日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL28] 地域地質と構造発達史

2019年5月27日(月) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:大坪 誠(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、細井 淳(産業技術総合研究所地質調査総合センター地質情報研究部門)

[SGL28-P05] 立体斜度図を用いた地形判読で見出された北上山地,遠野-栗橋花崗岩体の環状断層

*土井 宣夫1白澤 道生2横山 隆三2 (1.岩手大学地域防災研究センター、2.(株)横山空間情報研究所)

キーワード:遠野-栗橋花崗岩体、立体斜度図、環状断層、平行断層、遷移線、コールドロン

北上山地最大の遠野-栗橋花崗岩体の地形判読を実施した.判読には5mメッシュDEMから作成した10万分の1立体斜度図(CVESマップ;横山ほか,2012)を用いた.新たに見出された環状断層(ring fault;RFと略)は遠野北部岩体東半と同南部岩体および栗橋岩体にある.遠野北部岩体のRFは環(直径約13km)の東部に当る二重の弧状断層で,断層に沿って花崗斑岩が貫入する.同南部岩体のRFは長楕円形(長径約11km,短径約4km)で,長軸は西隣の人首花崗岩体の伸長方向と平行である.栗橋岩体のRFは長径約11kmで二重である.これらのRFはコールドロンの深部構造に相当しよう.
遠野北部岩体は時代の異なる累帯深成岩体からなる(西村ほか,1999)が,岩体周縁の古期岩体は環状の台地,岩体中心の新期岩体は大きく侵食された低い丘陵地である.両地形は環状に分布する急斜面で分離され,斜面上端と下端に遷移線が認定され追跡される.台地をつくる古期岩体は新期岩体の接触変成作用を受けて再結晶化して堅硬になり,台地として残存していると考えられる.
遠野-栗橋岩体には東北東-西南西ないし東西方向の平行した断層(parallel fault;PFと略)が多数分布し,中には長さが10kmに達するものがある.PFは古期岩体のみに分布し,母岩古生層には連続せず,新期岩体には分布しない.したがって遠野-栗橋岩体の形成史は,古期岩体貫入とRF(コールドロン)形成,PF形成,新期岩体貫入と古期岩体への接触変成作用の順となり,古期岩体と新期岩体の間にはPFが形成された時代に相当する年代差があることになる.

引用文献:横山ほか(2012)JpGU,HGM21-09.;西村ほか(1999)地質学論集,no.53,177-188.