日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS14] 地震発生の物理・断層のレオロジー

2019年5月29日(水) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:岡崎 啓史(海洋研究開発機構)、向吉 秀樹(島根大学大学院総合理工学研究科地球資源環境学領域)、野田 博之(京都大学防災研究所)、吉田 圭佑(東北大学理学研究科附属地震噴火予知研究観測センター)

[SSS14-P19] 表現定理とグリーン関数 (3) ― 全無限グリーン関数の2階微分を用いた点震源が引き起こす歪み・応力・密度摂動場の表現 ―

*木村 将也1亀 伸樹1 (1.東京大学地震研究所)

キーワード:グリーン関数

地震発生に伴う物理現象の数理モデルにおいて,弾性変形場の歪み・応力・密度摂動との相互作用を考える問題においては,グリーン関数の空間2階微分の評価がしばしば必要となる.断層面上で応力と滑り速度の間に成り立つ境界積分方程式を用いた動的破壊問題の定式化はその典型である.近年,地震の即時検知の高度化の可能性として,地震発生に伴い光速で伝わる重力場・電磁場摂動の検出が提案されている.弾性波速度で広がっていく応力や密度の摂動は,ピエゾ電気・磁気や重力変化を引き起こす.このようなモデルにおいてもグリーン関数の2階微分の評価が必要になる.これらの研究では,震源をダブルカップル点震源とし,関連する物理量(電磁場摂動研究の場合は応力,重力場摂動研究の場合は密度摂動)に対して全無限グリーン関数(全無限均質等方弾性媒質中における動弾性グリーン関数の解析解)の空間2階微分を含む表現を導出している.全無限グリーン関数の空間2階微分の導出は,特段の難しさはないものの高次テンソルのため大変煩雑である.任意の力源に対して関連する物理量が全て統一的に記された公式を利用できれば,各自の研究テーマに専念でき便利であろう.
そこで本研究では,全無限グリーン関数の空間2階微分,およびこれを用いたモーメントテンソルで記述される点震源が引き起こす歪み・応力・密度摂動場の表現を導き公式として記す.この過程で得られるシングルフォース震源に対する表現式も同時に記す.次に,近年注目を集める地震の即時重力変化検出の研究について紹介し,弾性体中のダブルカップル震源が引き起こす重力摂動の理論モデル波形が,本稿の公式により簡便に,任意の震源に拡張されることを示す.また,公式の応用例として,地震により4象限型に動的に再分配される質量をマグニチュードの関数として導き概算を示す (Table 1).

Table 1. The relationship between Mw of an earthquake and dynamically induced quadratic earthquake mass redistribution.

Reference: 木村将也・亀伸樹, 2018, 表現定理とグリーン関数 (3) ― 全無限グリーン関数の2階微分を用いた点震源が引き起こす歪み・応力・密度摂動場の表現 ―, 地震2, 71, 153-160, doi:10.4294/zisin.2017-20