日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP33] 鉱物の物理化学

2019年5月29日(水) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:鎌田 誠司(東北大学学際科学フロンティア研究所)、鹿山 雅裕(東北大学大学院理学研究科地学専攻)

[SMP33-P03] Hコンドライト隕石の変成温度解析:改良型Lindsley輝石温度計による

*上原 亮1桑原 義博1島田 和彦1中牟田 義博1上原  誠一郎1足立 達朗1 (1.九州大学)

キーワード:Hコンドライト、Lindsley輝石温度計、コスモクロア輝石、最高到達温度、オニオンシェルモデル

1. はじめに
 これまで小惑星の熱進化モデルについては多くの研究者が議論を展開してきた(Wood, 1979; Miyamoto et al., 1981; Yomogida and Matsui., 1984; McSween et al., 2002)。この熱進化モデルを考える上での重要なパラメーターとして,コンドライト隕石母天体の最高到達温度,年代,冷却速度などが挙げられている(McSween et al., 2002)。これらのパラメーターの中でも,母天体内部の最高到達温度については様々な地質温度計を用いて求められてきた(Olsen and Bunch, 1984; Nakamuta and Motomura., 1999; Kessel et al., 2002; Slater-Reynolds and McSween., 2005)。中でも, Lindsley. (1983)による輝石温度計は他の温度計とは違い,同じ隕石内で斜方輝石(Opx)と単斜輝石(Cpx)の各々から温度を求めることができることから広く用いられてきた。しかし,これまで報告された単斜−斜方輝石間の温度差が50〜100℃程度と大きいことから,斜方輝石と単斜輝石で得られる温度のどちらが実際の変成温度を表しているのか,多くの議論がなされてきた。これを受けて,Nakamuta et al . (2017) は隕石中に存在する単斜輝石にコスモクロア輝石成分を考慮し,従来のLindsley輝石温度計にその成分を加えた改良型Lindsley輝石温度計を提案した。これにより,LLコンドライト隕石中の単斜輝石と斜方輝石から得られた変成温度の差が20℃未満と,従来の輝石温度計を用いた先行研究の結果より精度の高い結果が得られることを報告した。本研究ではNakamuta et al. (2017)が考案した改良型Lindsley輝石温度計を用いて,Hグループに属する変成度の異なる3タイプの隕石の変成温度の推定を行った。ここでは,その結果について報告する。
2. 試料と方法
 本研究で用いた試料は,Edmondson(b) (H4),Faucett (H5),Faith (H5),Plainview (H5),Mulga(north) (H6),Great bend (H6),NWA7875(H7)である。まず,試料毎に薄片を作成し,偏光顕微鏡,反射顕微鏡を用いて組織観察を行った。その後,電子プローブマイクロアナライザ[EPMA (JEOL JXA-8530F)] を用いて,斜方輝石(Opx), 単斜輝石(Cpx)に加え,カンラン石,斜長石の多結晶粒子に対する化学分析を行った。これらの結果を元に,各隕石試料の分類を再確認すると同時に,改良型Lindsley輝石温度計による変成温度解析を行った。
3. 結果と考察
 隕石試料の組織観察及び化学分析の結果,各隕石の分類(H4, H5, H6, H7)に間違いがないことを再確認した。改良型Lindsley輝石温度計による変成温度推定については,Edmondson(b) (H4),Faucett (H5),Faith (H5),Plainview (H5),Mulga(north) (H6),Great Bend (H6),NWA7875 (H7)において各々779-1236℃(Opx-Cpx),814-875℃,832-843℃,844-838℃,807-797℃,811-818℃,1183-1247℃という平均値が得られた。H5,H6のほとんどの隕石試料ではOpxとCpxとの差は20℃未満に収まっている結果となった。
 このことから,Nakamuta et al. (2017)による改良型Lindsley輝石温度計はHコンドライト隕石でも有効であることが示唆される。H5タイプであるFaucett,Faith,Plainview隕石の変成温度は840℃程度,H6タイプであるMulga(north),Great Bend隕石は810℃程度,H4タイプであるEdmondson(b)隕石はOpxから判断して780℃未満であったであろうと推定される。H7タイプであるNWA7875隕石に関しては,以前H5あるいはH6であったものが衝撃変成作用によって,組織の一部が溶融され,母天体内部の熱変成作用による最高到達温度が上書きされたことを反映していると思われる。
 これらの推定温度データとMonnereau et al.(2013)によって報告されているモデルシミュレーションとの結果の比較により,Hコンドライト隕石母天体は集積期間が短い(<0.2Myr)場合に形成されるオニオンシェル型の内部熱構造をとっていたと推定される。