[SSS11-P16] 海底地震計による地震探査・観測データのリバースタイム反射波イメージング
キーワード:反射波イメージング、リバースタイムマイグレーション、海底地震計
はじめに
海底地震計を用いた地殻構造探査や広域地震観測では、受振点間隔の広い受振点群を用いた探査・観測となる場合が多く、観測の空間的欠如を補う工夫が必要である。一方、新規または既設の光ファイバーを利用した地震動の観測が試みられ、ケーブルに沿って稠密な地震観測を可能とする技術革新が起こりつつある。この場合は膨大な情報を効率的に活用する解析技術の研究開発もまた必要である。反射法地震探査では、複雑な地下不均質構造をイメージングするために、波動論に準拠して全波動場を利用するリバースタイムマイグレーションが有効である。本研究では、能動的探査と受動的観測の両方で利用するためのリバースタイムによる反射波イメージング手法を開発、それぞれの問題についてケーススタディを実施する。
解析手法
A. 基本型:発振点-受振点の組合せ
人工震源を用いた能動探査や震源の位置が正確に決定された自然地震観測の場合、反射法解析の基本である、発振点―受振点の組合せによる一次反射波を利用する解析が有効である。リバースタイム法による反射波イメージングでは、観測波形を受振点から動画を逆再生するように逆伝播した波動場と、震源からは震源関数を順方向へ伝播させた波動場をそれぞれ地震波モデリングで再現し、同一時刻の両波動場の相関結果を時間積分することで、イメージ領域内の反射面や散乱体を結像させる。
B. 改良型:受振点-受振点(または発振点-発振点)の組合せ
震源情報の不確かな自然地震の観測波形の解析に有効な方法を提案する。この場合、震源から出た地震波が、海底の地震計へ届いた後に地下深部へ進み、地層境界で上方に反射して別の地震計へ到達する波線経路を考慮すると、一方を仮想的な震源として他方で受振点とする波線と同等と考えることができる。そこで、一方の地震計で観測した波形を順伝播させた波動場と、他方の地震計に届いた観測波形を逆伝播した波動場を干渉させることで、地下の反射面をイメージングする。エアガンー海底地震計探査の場合、相反原理により、エアガン発振点を起点に海面起因の多重反射波を利用できる。
ケーススタディ
(1) 南海トラフにおけるエアガン-海底地震計探査データ
測線長約170km(発振点間隔200m、受振点間隔1〜10km)のエアガン海底地震計探査に適用した。このとき、相反定理を用いることで、海底地震計からエアガン発振点の間の一次反射波について、基本型により解析し、エアガン発振点を起点とする多重反射波には改良型を適用して、それぞれの結果を足し合わせることで最終イメージを得た。その結果、オフセット距離の長い記録を利用して付加体深部の構造(沈み込むプレートと新旧付加体の関係)と、多重反射波による浅部の構造(底面に起伏を有する堆積盆地)を明瞭にイメージングすることができた。
(2) 自然地震観測を模した数値シミュレーション
自然地震観測を模して、数値シミュレーションを行い、改良型リバースタイム法による反射波イメージングを試みた。海底観測と陸上観測では、境界条件(地震計より上位に海水層があるか否か)が異なり、海域観測の場合には海水層の存在による多重反射波が卓越する。陸上観測と海底観測のいずれの場合も、提案手法によって地下構造のイメージが可能であることを確認した。また、海水層のあることで卓越する多重反射波の効果により地下の反射点が広がるので、観測点がまばらになった場合に、反射面の連続性を改善する効果を期待できる。
謝辞:本研究は、JAMSTECイノベーションアウォード萌芽研究プログラムによりサポートされています。
海底地震計を用いた地殻構造探査や広域地震観測では、受振点間隔の広い受振点群を用いた探査・観測となる場合が多く、観測の空間的欠如を補う工夫が必要である。一方、新規または既設の光ファイバーを利用した地震動の観測が試みられ、ケーブルに沿って稠密な地震観測を可能とする技術革新が起こりつつある。この場合は膨大な情報を効率的に活用する解析技術の研究開発もまた必要である。反射法地震探査では、複雑な地下不均質構造をイメージングするために、波動論に準拠して全波動場を利用するリバースタイムマイグレーションが有効である。本研究では、能動的探査と受動的観測の両方で利用するためのリバースタイムによる反射波イメージング手法を開発、それぞれの問題についてケーススタディを実施する。
解析手法
A. 基本型:発振点-受振点の組合せ
人工震源を用いた能動探査や震源の位置が正確に決定された自然地震観測の場合、反射法解析の基本である、発振点―受振点の組合せによる一次反射波を利用する解析が有効である。リバースタイム法による反射波イメージングでは、観測波形を受振点から動画を逆再生するように逆伝播した波動場と、震源からは震源関数を順方向へ伝播させた波動場をそれぞれ地震波モデリングで再現し、同一時刻の両波動場の相関結果を時間積分することで、イメージ領域内の反射面や散乱体を結像させる。
B. 改良型:受振点-受振点(または発振点-発振点)の組合せ
震源情報の不確かな自然地震の観測波形の解析に有効な方法を提案する。この場合、震源から出た地震波が、海底の地震計へ届いた後に地下深部へ進み、地層境界で上方に反射して別の地震計へ到達する波線経路を考慮すると、一方を仮想的な震源として他方で受振点とする波線と同等と考えることができる。そこで、一方の地震計で観測した波形を順伝播させた波動場と、他方の地震計に届いた観測波形を逆伝播した波動場を干渉させることで、地下の反射面をイメージングする。エアガンー海底地震計探査の場合、相反原理により、エアガン発振点を起点に海面起因の多重反射波を利用できる。
ケーススタディ
(1) 南海トラフにおけるエアガン-海底地震計探査データ
測線長約170km(発振点間隔200m、受振点間隔1〜10km)のエアガン海底地震計探査に適用した。このとき、相反定理を用いることで、海底地震計からエアガン発振点の間の一次反射波について、基本型により解析し、エアガン発振点を起点とする多重反射波には改良型を適用して、それぞれの結果を足し合わせることで最終イメージを得た。その結果、オフセット距離の長い記録を利用して付加体深部の構造(沈み込むプレートと新旧付加体の関係)と、多重反射波による浅部の構造(底面に起伏を有する堆積盆地)を明瞭にイメージングすることができた。
(2) 自然地震観測を模した数値シミュレーション
自然地震観測を模して、数値シミュレーションを行い、改良型リバースタイム法による反射波イメージングを試みた。海底観測と陸上観測では、境界条件(地震計より上位に海水層があるか否か)が異なり、海域観測の場合には海水層の存在による多重反射波が卓越する。陸上観測と海底観測のいずれの場合も、提案手法によって地下構造のイメージが可能であることを確認した。また、海水層のあることで卓越する多重反射波の効果により地下の反射点が広がるので、観測点がまばらになった場合に、反射面の連続性を改善する効果を期待できる。
謝辞:本研究は、JAMSTECイノベーションアウォード萌芽研究プログラムによりサポートされています。