16:15 〜 16:30
[SSS14-04] 鹿児島湾で発生した M 5.3 の地震の前駆的活動及び余震活動にみられる震源 migration とその背後の非地震的過程
キーワード:鹿児島湾の地震活動、前駆的活動、余震、震源migration、空白域
地震の発生要因としては,断層上のせん断応力の増加の他に,面の摩擦強度の低下が考えられる.このことは,地震の発生に間隙水圧の変化が深く関わっていることを示唆する (例えば,Hasegawa, 2017; Hubbert and Rubey, 1959; Nur and Booker, 1972; Sibson, 1992).従って,地下の流体の挙動を調べることは地震の発生メカニズムを考える上でとても重要である. 震源 migration は,地下に存在する流体の移動や面に沿っての非地震性の滑りのような非地震的な現象に起因するとよく説明される.このように,詳細な震源の時空間分布は,地殻や上部マントルで生じている非地震的な現象を調べるための重要な手がかりとなる.
2017 年 7 月 11 日 11:56 (JST) に,鹿児島湾の深さ約 10 km を震源とする M 5.3 の地震が発生した.本震震源の周辺では,前年の2016 年 12 月頃を境に地震活動が活発化していたことがわかっている.本研究では, M 5.3 の地震の前後で発生した地震について,波形相関を用いた精密な震源再決定により求めた詳細な震源分布を用いて,一連の地震活動活発化の原因について調べた.
まず,気象庁一元化震源カタログに記載されている 2010 年1月から2018年4月の期間において鹿児島湾南部の本震震源周辺で発生した地震を対象にして,波形相関を用いることで精密な到達時刻差を求めた.この波形相関を用いて得られた到達時刻差データとカタログ記載の検測値の到達時刻差データに対し, DD 震源決定法 (Waldhauser & Ellsworth, 2002) を適用した.初期震源としては,気象庁一元化震源カタログデータを用いた.
震源再決定により,気象庁一元化カタログの震源では雲状にばらついていた震源が,複数枚の面状に集中した.それらのうちの主要な面の方向は,本震や余震のメカニズム解の節面の一つと整合的である.特に,前駆的活動の震源の多くは1枚の面状に集中し,震源が時間と共に面上を広がるような明瞭な震源 migration をする性質を示した.その「面」の中には震源の空白域がみられ,本震震源は空白域の端に位置する.余震の震源もまた空白域を避けるように分布することから,本震の主要なすべり域がこの空白域に対応する可能性がある.スペクトル比法を用いて推定した本震震源スペクトルのコーナー周波数から求めた本震の断層サイズはこの空白域の大きさと整合的であった.余震の震源は複数枚の面状構造を示し,その活動が時間とともに浅部から深部へと移動する傾向がみられる.このような浅部から深部へと向かう震源移動の特徴は,流体の関与が指摘されている,東北沖地震後にstress shadowである東北地方中部で発生した群発地震活動の特徴 (Yoshida & Hasegawa, 2018) と良く似ている.
以上の前駆的活動と余震活動にみられた震源の空白域および震源の migration などの特徴は,次のように考えると説明できるかもしれない.(1) 本震の発生に先立ち既存の亀裂等の弱面に流体が浸入し,弱面の摩擦強度が減少することで,活発な前駆的活動が生じた.そして,流体が弱面に沿って移動することに伴い,前駆的活動の発生場所も徐々に移動した. この際,トリガーされた非地震性すべりや本震の前駆的すべりも生じて地震発生・震源移動に貢献したかもしれない.(2) 前駆的活動がさらに進行し,前駆的活動では地震すべりが生じなかった空白域においてもついに本震すべりに至った. (3) 本震に伴う応力変化により広範囲で余震が生じた.また前駆的活動や本震に関与した流体が複数枚の弱面を伝わりながら浅部へ移動していった結果,震源も深部から浅部へと移動した.
2017 年 7 月 11 日 11:56 (JST) に,鹿児島湾の深さ約 10 km を震源とする M 5.3 の地震が発生した.本震震源の周辺では,前年の2016 年 12 月頃を境に地震活動が活発化していたことがわかっている.本研究では, M 5.3 の地震の前後で発生した地震について,波形相関を用いた精密な震源再決定により求めた詳細な震源分布を用いて,一連の地震活動活発化の原因について調べた.
まず,気象庁一元化震源カタログに記載されている 2010 年1月から2018年4月の期間において鹿児島湾南部の本震震源周辺で発生した地震を対象にして,波形相関を用いることで精密な到達時刻差を求めた.この波形相関を用いて得られた到達時刻差データとカタログ記載の検測値の到達時刻差データに対し, DD 震源決定法 (Waldhauser & Ellsworth, 2002) を適用した.初期震源としては,気象庁一元化震源カタログデータを用いた.
震源再決定により,気象庁一元化カタログの震源では雲状にばらついていた震源が,複数枚の面状に集中した.それらのうちの主要な面の方向は,本震や余震のメカニズム解の節面の一つと整合的である.特に,前駆的活動の震源の多くは1枚の面状に集中し,震源が時間と共に面上を広がるような明瞭な震源 migration をする性質を示した.その「面」の中には震源の空白域がみられ,本震震源は空白域の端に位置する.余震の震源もまた空白域を避けるように分布することから,本震の主要なすべり域がこの空白域に対応する可能性がある.スペクトル比法を用いて推定した本震震源スペクトルのコーナー周波数から求めた本震の断層サイズはこの空白域の大きさと整合的であった.余震の震源は複数枚の面状構造を示し,その活動が時間とともに浅部から深部へと移動する傾向がみられる.このような浅部から深部へと向かう震源移動の特徴は,流体の関与が指摘されている,東北沖地震後にstress shadowである東北地方中部で発生した群発地震活動の特徴 (Yoshida & Hasegawa, 2018) と良く似ている.
以上の前駆的活動と余震活動にみられた震源の空白域および震源の migration などの特徴は,次のように考えると説明できるかもしれない.(1) 本震の発生に先立ち既存の亀裂等の弱面に流体が浸入し,弱面の摩擦強度が減少することで,活発な前駆的活動が生じた.そして,流体が弱面に沿って移動することに伴い,前駆的活動の発生場所も徐々に移動した. この際,トリガーされた非地震性すべりや本震の前駆的すべりも生じて地震発生・震源移動に貢献したかもしれない.(2) 前駆的活動がさらに進行し,前駆的活動では地震すべりが生じなかった空白域においてもついに本震すべりに至った. (3) 本震に伴う応力変化により広範囲で余震が生じた.また前駆的活動や本震に関与した流体が複数枚の弱面を伝わりながら浅部へ移動していった結果,震源も深部から浅部へと移動した.