日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS13] 強震動・地震災害

2019年5月27日(月) 09:00 〜 10:30 コンベンションホールA (2F)

コンビーナ:栗山 雅之(一般財団法人 電力中央研究所 地球工学研究所 地震工学領域)、染井 一寛(一般財団法人地域地盤環境研究所)、座長:森川 信之(防災科学技術研究所)、中村 亮一(東京大学地震研究所)

09:45 〜 10:00

[SSS13-28] いろいろな期間の確率論的地震動予測地図と観測最大震度の比較検証

*棟田 隆元1纐纈 一起1 (1.東京大学 地震研究所)

キーワード:確率論的地震動予測地図、観測最大震度、再現期間

地震調査研究推進本部の確率論的地震動予測地図(以下,PSHMJ)について、実際に観測された最大震度と比較することによって、どの程度の精度であるかの検証をおこなった。その際に、対象とする期間の起点年を1890年として再現期間を30,60,90,120年と延ばした時の変化を観察した。PSHMJと観測最大震度との比較については、対象期間を500年と長期間にした場合(Miyazawa and Mori, 2009)、期間を30年に固定して起点年を変えた場合(近藤, 2017)などが挙げられるが、本研究のように起点年を固定して再現期間を変化させるのは初めてである。



PSHMJの作成手法としては近藤(2017)にならい、PSHMJの各メッシュにおいて計算された工学的基盤上のハザードカーブ(宮腰・他, 2016)と、表層地盤増幅率(若松・松岡, 2013)および最大速度から震度への換算式(翠川・他, 1999; 藤本・翠川, 2005)を組み合わせた。その際、Miyazawa and Mori (2009) に従ってポアソン分布を仮定し、再現期間30,60,90,120年の事象の30年超過確率をそれぞれ64, 45, 28, 22%とおいてPSHMJの予測震度を求めた。観測最大震度としては、気象庁震度データベース(石垣・高木, 2000; 石垣, 2007)と1944~1964年にかけての大地震の記録(宇佐美, 1985; 原田・他, 2016)を用い、近接した観測点も組み合わせれば1890年からの120年間を通して存在する観測点110点を抽出した。これら観測点110点における観測最大震度と、対応するPSHMJのメッシュにおける予測震度の比較を行った。



比較方法の第一として、観測最大震度と予測震度の差の二乗平均平方根を算出してみると、再現期間30,60,90,120年に対して1.2, 0.8, 0.7, 0.7が得られた。大きな震度を観測するような大地震はプレート境界地震なら数百年に一度、地殻内地震ならば数千年に一度の現象であるから再現期間を長くとるほど精度があがることが期待されるが、結果はほぼそのようになっている。ただし、Miyazawa and Mori (2009)による500年の結果である0.4~0.5に向かって順調に減少せず、90年で飽和しているように見える。この状況は、比較方法の第二として採用した回帰分析においても同様に現れる。この問題の原因としては、たとえば観測点数の少なさが挙げられ、今後、検討を加える予定である。



謝辞:宮腰淳一氏にはハザードカーブを,近藤利明氏には計算コード等を提供いただきました.宮腰氏,藤原広行氏との議論は有益でした.