日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL28] 地域地質と構造発達史

2019年5月27日(月) 09:00 〜 10:30 A09 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:大坪 誠(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、細井 淳(産業技術総合研究所地質調査総合センター地質情報研究部門)、座長:大坪 誠(産業技術総合研究所  地質調査総合センター 活断層・火山研究部門)

10:15 〜 10:30

[SGL28-06] 付加体における石灰岩の保存とテクトニクス

*脇田 浩二1 (1.山口大学大学院創成科学研究科)

キーワード:石灰岩、付加体、海台

付加体は、基本的に海洋プレート層序から構成されていることは、多くの研究者によって明らかにされてきた.ただし、海洋プレート層序において、石灰岩と玄武岩が担う役割は特別である。海洋底玄武岩の上に堆積して整然とした層序をなすチャートや珪質泥岩と異なり、海底火山の山頂部で形成され、付加体に取り込まれるため、本当の意味で、”層序“をなしているわけではない。しかも、他の深海堆積物や海溝充塡堆積物と異なり、付加体にどのように取り込まれるのかは、現在の付加プリズムを研究しても、その答えは得られていない。秋吉帯では、石炭紀からペルム紀に形成された秋吉石灰岩が海溝で崩壊し、付加体中に取り込まれたと解釈されている。確かに、日本海溝などでは、第1鹿島海山が海溝で崩壊し、岩塊となって崩れている様子が観察できる。しかし、残念なことに、これらの礁成石灰岩の崩壊堆積物は、造構性侵食場である日本海溝沿いでは、付加体に取り込まれることなく、地下深部までもたらされてしまう。一方、付加体を形成する南海トラフ沿いの収束境界では、固結した海底火山が水をたっぷり含んだ付加体構成堆積層の中に”押し入り”、付加プリズム側を崩壊させたのち、海洋プレートと共に、地下深部まで沈み込んでゆく。このように見ていくと、現在の収束境界において、海底火山上の礁成石灰岩を付加体の中に取り込むことは、困難なように思える。しかし、現実に、日本の付加体には、海底火山上の石灰礁を起源とするとみなされている石灰岩が、多く知られている。この謎を解明するために、石灰岩を含む付加体の特徴を検討してみることにした。日本の石灰岩は、大きく分けると3つの地質体に分布している。古い方から、中-後期ペルム紀の付加体(秋吉帯)、中期ジュラ紀の付加体(美濃帯の舟伏山ユニットなど)、前期白亜紀の付加体(秩父帯南帯の三宝山ユニット)である。石灰岩を含むこれらの地質ユニットは、ある地質帯の最後かあるいは、それに近い時代に形成されたという共通点がある。この不思議な符合は、何を意味するのであろうか?これまで付加体のギャップは、海嶺の沈み込みや造構造性侵食などが原因として推定されている。しかし火成作用の変遷も重要である。砕屑性ジルコンによる研究によって、付加体が存在しないギャップと砕屑性ジルコンの量が著しく減少する傾向が一致することが判明した。ここの砕屑性ジルコンの減少は、ジルコンを供給する火成作用が、堆積物を供給する場から遠ざかったことを意味している。これは, 海台の沈み込みなどによって引き起こされるスラブの低角沈み込みと、それに伴う火山フロントの大陸側への後退などが要因として考えられる.このように低角沈み込みなどの特殊な状況が、石灰岩の海溝部での付加に何らかの関わりがあった可能性がある。