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[SSS13-09] 布田川断層帯・日奈久断層帯を震源断層とした強震動予測(1)-対象地域での新たな深部地盤構造モデルの作成-
キーワード:深部地盤構造モデル、強震動予測、日奈久断層帯、布田川断層帯
熊本県下には日奈久断層帯及び布田川断層帯が存在しており、それらの活断層帯で地震が発生した場合、周辺地域に強い揺れが生じると考えられる。「平成28年熊本地震を踏まえた総合的な活断層調査」サブテーマ3では、日奈久断層帯(高野-白旗区間、日奈久区間、八代海区間)や布田川断層帯(宇土区間、宇土半島北岸区間)が活動した場合の強震動予測の高度化を目的に、八代平野などの対象地域で新たな調査を行い、三次元速度構造をモデル化することで、新たな深部地盤モデルを作成した。
まず、平成28~30年度に新たに実施した現地調査の概要を述べる。日奈久断層沿いに位置する八代平野では、平成29年度に反射法地震探査2測線(宇城測線、八代測線)を実施した。八代平野全域での臨時余震観測(計37地点、設置場所で小半径の微動アレイも実施)、大半径微動アレイ探査(29地点、最大半径500-600 m程度)、八代平野南部での極小+不規則微動アレイ(32地点)、八代平野~熊本平野境界部での単点微動観測(31地点)等を実施した。
このほかに、天草諸島、水俣・芦北地域、人吉盆地、出水平野、玉名平野、菊鹿盆地、阿蘇周辺、島原半島南部等の主として既設の強震・震度観測点周辺で、微動アレイ探査を多数実施した(中~大半径23地点、小半径のみ76地点)。平野の基盤構造の全体像を把握するため、出水平野47地点、玉名平野44地点で単点微動観測を実施した。人吉盆地では、極小+不規則微動アレイ48地点も実施した。また、八代平野、水俣・芦北地域、人吉盆地で温泉ボーリングの地質柱状図情報を収集した。
これらの調査結果及び既往の情報を用い、深部地盤モデルを作成した。八代平野では、反射法地震探査や温泉ボーリングによる基盤深度情報との整合性を考慮しつつ、微動アレイによる位相速度及びH/Vスペクトルを逆解析し、各アレイ地点の速度構造を推定した。堆積層のS波速度を0.6、0.9 km/sの2層とし(別途、浅部地盤は考慮して解析している)、基盤上部に2.7 km/s層を置き、地震基盤のS波速度を3.1 km/sとしてモデル化することで、反射法地震探査による基盤上面とVs 2.7 km/s層上面深度(約0.3~0.6 km)がよく対応した。また、宇城測線沿いに比べ、八代測線沿いでは、Vs 0.6 km/s層は薄く、0.9 km/s層の上面が浅く推定されているが、これは、宇城測線に比べ八代測線で堆積層内の区間速度が速いこととも整合している。微動アレイの解析結果をもとに初期地盤モデルを作成し、ボーリングデータや重力異常との整合性をチェックした上で、微動アレイデータのない地点において、単点微動H/Vスペクトル比によるモデル修正を行った。
人吉盆地、天草諸島、出水平野等でも微動アレイ探査結果を主に用いて深部地盤モデルを作成した。人吉盆地では温泉ボーリングデータも参照した。堆積層はS波速度を0.6、0.9、1.6 km/sの3層で表現し、地震基盤は3.1 km/sとした。人吉盆地の地震基盤深度は盆地東部で深い傾向にあり(最深部で約1.5 km)、重力異常分布とも調和的である。天草諸島では高重力異常の天草上島付近でVs 1.6 km/s層上面が浅く、Vs 3.1 km/s層上面が相対的に深い。出水平野の地震基盤深度は海岸に向かって深くなる傾向が見られた。
発表では、最終的な深部地盤構造モデルを紹介するとともに、中規模地震の三次元地震動シミュレーションによる検証結果も報告する予定である。
