日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS15] 活断層と古地震

2019年5月29日(水) 13:45 〜 15:15 A02 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、大上 隆史(産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、道家 涼介(神奈川県温泉地学研究所)、近藤 久雄(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、座長:大上 隆史(産業技術総合研究所)、奥村 晃史(広島大学)

15:00 〜 15:15

[SSS15-20] ネパール中部ブトワル周辺におけるヒマラヤ前縁衝上断層の最新活動時期

*奥村 晃史1Soma Nath Sapkota2Prakash Pokhrel2近藤 久雄4拓哉 古橋3 (1.広島大学大学院文学研究科、2.Department of Mines and Geology、3.太平洋セメント株式会社、4.産業技術総合研究所)

キーワード:ヒマラヤ前縁衝上断層、古地震学、トレンチ発掘調査

2015年ゴルカ地震 (Mw 7.8) ではヒマラヤ前縁衝上断層の深さ約5〜10 kmの領域が活動し,最も浅い部分,断層幅にして約 40 km の領域に動きはなかった.2015年に活動しなかった領域では,近い将来の大地震発生の可能性も考えられ,ネパール中部地震ヒマラヤ前縁衝上断層の地震ポテンシャルの解明が緊急の課題となっている.最新活動時期については,Mishra et al. (2016),Bollinger et al. (2016),Wesnousky et al. (2017) は最新活動時期として,それぞれ 1100 CE,1344 CE または 1408 CE,1221 CE から 1262 CE (特に1255 CE)を報告し,一致した見解は得られていない.また,この地域より西のネパール西部・インド北部のヒマラヤ前縁衝上断層では,1505 CE に広い範囲で破壊が起きたことが報告されているが(Malik et al., 2016)その東方延長とネパール中部の地震との関係も不明である.筆者らは 2015年の未破壊領域の南西端近くのブトワル周辺の2地点でヒマラヤ前縁衝上断層の最新活動時期を確定するための古地震調査を実施した.ブトワル西方 12 km のソラウリ (27.70°N 83.36°E) で行ったトレンチ発掘調査では,断層を露出させることはできなかったが,断層上盤で断層に向けて傾斜する細砂〜シルト層が地震後のアバットする地層によって覆われる状況を確認できた.傾斜する細砂〜シルト層上面をイベント層準とした場合,ベーズ理論に基づく放射性炭素同位体年代モデルからは,1328--1435 CE のイベント年代値が得られた.この年代は最新イベントが1344 CE または 1408 CEに起きた可能性を指示する.1回前のイベントを認めることはできなかったが,676 CE 以降の地層には最新イベント1回の変位だけが認められた.ブトワル東方約 60 kmのソスト (27.48°N 83.86°E) では,扇状地性段丘面を変位させる低断層崖を開析する小河川の作る扇状地にトレンチを掘削した.ここでも断層を露出させることはできなかったが,断層推定値を横切って下盤に向け急傾斜する細砂〜シルト層が地震後のアバットする地層によって覆われる状況を確認できた.イベント層準をソラウリと同様に認定して年代測定を実施した.