日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS13] 強震動・地震災害

2019年5月27日(月) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:栗山 雅之(一般財団法人 電力中央研究所 地球工学研究所 地震工学領域)、染井 一寛(一般財団法人地域地盤環境研究所)

[SSS13-P29] 微動アレイ観測に基づく佐賀平野のS波速度構造

*吉見 雅行1重藤 迪子2丸山 正1 (1.産業技術総合研究所活断層・火山研究部門、2.九州大学大学院人間環境学研究院)

キーワード:微動アレイ探査、S波速度構造、佐賀平野

佐賀平野は筑紫平野の中部に位置する堆積平野である。平野の北は背振山地で境され、南は有明海に面する。平野は概ね低平で、平野内には多くの河川やクリークが分布する。背振山地と佐賀平野の境界部にはほぼ東西走向の佐賀平野北縁断層帯が存在する。佐賀平野の中央部には佐賀市が位置する。地震調査研究推進本部や佐賀県防災想定によると、佐賀平野北縁断層帯の活動により佐賀市一帯は軒並み震度7相当の揺れに見舞われると予想されている。しかしながら、佐賀平野の深部地盤構造に関する情報はごく限られており、想定に用いられた速度構造モデルの信頼性は高くない。
地震調査研究推進本部による佐賀平野北縁断層帯の活断層調査の一環として、背振山地南麓を北端とする測線長7.3kmのP波反射法地震探査が実施され(丸山ほか、2017)、堆積層と基盤岩の境界が明瞭にイメージされた。それによると、測線北端では露頭する三郡変成岩類からなる基盤岩上面は、南へと緩やかに深度を増し、佐賀平野北縁断層帯の低断層崖が認められる川久保付近で深度約200m、測線南部のJR長崎本線伊賀屋駅付近で深度約600m、測線南端では深度700m程度に達する。測線に沿った重力異常は南ほど低値を示しており、基盤岩上面の深度の変化傾向と整合的である。佐賀平野全体の重力異常は、反射法測線の南方でさらに低下するため、より南方では基盤岩深度は増すと予想される。
佐賀平野に分布する堆積層のS波速度に関する情報も少ない。佐賀県地震被害等予測調査(佐賀県、2014)ではボーリングデータに基づき佐賀平野の工学的基盤深度は60〜70m程度と推定され、第四系にVs 100 m/sから400 m/sのS波速度が設定されたが、それ以深のS波速度はJ-SHISの設定値を援用し(表層のみVs 500 m/sに変更)たのみである。また、速度構造モデルの修正は地震観測点におけるR/Vスペクトルのピーク周期を説明するように実施されたのみで、新たな探査は行われなかった。
そこで、佐賀平野のS波速度構造の概要を把握するため、佐賀平野北縁から有明海沿岸にかけて、反射法探査測線およびその延長に沿う4地点にて微動アレイ探査を実施した。アレイ半径は最大500 m程度、最小10 m程度とし、3成分の速度型微動計(東京測振SE-321、固有周期10秒)にて微動を観測した。暫定的な結果ではあるが、南ほど基盤深度が低下する傾向と、堆積層にVs 500〜700 m/s程度の層が想定されることが、観測位相速度データに基づく速度構造探索からわかった。