16:00 〜 16:15
[SSS09-03] 地震発生時系列(M-Tダイアグラム)に出現する平行と収束の増加傾向
キーワード:M-T 図、地震時系列、平行時系列、収束時系列
通常、地震の時系列は、地震発生の特殊性により、連続量として扱えないので、余震やくり返し地震など特別な系列が議論されるのみである。ところが、ある領域でカタログから時系列を引き出してみる(M-Tダイアグラム。ここでMはマグニチュード、T は発生時刻)と、ほとんどの場合、増加傾向の特徴が見て取れる。例えば海域も含めて日本列島のほぼ全体を2000年以降, 現在まで、深さ50kmよりも浅く、M>5.5 という条件のもとで時系列を表示し、詳しく目視する。すると2002年から2005年の間、約13個のM>6 の地震が増加傾向の直線にならぶ。ただしこのとき、この並んだ地震の直線からかなり離れるものが3個ほどあるが、これらは除外して考える。余震でも繰り返し地震でもそれぞれ厳しい条件のもとで、同じ傾向のものを選んで議論しているが、それらと同じことである。驚くことに、この直線を時間の経過方向に延長すると、2011年3月11日東北沖地震のM9の値に結び付く。この事実はとても偶然とは思えない。
このような「直線的に増加する系列」に注目した見方をすると、2000年以降で、2002年から2005年までの傾きとほとんど同じ傾きの数本の直線が、他の期間にも見られることがわかる。この数本の時系列は平行であり、あるMの値で増加は中断される。これらを平行時系列と呼ぶことにする。
時系列全体をよく見ると、もう一つの重要な特徴がある。それは東北沖地震のMの値に結び付く時系列は前に述べた1本だけではなく、そこへ収束するような複数の時系列があることである。先のものより傾きが大きいものが3本あり、傾きの小さいものが1本識別できる。Mが7より大きな地震の場合、これらに向かって収束する時系列は顕著である。このように平行と収束という二つの特徴をもつ時系列が併存していることになる。これら二つの系列の併存は、カタログが有効な1923年以降のほぼ100年間すべてに渡って確認できる。先の2000年以降の増加傾向を見たときの、直線から外れるものは、他の平行時系列、あるいは収束時系列に含まれるようだ。つまり地震の時系列のほとんどが、これらの増加傾向の時系列で表されるのである。
このような規則性はこれまで注目されてこなかったように見える。しかし、この規則性は予測の可能性を示唆する。つまり経験的には「今」の収束する複数の時系列を見つければ、それ以降のある時刻にそれらの時系列が交差する。まさにそのときに地震が発生するのである。その時の縦軸の値が、発生する地震のMの値であり、横軸の値が発生時刻である。
そこで、全国を数ブロックに分割して増加傾向の2種類の時系列を求めた。すべてのブロックに上で述べた2種類の時系列の存在が確認された。領域を狭めているので系列として十分な個数を確保するために、Mの最小値を小さくし、解析期間で数百個を超える地震を扱えるように調節した。
これらの解析の結果から、広域で見られた多数のM7 程度の長期の増加傾向の時系列は小さな領域では見えないが、この狭い領域でも、M6程度の増加傾向の時系列として認識できることがわかった。Mが6程度であっても収束する時系列がほとんどの場合で出現する。このことはM6以上の地震を予知できる可能性があることを意味している。
なぜこれらの特徴が出現するか。理由はいまのところ不明である。地震の統計則として、GR(グーテンベルグ - リヒター)則がある。規模Mが大きな地震の発生数は少ないが規模が小さくなると桁違いに多くなるという、べき乗則の一つである。この法則は時間の要因を含んでいない。今回の直線的増加傾向の時系列には、時間が中心的な要因として含まれており、観察結果としてはたいへんわかりやすい。GR測は地震が発生した結果をみているが、今回の時系列は多くの地震によって構成されるが、系列として見ているのは個々の地震ではなくて、地震発生の準備過程をみているのである。
