15:45 〜 16:00
[SSS11-08] S-netを用いた常時微動相互相関解析
キーワード:S-net、地震波干渉法、常時微動、相互相関解析、表面波、日本海溝
東北日本前弧海域下における地殻構造を推定するため、日本海溝海底地震津波観測網(S-net)で観測された脈動記録に対して相互相関関数に基づく地震波干渉法解析を行ない、観測点間を伝播する表面波を抽出した。データは,防災科学技術研究所によるS-netで収録された2017年1月から2018年12月までの2年間の三成分連続記録を用いた。周期数秒より長周期帯域では、速度計に比べて加速度計の方がS/Nが良いため、解析には加速度計記録を使用した。観測記録はXYZ座標からUNE座標への変換を行い、さらに水平動成分をRadialとTransverse方向に回転させることで、9成分の相互相関関数を全観測点ペアで計算した。その結果、60秒周期のパルス、および、ゼロラグにピークを持つパルスが相互相関関数に現れ、全観測点間で60秒の周期を持つ機器ノイズ、および、同ケーブル内の観測点でコヒーレントなランダムノイズが観測記録に含まれていることがわかった。周期的機器ノイズは、観測点・成分に依存し、さらに期間によって変化する。そのため、ある日の記録とその一日前の記録の差をとってから相互相関関数を計算することで、共通する周期的ノイズを除去した。ケーブル依存のランダムノイズについては、周波数領域における経験的な関数フィッティングにより除去した。これらのノイズ除去処理と距離ビン毎の相互相関関数のスタックにより、周期30秒程度まで、観測点間を伝播するレイリー波およびラブ波を抽出することができた。周期10秒以下の短周期帯域では、1.5 km/s、および、0.3 km/s程度の群速度で伝播する複数モードのレイリー波が確認でき、海水層と堆積層にエネルギーを持つようなモードが卓越していることが示された。また、周期8秒程度では外洋から沿岸部に伝播するレイリー波が卓越するのに対し、周期4秒程度では沿岸部から外洋方向へのフラックスも存在することがわかった。今後は、陸上観測点も含めた解析を行うとともに、抽出した表面波を用いて地殻構造を推定する予定である。
謝辞:本研究では防災科学技術研究所のS-netの連続地震波形データを用いた。観測点の設置および維持にかかわって来られた皆様に感謝いたします。
謝辞:本研究では防災科学技術研究所のS-netの連続地震波形データを用いた。観測点の設置および維持にかかわって来られた皆様に感謝いたします。