日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS15] 活断層と古地震

2019年5月28日(火) 15:30 〜 17:00 A02 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、大上 隆史(産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、道家 涼介(神奈川県温泉地学研究所)、近藤 久雄(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、座長:小荒井 衛(茨城大学)、小松原 琢(産業技術総合研究所)

16:30 〜 16:45

[SSS15-04] 地層に記録された東南海地域の歴史時代・先史時代の津波

*藤野 滋弘1木村 治夫2小松原 純子3松本 弾3行谷 佑一3澤井 祐紀3宍倉 正展3 (1.筑波大学生命環境系、2.電力中央研究所、3.国立研究開発法人産業技術総合研究所)

キーワード:津波堆積物、南海トラフ、再来間隔

三重県の沿岸低地で機械ボーリングとハンドコアリングによる掘削調査を行ったところ,約4500–500年前に堆積した有機質泥層中に10層の砂層が見つかった.有孔虫や巻貝などの海生生物の遺骸を多く含むことや,現世津波堆積物と共通する堆積構造を有することから,これらの砂層を津波堆積物と解釈した.この調査地は安政東海地震津波(1854年)で浸水して砂が堆積したことが文書に記録されているが,伊勢湾台風(1959年)では浸水や砂の堆積の記録はない.見つかった砂層の内,上位3層の年代値は明応地震津波(1498年),永長地震津波(1096年),白鳳地震津波(684年)に重なる.この結果は白鳳地震の破壊域が東南海地域にまで及んでいたか,白鳳地震前後に別の地震が東南海地域で発生していたという地震考古学の仮説を支持する.一方,破壊域が東南海地域にまで及んでいたとも言われる仁和地震(887年)や正平地震(1361年)の津波の痕跡は見つからなかった.仮に,上位3層の砂層が明応,永長,白鳳地震津波によるものであり,かつ仁和,正平地震津波がこの地域に及んでいなかった場合,7–15世紀の東南海地域における津波の再来間隔は約400年となる.これは,南海トラフでは100年前後の一定の間隔で地震・津波が発生する,という一般に広く信じられている説と一致しない.また,調査地における先史時代の津波堆積物の年代間隔も100–600年程度でばらついていた.南海トラフにおける地震・津波の再来間隔については今後さらに検証する必要があるが,一定の再来間隔という先入観を持たないことが必要である.