謝辞:本研究は文部科学省科学技術基礎調査等委託事業「平成28年熊本地震を踏まえた総合的な活断層調査」(代表機関:九州大学大学院理学研究院)の一部として実施しました。微動や余震観測等の現地調査では、九州大学、東京工業大学、京都大学の大学院生・学部生の参加を得て実施しました。また、調査に当たっては、熊本県、鹿児島県、長崎県及び関係市町村や地域住民の皆様には大変お世話になりました。
まず、平成28~30年度に新たに実施した現地調査の概要を述べる。日奈久断層沿いに位置する八代平野では、平成29年度に反射法地震探査2測線(宇城測線、八代測線)を実施した。八代平野全域での臨時余震観測(計37地点、設置場所で小半径の微動アレイも実施)、大半径微動アレイ探査(29地点、最大半径500-600 m程度)、八代平野南部での極小+不規則微動アレイ(32地点)、八代平野~熊本平野境界部での単点微動観測(31地点)等を実施した。
このほかに、天草諸島、水俣・芦北地域、人吉盆地、出水平野、玉名平野、菊鹿盆地、阿蘇周辺、島原半島南部等の主として既設の強震・震度観測点周辺で、微動アレイ探査を多数実施した(中~大半径23地点、小半径のみ76地点)。平野の基盤構造の全体像を把握するため、出水平野47地点、玉名平野44地点で単点微動観測を実施した。人吉盆地では、極小+不規則微動アレイ48地点も実施した。また、八代平野、水俣・芦北地域、人吉盆地で温泉ボーリングの地質柱状図情報を収集した。
これらの調査結果及び既往の情報を用い、深部地盤モデルを作成した。八代平野では、反射法地震探査や温泉ボーリングによる基盤深度情報との整合性を考慮しつつ、微動アレイによる位相速度及びH/Vスペクトルを逆解析し、各アレイ地点の速度構造を推定した。堆積層のS波速度を0.6、0.9 km/sの2層とし(別途、浅部地盤は考慮して解析している)、基盤上部に2.7 km/s層を置き、地震基盤のS波速度を3.1 km/sとしてモデル化することで、反射法地震探査による基盤上面とVs 2.7 km/s層上面深度(約0.3~0.6 km)がよく対応した。また、宇城測線沿いに比べ、八代測線沿いでは、Vs 0.6 km/s層は薄く、0.9 km/s層の上面が浅く推定されているが、これは、宇城測線に比べ八代測線で堆積層内の区間速度が速いこととも整合している。微動アレイの解析結果をもとに初期地盤モデルを作成し、ボーリングデータや重力異常との整合性をチェックした上で、微動アレイデータのない地点において、単点微動H/Vスペクトル比によるモデル修正を行った。
人吉盆地、天草諸島、出水平野等でも微動アレイ探査結果を主に用いて深部地盤モデルを作成した。人吉盆地では温泉ボーリングデータも参照した。堆積層はS波速度を0.6、0.9、1.6 km/sの3層で表現し、地震基盤は3.1 km/sとした。人吉盆地の地震基盤深度は盆地東部で深い傾向にあり(最深部で約1.5 km)、重力異常分布とも調和的である。天草諸島では高重力異常の天草上島付近でVs 1.6 km/s層上面が浅く、Vs 3.1 km/s層上面が相対的に深い。出水平野の地震基盤深度は海岸に向かって深くなる傾向が見られた。
発表では、最終的な深部地盤構造モデルを紹介するとともに、中規模地震の三次元地震動シミュレーションによる検証結果も報告する予定である。
謝辞:本研究は文部科学省科学技術基礎調査等委託事業「平成28年熊本地震を踏まえた総合的な活断層調査」(代表機関:九州大学大学院理学研究院)の一部として実施しました。微動や余震観測等の現地調査では、九州大学、東京工業大学、京都大学の大学院生・学部生の参加を得て実施しました。また、調査に当たっては、熊本県、鹿児島県、長崎県及び関係市町村や地域住民の皆様には大変お世話になりました。