微量元素の感度の変化を避けるために、マトリックスが同じで測定元素の濃度が既知のスタンダードを準備する必要がある。ところが、ジルコンの結晶中にはWがほとんど取り込まれないため、測定に十分かつ均質なW濃度を持ち、スタンダードとして用いることができるジルコンは存在しない。したがって、これまでに行われてきたジルコンのHf-W年代測定においては、Hf/WのRSF(相対感度係数)を決定するためにW濃度既知のスタンダードジルコンを用いず、間接的な方法を用いて未知試料ジルコン中のHf/W比が求められてきた(e.g., Ireland & Bukovanská, 2003; Koike et al., 2017)。本研究では、In-situ分析においてジルコンのHf/Wに対する感度をより直接的な方法で決定できる方法を確立するために、十分な量のタングステンを含む標準ジルコンを作成した。はじめに、高純度のジルコン粉末に酸化ハフニウムと酸化タングステンを混合した。次に、混合物を高エネルギーボールミルで微粉末に破砕したのちに、愛媛大学のマルチアンビル装置を用いた高圧焼結により標準ジルコンを作成した。その際、約1700 ℃以上の高温にすると、ジルコンが熱分解し(Kanno & Suzuki, 1987)、Wが偏析する恐れがあるので、合成セルは1000 ℃、6 GPaの条件で3時間保持した。作成したジルコンのHf/W比は学習院大学のLA-ICPMS装置で確認した。更に、その合成スタンダードジルコンを基準として、東京大学大気海洋研究所のNanoSIMSを用いた30 μmスケールの空間分解能によるHf-W年代測定をメソシデライト中のジルコンに応用した。その結果、ジルコンのHf-W年代が報告されているメソシデライト(Asuka 882023)に対して、先行研究(Koike et al., 2017)と調和的なHf-W年代が得られた。