この増加傾向の時系列に関心を持った初期のころは、プレ―ト運動による歪エネルギー蓄積の時間的割合が一定であると仮定すれば、こういう特徴が出現すると考えていたが、平行時系列が繰り返し出現することや、収束時系列も全く理解できない。つまり単純に100年、200年の時間を費やして、エネルギーを蓄積して臨界に達して大地震が発生するという機構ではない。おそらく地球という大きな系の中で何億年かを費やして地殻はすでに臨界状態に達しており、現在は常に地震を発生させうる状態にあり、その状態を反映して今回の時間に関する現象として現れていると思われる。予測を試みると同時にこの物理機構の問題も重要な課題であると考えている。
このような「直線的に増加する系列」に注目した見方をすると、2000年以降で、2002年から2005年までの傾きとほとんど同じ傾きの数本の直線が、他の期間にも見られることがわかる。この数本の時系列は平行であり、あるMの値で増加は中断される。これらを平行時系列と呼ぶことにする。
時系列全体をよく見ると、もう一つの重要な特徴がある。それは東北沖地震のMの値に結び付く時系列は前に述べた1本だけではなく、そこへ収束するような複数の時系列があることである。先のものより傾きが大きいものが3本あり、傾きの小さいものが1本識別できる。Mが7より大きな地震の場合、これらに向かって収束する時系列は顕著である。このように平行と収束という二つの特徴をもつ時系列が併存していることになる。これら二つの系列の併存は、カタログが有効な1923年以降のほぼ100年間すべてに渡って確認できる。先の2000年以降の増加傾向を見たときの、直線から外れるものは、他の平行時系列、あるいは収束時系列に含まれるようだ。つまり地震の時系列のほとんどが、これらの増加傾向の時系列で表されるのである。
このような規則性はこれまで注目されてこなかったように見える。しかし、この規則性は予測の可能性を示唆する。つまり経験的には「今」の収束する複数の時系列を見つければ、それ以降のある時刻にそれらの時系列が交差する。まさにそのときに地震が発生するのである。その時の縦軸の値が、発生する地震のMの値であり、横軸の値が発生時刻である。
そこで、全国を数ブロックに分割して増加傾向の2種類の時系列を求めた。すべてのブロックに上で述べた2種類の時系列の存在が確認された。領域を狭めているので系列として十分な個数を確保するために、Mの最小値を小さくし、解析期間で数百個を超える地震を扱えるように調節した。
これらの解析の結果から、広域で見られた多数のM7 程度の長期の増加傾向の時系列は小さな領域では見えないが、この狭い領域でも、M6程度の増加傾向の時系列として認識できることがわかった。Mが6程度であっても収束する時系列がほとんどの場合で出現する。このことはM6以上の地震を予知できる可能性があることを意味している。
なぜこれらの特徴が出現するか。理由はいまのところ不明である。地震の統計則として、GR(グーテンベルグ - リヒター)則がある。規模Mが大きな地震の発生数は少ないが規模が小さくなると桁違いに多くなるという、べき乗則の一つである。この法則は時間の要因を含んでいない。今回の直線的増加傾向の時系列には、時間が中心的な要因として含まれており、観察結果としてはたいへんわかりやすい。GR測は地震が発生した結果をみているが、今回の時系列は多くの地震によって構成されるが、系列として見ているのは個々の地震ではなくて、地震発生の準備過程をみているのである。
この増加傾向の時系列に関心を持った初期のころは、プレ―ト運動による歪エネルギー蓄積の時間的割合が一定であると仮定すれば、こういう特徴が出現すると考えていたが、平行時系列が繰り返し出現することや、収束時系列も全く理解できない。つまり単純に100年、200年の時間を費やして、エネルギーを蓄積して臨界に達して大地震が発生するという機構ではない。おそらく地球という大きな系の中で何億年かを費やして地殻はすでに臨界状態に達しており、現在は常に地震を発生させうる状態にあり、その状態を反映して今回の時間に関する現象として現れていると思われる。予測を試みると同時にこの物理機構の問題も重要な課題であると考えている。