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[SSS13-14] 震度インバージョン解析に基づく1923年関東地震の震源モデルの構築と首都圏の強震動評価
キーワード:1923年関東地震、震度、短周期レベル、強震動生成域、強震動評価
1.はじめに
首都圏に甚大な被害を及ぼした1923年関東地震(以降、大正関東地震)は、今後も繰り返し同様の地震が発生することが懸念され、震源および地震動の評価が防災上重要である。大正関東地震では地震波形が観測されているが、短周期成分の情報がないことから、工学的に重要な1秒以下の強震動を再現するための震源モデルの構築には、震度データに基づく検討が有効と考えられる。神田・加藤(2018)は、諸井・武村(2002)の震度データを用いてインバージョン解析を行い、余震の可能性がある領域を含めて6個の強震動生成域(SMGA)を求めている。また、最近の地震の震度と短周期レベルの関係に基づいて、大正関東地震の短周期レベルAを推定している。本検討では、これらのSMGAと短周期レベルの評価結果を用いて、短周期成分まで地震動評価が可能な震源モデルを構築し、統計的グリーン関数法により首都圏の強震動評価を行う。
2.震源モデルの構築
本検討では、神田・加藤(2018)で評価された断層全体のAと各SMGAの地震モーメントM0ai、面積Saiを与条件とする。(添え字iは各SMGAの番号であることを表す。)各SMGAに対してω-2モデル、Bruneのモデル(Brune、1970、1971)、円形クラックモデル(Eshelby、1957)が適用可能と仮定すると、各SMGAの短周期レベルAiがM0ai/Saiに比例する関係が得られる。この関係に基づいて断層全体のAを各SMGAに配分してAiを評価する。
神田・加藤(2018)による断層全体のAは4.66×1019Nm/s2であり、各SMGAのAiは1.4~2.2×1019Nm/s2となった。最も大きいSMGAのAiは、加藤ほか(2013)による大正関東地震の断層全体のA=2.46×1019Nm/s2と同等の大きさである。加藤ほか(2013)の震源モデルはSato et al. (2005)が波形と地殻変動のインバージョンから求めたすべり分布に基づいており、比較的長周期の情報が反映されている。本検討は震度による比較的短周期の情報を反映しており、両者の比較にはそれらの違いに注意する必要がある。
各SMGAを面積が同じ矩形モデルに変換し、走向・傾斜はフィリピン海プレートの沈み込みに沿うように決める。背景領域は考慮しない。その他のパラメータ(密度、S波速度、破壊伝播速度Vr、fmax、ラディエーションパターン係数)は加藤ほか(2013)と同じとする。各SMGAのライズタイムはτi=0.5Si1/2/Vrから設定する。断層全体の破壊開始点は神奈川県西部のSMGA上に置いて同心円状に破壊が伝播し、各SMGAの破壊はマルチハイポセンターと仮定する。Q値は中央防災会議(2004)を参照し100f0.7(fは振動数)とする。
3.強震動評価
震度インバージョンに基づいて構築した震源モデルが首都圏の強震動に与える影響を把握するため、統計的グリーン関数法により強震動評価を行う。評価地点は加藤ほか(2013)で対象としている浅川と越中島とし、地下構造モデルも同文献に倣う。
強震動評価結果について、評価地点の比較、各SMGAの寄与などの検討、加藤ほか(2013)の震源モデルによる評価結果との比較などを行う。
参考文献
Brune, J.N.: Tectonic stress and the spectra of seismic shear waves from earthquake, J. Geophys.Res., 75: 4997-5009, 1970.
Brune, J. N.: Correction, J. Geophys. Res. 76, 20, 5002. 1971.
Eshelby, J. D.: The determination of the elastic field of an ellipsoidal inclusion, and related problems, Proceedings of the Royal Society, A241, 376-396, 1957.
Sato, H., N. Hirata, K. Koketsu, D. Okaya, S. Abe, R. Kobayashi, M. Matsubara, T. Iwasaki, T. Ito, T. Ikawa, T. Kawanaka, K. Kasahara, and S. Harder: Earthquake source fault beneath Tokyo, Science, Vol. 309, pp.462-464, 2005.
加藤研一, 久田嘉章, 大野晋, 野畑有秀, 森川淳, 山本優ー: 強震動予測手法に関するベンチマークテスト:統計的グリーン関数法の場合(その3), 日本建築学会技術報告集, 第19巻, 第41号, pp.37-42, 2013.
神田克久, 加藤研一: 震度インバージョン解析による首都直下の歴史地震の強震動生成域と短周期レベル, 第15回日本地震工学シンポジウム, GO02-01-02, 2018.
中央防災会議: 首都直下地震対策専門調査会(第12回), 2004.
