[SSS11-P03] アクロスを用いたP波およびS波の走時の時間変化の検出
キーワード:走時変化、速度変化
精密に制御された振動を繰り返し発生させることができる人工震源アクロスによる1年間の観測記録を用いてP波およびS波の走時の時間変化についての解析を行った。本研究で用いた新型アクロス(ACR2014)は愛知県豊橋市に設置されており、回転軸が水平であるため、水平加振だけでなく鉛直方向の加振も行うことができ、従来型よりもP波をよく励起できるという特徴がある。ACR2014の周辺に設置されているNU.MIK, N.THNH, N.MKBHの3観測点の記録を用いて伝達関数を計算した。得られた伝達関数の成分のうち、P波では上下方向の加振による上下成分の記録、S波では水平方向の加振による水平成分の記録を選択した。これらの成分の伝達関数から、クロススペクトル法を用いてP波とS波それぞれの走時変化を計算した。なお、計算にはP波、S波部分としてそれぞれ0.2~0.3秒の範囲を使用した。得られた走時変化を豊橋、三ケ日のAMeDASの降水量の記録と比較すると、NU.MIKでは降水時にステップ的な遅れが生じ、その後回復していくという短期的な変化がP波とS波両方で見られた。このときの回復の傾向はP波とS波で異なっていた。一方、長期的変化の傾向は複数観測点においてP波とS波で異なっていた。このような短期的、長期的な走時変化について、クラック密度と含水クラックの割合の変化と地震波の速度変化の関係を用いて走時変化への降水の影響についての解釈を試みた。クラック密度と含水クラックの割合の変化に伴う速度変化の大きさはP波とS波で異なるため、降水量の多い時期は含水クラックが増加、降水量の少ない期間は含水クラックが減少すると仮定すると、P波とS波で異なる長期的な走時変化を定性的に説明できることがわかった。また、降水時の短期的な走時変化と、P波とS波の回復の違いも長期的変化の場合と同様の仮定によって定性的な説明が可能であった。