日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS13] 強震動・地震災害

2019年5月27日(月) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:栗山 雅之(一般財団法人 電力中央研究所 地球工学研究所 地震工学領域)、染井 一寛(一般財団法人地域地盤環境研究所)

[SSS13-P34] 小規模微動アレイ(5〜15m)によるベトナム国トゥアティエン=フエ省フエ市周辺の平均S波速度分布

*長 郁夫1大久保 慎人2 (1.産業技術総合研究所、2.高知大学)

キーワード:微動、アレイ、表面波、ベトナム

我々は,ベトナム国トゥアティエン=フエ省フエ市を対象として,水力発電の安全な運行と世界文化遺産保護のための地震ハザード評価を進めている.これはベトナムアカデミー(VAST) Nguyen Anh Duong博士との共同研究である.その一貫として,同地域で多数の小規模微動アレイ観測を実施して浅部地盤平均S波速度分布を評価したので以下に報告する.

この取り組みは,VASTによる微動アレイ探査技術の習得をサポートすることから開始した.まず,著者らは,VAST の研究チームによる微動観測の実習として,2017年10月20, 21日にハノイ郊外の4地点で小規模微動アレイ観測を実施した.SPAC法の適用を前提として, 3成分サーボ型速度計を用いて長さ30mの直線アレイを展開し,各地点で1〜2時間微動を記録した.著者らは2台の地震計(3成分サーボ型加速度計)を日本から持参し,5mから30m間隔の2点アレイを実施してVASTの観測機材による結果と比較した.

次のステップとして, VASTの研究チームと著者らは,2018年3月17〜19日にフエ市内の7地点で小規模微動アレイ観測を実施した.各地点で4.5Hzジオフォン(上下動)を用いて,辺長5m, 15mの三角アレイおよび長さ12mの線形アレイを実施するとともに, 日本から持参した2台の地震計で2点アレイを実施した.観測時間は各地点30分から1時間程度とした.これらの地点では屈折法探査が実施されているので,それらと照合できる.その結果,微動アレイの解析結果は既存の解析結果と整合的であった.

以上の準備期間を経て,VASTの研究チームは,2018年6―7月(のべ19日間)にフエ市内およびその周辺を含む約11x13kmの領域(126地点)で4.5Hzジオフォン(上下動)を用いた小規模微動アレイ観測を実施した.具体的には,89地点で辺長5mおよび15mの三角アレイ,37地点で長さ12mの線形アレイを実施した.観測時間は各地点30分間であった.

我々は,こうして取得したアレイデータにSPAC法を適用してレーリー波位相速度を同定した.各地点の結果からそれぞれ波長13m, 25m, 40mに対応する位相速度を読み取り,それぞれ深さ10m, 20m, 30mまでの平均S波速度と解釈してその面的分布を評価した.その結果,フエ市周辺の地質分布と整合的な結果が得られた.今後はアレイ観測を実施した各地点で3成分単点観測(H/Vスペクトル)を実施して地盤評価を高度化する予定である.