諸井孝文, 武村雅之: 関東地震(1923年9月1日)による木造住家被害データの整理と震度分布の推定, 日本地震工学会論文集, 第2巻,第3号, pp. 35-71, 2002.
首都圏に甚大な被害を及ぼした1923年関東地震(以降、大正関東地震)は、今後も繰り返し同様の地震が発生することが懸念され、震源および地震動の評価が防災上重要である。大正関東地震では地震波形が観測されているが、短周期成分の情報がないことから、工学的に重要な1秒以下の強震動を再現するための震源モデルの構築には、震度データに基づく検討が有効と考えられる。神田・加藤(2018)は、諸井・武村(2002)の震度データを用いてインバージョン解析を行い、余震の可能性がある領域を含めて6個の強震動生成域(SMGA)を求めている。また、最近の地震の震度と短周期レベルの関係に基づいて、大正関東地震の短周期レベルAを推定している。本検討では、これらのSMGAと短周期レベルの評価結果を用いて、短周期成分まで地震動評価が可能な震源モデルを構築し、統計的グリーン関数法により首都圏の強震動評価を行う。
2.震源モデルの構築
本検討では、神田・加藤(2018)で評価された断層全体のAと各SMGAの地震モーメントM0ai、面積Saiを与条件とする。(添え字iは各SMGAの番号であることを表す。)各SMGAに対してω-2モデル、Bruneのモデル(Brune、1970、1971)、円形クラックモデル(Eshelby、1957)が適用可能と仮定すると、各SMGAの短周期レベルAiがM0ai/Saiに比例する関係が得られる。この関係に基づいて断層全体のAを各SMGAに配分してAiを評価する。
神田・加藤(2018)による断層全体のAは4.66×1019Nm/s2であり、各SMGAのAiは1.4~2.2×1019Nm/s2となった。最も大きいSMGAのAiは、加藤ほか(2013)による大正関東地震の断層全体のA=2.46×1019Nm/s2と同等の大きさである。加藤ほか(2013)の震源モデルはSato et al. (2005)が波形と地殻変動のインバージョンから求めたすべり分布に基づいており、比較的長周期の情報が反映されている。本検討は震度による比較的短周期の情報を反映しており、両者の比較にはそれらの違いに注意する必要がある。
各SMGAを面積が同じ矩形モデルに変換し、走向・傾斜はフィリピン海プレートの沈み込みに沿うように決める。背景領域は考慮しない。その他のパラメータ(密度、S波速度、破壊伝播速度Vr、fmax、ラディエーションパターン係数)は加藤ほか(2013)と同じとする。各SMGAのライズタイムはτi=0.5Si1/2/Vrから設定する。断層全体の破壊開始点は神奈川県西部のSMGA上に置いて同心円状に破壊が伝播し、各SMGAの破壊はマルチハイポセンターと仮定する。Q値は中央防災会議(2004)を参照し100f0.7(fは振動数)とする。
3.強震動評価
震度インバージョンに基づいて構築した震源モデルが首都圏の強震動に与える影響を把握するため、統計的グリーン関数法により強震動評価を行う。評価地点は加藤ほか(2013)で対象としている浅川と越中島とし、地下構造モデルも同文献に倣う。
強震動評価結果について、評価地点の比較、各SMGAの寄与などの検討、加藤ほか(2013)の震源モデルによる評価結果との比較などを行う。
参考文献
Brune, J.N.: Tectonic stress and the spectra of seismic shear waves from earthquake, J. Geophys.Res., 75: 4997-5009, 1970.
Brune, J. N.: Correction, J. Geophys. Res. 76, 20, 5002. 1971.
Eshelby, J. D.: The determination of the elastic field of an ellipsoidal inclusion, and related problems, Proceedings of the Royal Society, A241, 376-396, 1957.
Sato, H., N. Hirata, K. Koketsu, D. Okaya, S. Abe, R. Kobayashi, M. Matsubara, T. Iwasaki, T. Ito, T. Ikawa, T. Kawanaka, K. Kasahara, and S. Harder: Earthquake source fault beneath Tokyo, Science, Vol. 309, pp.462-464, 2005.
加藤研一, 久田嘉章, 大野晋, 野畑有秀, 森川淳, 山本優ー: 強震動予測手法に関するベンチマークテスト:統計的グリーン関数法の場合(その3), 日本建築学会技術報告集, 第19巻, 第41号, pp.37-42, 2013.
神田克久, 加藤研一: 震度インバージョン解析による首都直下の歴史地震の強震動生成域と短周期レベル, 第15回日本地震工学シンポジウム, GO02-01-02, 2018.
中央防災会議: 首都直下地震対策専門調査会(第12回), 2004.
諸井孝文, 武村雅之: 関東地震(1923年9月1日)による木造住家被害データの整理と震度分布の推定, 日本地震工学会論文集, 第2巻,第3号, pp. 35-71, 2002.