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[SMP32-03] ジルコンのU–Pb年代および希土類元素組成にもとづいた三波川変成帯エクロジャイトユニットの形成モデル
キーワード:三波川変成帯、ジルコンU–Pb年代、希土類元素
太平洋型造山運動によって形成された低温高圧型変成帯の岩石は過去に沈み込んだ表層物質であり、その地球年代学的な研究は、表層における原岩の形成から、深部への沈み込み、そして再び表層へと上昇していく過程のタイムスケールの理解につながる。
西南日本外帯に存在する三波川変成帯は、主に白亜紀中期から後期に海洋地殻物質や表層削剥物質が沈み込みにともなう低温高圧型変成作用により生成した変成岩類で構成されている。特に四国中央部別子地域には、三波川変成帯の中で最も深いエクロジャイト相相当の深度まで沈み込んだ“別子エクロジャイトユニット”として認識されている地質ユニットが存在する。しかし、その原岩形成やエクロジャイト相変成作用が起きた年代については未解決である(e.g. Okamoto et al., 2004; Wallis et al., 2009)。
この問題を解決するため本研究では、別子エクロジャイトユニットからジルコンを抽出し、そのU-Pb年代と希土類元素組成から原岩の堆積年代およびエクロジャイト相変成年代の制約を試みた。抽出されたジルコンは火成作用で形成されたと考えられるコアと変成作用で形成されたと考えられるリムを持つ。それぞれの領域の年代分析から、別子エクロジャイトユニット中にはca. 120Maとca. 100-90Maに堆積・沈み込みを開始した2つの岩石が存在することが改めて確認された。コンドライト値で規格化したジルコンリム部の希土類元素パターンは、コア部とは異なり、Euの負異常を示さず、重希土類元素に枯渇していることを示した。このことは、リム部は斜長石の分解とザクロ石安定下で形成、つまりエクロジャイト相相当の変成条件で形成されたことを強く示唆する。また、これまで別子地域や汗見川地域から報告されている三波川ジルコン年代(e.g. Endo et al., 2018; Aoki et al., 2019)を考慮すると、ca. 100-90Maに堆積・沈み込みを開始した岩石は別子エクロジャイトユニット以外の領域にも広範囲に分布することから、別子エクロジャイトユニットを独立した1つのユニットとして認識するには問題があるといえる。本研究データと地質構造を組み合わせると、別子エクロジャイトユニットとされた領域には、原岩と変成年代がともに異なる2つの変成岩ユニットが接して存在すると考えられる。おそらく現在見られる地質構造は、① ca.120Maに沈み込んだユニットがエクロジャイト相の深度まで沈み込み、ca. 90Maまで滞留する、② ca.100-90Maに沈み込んだユニットの最高変成度部がca. 90Maにエクロジャイト相に達し、そこで、①のエクロジャイトと接合し、その後ともに上昇、というプロセスで形成されたと考えられる。
西南日本外帯に存在する三波川変成帯は、主に白亜紀中期から後期に海洋地殻物質や表層削剥物質が沈み込みにともなう低温高圧型変成作用により生成した変成岩類で構成されている。特に四国中央部別子地域には、三波川変成帯の中で最も深いエクロジャイト相相当の深度まで沈み込んだ“別子エクロジャイトユニット”として認識されている地質ユニットが存在する。しかし、その原岩形成やエクロジャイト相変成作用が起きた年代については未解決である(e.g. Okamoto et al., 2004; Wallis et al., 2009)。
この問題を解決するため本研究では、別子エクロジャイトユニットからジルコンを抽出し、そのU-Pb年代と希土類元素組成から原岩の堆積年代およびエクロジャイト相変成年代の制約を試みた。抽出されたジルコンは火成作用で形成されたと考えられるコアと変成作用で形成されたと考えられるリムを持つ。それぞれの領域の年代分析から、別子エクロジャイトユニット中にはca. 120Maとca. 100-90Maに堆積・沈み込みを開始した2つの岩石が存在することが改めて確認された。コンドライト値で規格化したジルコンリム部の希土類元素パターンは、コア部とは異なり、Euの負異常を示さず、重希土類元素に枯渇していることを示した。このことは、リム部は斜長石の分解とザクロ石安定下で形成、つまりエクロジャイト相相当の変成条件で形成されたことを強く示唆する。また、これまで別子地域や汗見川地域から報告されている三波川ジルコン年代(e.g. Endo et al., 2018; Aoki et al., 2019)を考慮すると、ca. 100-90Maに堆積・沈み込みを開始した岩石は別子エクロジャイトユニット以外の領域にも広範囲に分布することから、別子エクロジャイトユニットを独立した1つのユニットとして認識するには問題があるといえる。本研究データと地質構造を組み合わせると、別子エクロジャイトユニットとされた領域には、原岩と変成年代がともに異なる2つの変成岩ユニットが接して存在すると考えられる。おそらく現在見られる地質構造は、① ca.120Maに沈み込んだユニットがエクロジャイト相の深度まで沈み込み、ca. 90Maまで滞留する、② ca.100-90Maに沈み込んだユニットの最高変成度部がca. 90Maにエクロジャイト相に達し、そこで、①のエクロジャイトと接合し、その後ともに上昇、というプロセスで形成されたと考えられる。