日本地球惑星科学連合2019年大会

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[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS13] 強震動・地震災害

2019年5月27日(月) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:栗山 雅之(一般財団法人 電力中央研究所 地球工学研究所 地震工学領域)、染井 一寛(一般財団法人地域地盤環境研究所)

[SSS13-P15] 震源近傍の強震記録に基づくM6クラスの地震のSMGAの推定-2011年茨城県北部の地震(M6.1)を対象として-

*元木 健太郎1加藤 研一1塩田 哲生2 (1.小堀鐸二研究所、2.四国電力)

キーワード:強震動生成域、M6級地震、逆解析、経験的グリーン関数法

1.はじめに

K-NET、KiK-netなどの高密度な地震観測によって、M6クラスでも1Gを超える大振幅の地震動が近年観測されるようになった。大振幅が発生した要因として、例えば2004年北海道留萌支庁南部で発生した地震(M6.1)では、強震観測点近傍の2つのSMGAが地震動に支配的であることが示された(Maeda and Sasatani, 2008、元木・他、2015)。活断層が認められていない地域で発生する規模の小さい地震は、強震動予測時に用いる断層モデルを設定しにくい。この種の地震に対し、大振幅の地震動を引き起こすSMGAの応力降下量や面積などの情報を蓄積していくことは、地震動レベルの設定に有用な情報を与えると考えられる。本報告では、2011年茨城県北部の地震(KiK-net高萩IBRH13の地表で1026cm/s2を観測)を対象として、SMGAの逆解析を行った。

2.解析方法とデータについて

震源断層モデルは経験的グリーン関数法(EGF)を用いた逆解析によって同定する。未知数は、SMGA破壊開始点の位置、応力降下量比c、重ねあわせ数N、SMGAのサイズ、SMGA内の破壊伝播速度、SMGAの破壊開始時刻、ライズタイム、破壊の揺らぎを与える乱数とした。SMGAの逆解析には非線形問題にも利用でき、初期値に依存しないハイブリッドヒューリスティック法(山中、2007)を用いた。

解析に使用した観測点は非線形の影響が小さいと考えられる観測点を選定する。まず、KiK-net地中観測点のうち、震源近傍の2点IBRH13、IBRH14(十王)を選定した。SMGAの同定には震源断層を囲むような配置が望ましく、KiK-netのみでは観測点が不足する。そこでK-NETの観測点から野口・笹谷(2012)によるDNLを用いて、非線形の影響が小さいIBR001(大子)とFKS014(矢祭)の2点も選定した。

要素地震は震源断層付近で発生している地震の中から、IBRH13の本震記録と波形形状が近い7地震を選定し、それぞれの地震に対し逆解析を実施することとした。

3.SMGAの同定

要素地震の候補となる小地震のfcは、本震との震源スペクトル比を求め、ω-2モデルを仮定して記録に適合するように遺伝的アルゴリズムで同定した。探索範囲の設定には既往の震源モデル(JMA, 2017)や小地震と本震の震源スペクトル比から予想されるcやNを参考にしながら設定した。このとき、M0はF-netによる値を、短周期レベルAは震源スペクトル比から求められた値を超えないように条件を設定した。同定に用いる誤差関数には、加速度包絡形、変位波形、およびフーリエ振幅とした。

一つのSMGAを仮定して震源近傍の地震動を説明するSMGAを推定した。推定されたSMGA位置は既往の震源インバージョンの結果(気象庁、2017や引間、2017)のすべりが大きい場所とよく対応している。SMGAは、全体のM0の約1/3、短周期レベルAが約2/3と推定された。IBRH13を除く3点を用いた同定も実施した。その結果、SMGAの位置についてはばらつきが見られたが、他のパラメータは4点を用いた結果と概ね対応することを確認した。

さらに推定したSMGAが震源近傍の地震動を再現するかを確認するため、IBRH13の地中観測点を対象として、波数積分法(Hisada and Bielak, 2003)を用いシミュレーションを行った。解析に用いる地下構造モデルは、PS検層の情報がある深さまではその情報を用い、それ以深についてはJ-SHISのモデルを参照した。すべり角はG-CMT解やJMA初動解を参照して、-70度と設定し、ライズタイムは試行錯誤的に求めた。シミュレーション結果は観測記録に見られるパルス波や応答スペクトルを再現する結果が得られた。ここで推定したSMGAを用いると、理論に基づくグリーン関数からも観測記録を再現できることを確認した。

4.既往研究との比較

本検討で推定したSMGAの面積と、Miyake et al.(2003)によるM0-SSMGAの関係と比較する。本検討結果は既往研究によるSMGAの面積よりも小さい。乱数の異なる解もMiyake et al.(2003)の関係よりも全て小さい結果となった。両者の違いを考察すると、一つはモデル化の考え方の違いによると考えられる。本検討のSMGAは前述の通り全体のM0の約1/3、Aの約半分を負担している。一方、Miyake et al.(2003)のSMGAは本震のM0、Aの全てをSMGAに負担するように設定しており、その違いが表れている可能性がある。このことを確かめるため、他の地震も検討しデータを蓄積していくことが重要であると考え、2013年栃木県北部の地震を対象とした解析も予定している。