[SSS14-P25] 房総スロースリップイベントのすべり分布とすべり速度-応力の関係
キーワード:スロースリップ、すべり速度、応力変化、有効法線応力、速度状態依存摩擦則
房総半島沖合のプレート境界では地震波を放射せずにゆっくりとすべるスロースリップイベント(SSE)が、GNSS観測が開始した1996年から2018年までに6回検出されている。本研究ではこれまでの6回のSSEを統一的な手法に基づいて解析を行い、プレート境界面の摩擦特性の理解に迫ることを目的としている。
用いたデータは国土地理院による日々の座標値(F3解)である。SSEによる変動を抽出するために線形トレンドや季節変動などを除き、なめらかなフィッティングを行って3日間ごとの変動を取り出した。次にその変動データからABICインバージョン法を用いてすべり分布を推定した。求めたすべり分布からCoulomb 3.3を用いて応力変化の計算を行った。
解析の結果、各SSEですべり量やすべり中心の場所に違いがあることがわかった。最大すべり量が1996年と2014年は7 cmほど、その他の年(2002, 2007, 2011, 2018)では14-20 cmであった。また1996年と2014年はすべりの発生から収束までほぼ同じ領域で推移したのに対し、他の4つのイベントはすべりがより浅い南方へと広がった。剪断応力変化は主なすべり領域で0.1-0.3 MPaほどであった。対数すべり速度と剪断応力変化の関係から、SSEの開始期から安定活動期、収束期の流れが見え、安定活動期の軌跡の傾きは深さとともに大きくなっていた。
断層面のすべりを考える際に速度状態依存摩擦則を用いた。定常状態の摩擦強度を表す式から、対数すべり速度と摩擦強度のグラフ上で定常状態摩擦の線の傾きは、摩擦パラメータa-b と有効法線応力σnの積で表せる。SSEは準静的な安定すべりであり、その場の剪断応力変化は摩擦抵抗と釣りあっていると考えられる。上の摩擦則を用いた準静的すべりシミュレーションのモデル実験結果と本研究の結果を組み合わせることで、SSEの安定活動期の対数すべり速度と剪断応力変化の傾きを利用して、房総沖のイベント時の摩擦パラメータや有効法線応力を推定する事ができる。a-b=-0.003と仮定すると、傾きから有効法線応力は2-20MPaほどであることが分かった。これはその深さにおける静岩圧よりはるかに小さな値であり、非常に高い間隙水圧の存在を示唆している可能性がある。
謝辞:解析では国土地理院の日々の座標値(F3解)とUSGSのCoulomb 3.3プログラムを使用しました。記して感謝します。
用いたデータは国土地理院による日々の座標値(F3解)である。SSEによる変動を抽出するために線形トレンドや季節変動などを除き、なめらかなフィッティングを行って3日間ごとの変動を取り出した。次にその変動データからABICインバージョン法を用いてすべり分布を推定した。求めたすべり分布からCoulomb 3.3を用いて応力変化の計算を行った。
解析の結果、各SSEですべり量やすべり中心の場所に違いがあることがわかった。最大すべり量が1996年と2014年は7 cmほど、その他の年(2002, 2007, 2011, 2018)では14-20 cmであった。また1996年と2014年はすべりの発生から収束までほぼ同じ領域で推移したのに対し、他の4つのイベントはすべりがより浅い南方へと広がった。剪断応力変化は主なすべり領域で0.1-0.3 MPaほどであった。対数すべり速度と剪断応力変化の関係から、SSEの開始期から安定活動期、収束期の流れが見え、安定活動期の軌跡の傾きは深さとともに大きくなっていた。
断層面のすべりを考える際に速度状態依存摩擦則を用いた。定常状態の摩擦強度を表す式から、対数すべり速度と摩擦強度のグラフ上で定常状態摩擦の線の傾きは、摩擦パラメータa-b と有効法線応力σnの積で表せる。SSEは準静的な安定すべりであり、その場の剪断応力変化は摩擦抵抗と釣りあっていると考えられる。上の摩擦則を用いた準静的すべりシミュレーションのモデル実験結果と本研究の結果を組み合わせることで、SSEの安定活動期の対数すべり速度と剪断応力変化の傾きを利用して、房総沖のイベント時の摩擦パラメータや有効法線応力を推定する事ができる。a-b=-0.003と仮定すると、傾きから有効法線応力は2-20MPaほどであることが分かった。これはその深さにおける静岩圧よりはるかに小さな値であり、非常に高い間隙水圧の存在を示唆している可能性がある。
謝辞:解析では国土地理院の日々の座標値(F3解)とUSGSのCoulomb 3.3プログラムを使用しました。記して感謝します。