日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS10] 地震活動とその物理

2019年5月28日(火) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:勝俣 啓(北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター)

[SSS10-P16] 2016年熊本地震以降の地震活動と地殻変動

*楠城 一嘉1井筒 潤2織原 義明3鴨川 仁4長尾 年恭3 (1.静岡県立大学、2.中部大学、3.東海大学、4.東京学芸大学)

キーワード:2016年熊本地震、b値、地殻変動

2016年熊本地震では、マグニチュードM7.3の本震と、それに先立つM6クラスの前震(M6.5, M6.4)、そして多数のM5クラスの余震が起きた。これらの地震に関係する布田川断層、日奈久断層では今尚活動は活発である。今後の活動推移の示唆を得る目的で、熊本地震前後の地震活動と地殻変動を調査した。

 この研究では、先行研究(Nanjo et al., 2016)を参考にし、グーテンベルグ・リヒター則のb値の時空間分布を調べた。余震の活発な期間を除いた、2017年1月から2019年1月までの地震活動に基づくb値の空間分布から、前震(M6.5, M6.4)の発生場所より南側の日奈久断層沿いで、b値の低い地域(130.6-130.8E, 32.5-32.6N)があることがわかった。2000年1月から熊本地震直前までの地震活動に基づくb値の空間分布と比較すると(Nanjo et al., 2016)、b値が減少した地域があり、その地域と、2017年以降の低b値の地域が一致する。2016年以降のM>5の地震の空間分布と、2017年以降の地震活動に基づくb値の空間分布を比較すると、低b値の地域では、M>5の地震が起きていない様に見える。

 また、GEONETによる熊本地震に伴う地殻変動の先行研究を参考にしながら(例えば、檜山他, 2016)、布田川断層、日奈久断層周辺の基準点の基線変化を調査した(2013年1月から2018年末までの期間、固定局を三隅(島根県)にとる)。その結果、熊本地震の発生した2016年4月にステップ状の変化があり、その後に余効変動が継続している。2017年以降の低b値の地域に含まれる基準点「泉」(130.79E , 32.58N)でも同様で、変動が終わりつつあるが未だ継続している様である。従って、地震活動は今後も継続すると考えられる。

 日奈久断層沿いに現在b値の低い地域があり、唯一そこは熊本地震の発生前と比べてb値が減少した地域である。Nanjo et al. (2016)によれば、熊本地震の前震、本震、余震のうちでM5以上の地震の多くが、低b値の地域で起きていることが分かっている。仮に、熊本地域に関して、b値を、将来比較的大きい地震の発生場所を推定する指標とみなすならば、現在の低b値の地域は、M>5の地震が未だ起きていない空白域の可能性がある。