[SSS13-P09] 波形のS波初動部分を用いた波形逆解析による熊本平野および益城町周辺の深部地盤構造の推定
キーワード:2016年熊本地震、波形逆解析、1次元S波速度構造、地震動シミュレーション
2016年熊本地震は内陸の活断層による地殻内地震であり、熊本県益城町では多くの木造家屋に被害が生じた。被災地周辺での強震動の理解には地下構造を知ることが重要であるが、工学的基盤より深部の地下構造は充分明らかでない。本研究では、本震時の被災地周辺における強震動特性の評価を目的として、熊本地震の余震の観測記録を利用して既往の地下構造モデルの修正を行った。さらに、修正した地下構造モデルを用いて、本震の地震動の再現を行った。
まず、既往の地下構造モデルとして地震調査研究推進本部の全国1次地下構造モデルを用いて、3次元差分法による被災地周辺における余震の地震動シミュレーションを行った。検討した地震は4月19日M5.5の余震であり、震源モデルとして、走向方向に8km、傾斜方向に4kmの断層面を設定した。益城町の観測点の観測波形と計算波形の比較から、既往モデルによる計算波形では観測波形に見られる定性的な特徴は捉えられているものの、振幅の大きさや位相といった詳細な特徴を再現することが難しいことが分かった。
そこで、余震記録の観測波形のS波初動部分の到着時間や振幅を利用して、波形逆解析により観測点直下の1次元S波速度構造モデルをチューニングすることにした。逆解析ではハイブリッドヒューリスティック探索によって観測波形と離散化波数法を用いた1次元シミュレーションによる計算波形の振幅の誤差の2乗和平均が最小となる速度構造モデルを、熊本平野部および益城町周辺における観測点36点において推定した。逆解析により推定された地下構造モデルで計算した余震の波形では、既往のモデルで計算した波形と比べて、観測波形の位相や振幅の特徴がよく説明できるようになった。
最後に、逆解析による1次元モデルを用いて全国1次地下構造モデルを修正した地下構造モデルを利用して、本震の地震動シミュレーションを行った。本震の震源モデルとしてKubo et al.(2016)によるモデルを用い、計算波形には表層地盤の影響を考慮するためJ-SHISの表層地盤増幅率を乗じた。計算により求めた計測震度分布は益城町中心部における計測震度を過小評価しており、益城町役場の計算波形は観測波形と比べて3倍~4倍小さかった。一方で、K-NET熊本、KiK-net益城の計算波形は振幅、位相ともに観測波形の特徴をよく説明できていることが分かった。これらの結果は、修正した地下構造モデルが熊本平野部では妥当なものである一方、修正した益城町中心部の直下の地下構造は、再構築が必要であることを示している。
まず、既往の地下構造モデルとして地震調査研究推進本部の全国1次地下構造モデルを用いて、3次元差分法による被災地周辺における余震の地震動シミュレーションを行った。検討した地震は4月19日M5.5の余震であり、震源モデルとして、走向方向に8km、傾斜方向に4kmの断層面を設定した。益城町の観測点の観測波形と計算波形の比較から、既往モデルによる計算波形では観測波形に見られる定性的な特徴は捉えられているものの、振幅の大きさや位相といった詳細な特徴を再現することが難しいことが分かった。
そこで、余震記録の観測波形のS波初動部分の到着時間や振幅を利用して、波形逆解析により観測点直下の1次元S波速度構造モデルをチューニングすることにした。逆解析ではハイブリッドヒューリスティック探索によって観測波形と離散化波数法を用いた1次元シミュレーションによる計算波形の振幅の誤差の2乗和平均が最小となる速度構造モデルを、熊本平野部および益城町周辺における観測点36点において推定した。逆解析により推定された地下構造モデルで計算した余震の波形では、既往のモデルで計算した波形と比べて、観測波形の位相や振幅の特徴がよく説明できるようになった。
最後に、逆解析による1次元モデルを用いて全国1次地下構造モデルを修正した地下構造モデルを利用して、本震の地震動シミュレーションを行った。本震の震源モデルとしてKubo et al.(2016)によるモデルを用い、計算波形には表層地盤の影響を考慮するためJ-SHISの表層地盤増幅率を乗じた。計算により求めた計測震度分布は益城町中心部における計測震度を過小評価しており、益城町役場の計算波形は観測波形と比べて3倍~4倍小さかった。一方で、K-NET熊本、KiK-net益城の計算波形は振幅、位相ともに観測波形の特徴をよく説明できていることが分かった。これらの結果は、修正した地下構造モデルが熊本平野部では妥当なものである一方、修正した益城町中心部の直下の地下構造は、再構築が必要であることを示している。