日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS15] 活断層と古地震

2019年5月29日(水) 15:30 〜 17:00 A02 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、大上 隆史(産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、道家 涼介(神奈川県温泉地学研究所)、近藤 久雄(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、座長:道家 涼介(神奈川県温泉地学研究所)、小荒井 衛(茨城大学)

16:00 〜 16:15

[SSS15-22] 小型UAVを用いたレーザ測量による森林下の微地形取得―2008年岩手宮城内陸地震時の地震断層を例に―

*今野 明咲香1鈴木 太郎2遠田 晋次1 (1.東北大学災害科学国際研究所、2.早稲田大学)

キーワード:UAVレーザ測量、地上レーザ測量、微地形、地震断層、2008年岩手宮城内陸地震

近年盛んに行われているUAV (Unmanned Aerial Vehicle)を用いた地形計測として,主として多視点写真画像によるSfM(Structure from Motion)が用いられている。しかし,この方法は,撮影範囲に基準点(GCP: Ground Control Point)を設置する必要があるため,UAVの運用性を十分に生かしきれない。さらに,上空から写真撮影ができない森林下などには適用できない。LiDARを用いたUAVレーザ計測は,上記SfMの欠点を克服できる有効な手段となることが期待されている。ただし,UAVでのレーザ測量にも,レーザースキャニングのための高精度姿勢計測センサの搭載重量の問題,GNSS(Global Navigation Satellite System)の単独測位精度(3m以下)による位置情報精度の問題などがあった。しかし最近,センサの小型化が進み,高精度な位置姿勢情報の推定技術が確立し(例えばSuzuki et al.,2016),UAVレーザ測量による詳細な地形情報の取得が現実的なものとなってきた。

そこで本研究では2008年岩手宮城内陸地震において森林下に出現した地震断層を対象に,UAVレーザ計測を試み,既存の地上レーザ計測結果(Maruyama et al.,2008;Yoshimi et al., 2010)と比較することで,断層調査への適用性と手法の有効性を検証した。調査対象は,2008年岩手宮城内陸地震によって出現した荒砥沢ダム北東に位置する長さ約0.7km,比高数十cm~2mの地震断層である。計測は2018年11月15日に実施した。計測時の飛行高度は50~70m程度である。対象範囲はスギ植林と広葉樹により覆われ,空中写真からは地震断層を確認することはできない。UAV航空レーザ測量には,早稲田大学所有のDJI社Matrice 600 Proを使用した。機体にはu-blox社の一周波GNSS 受信機6台搭載し,これらの位置関係から姿勢(0.1°)と位置(1㎝)を高精度に求めることができる。この位置情報に基づき,Velodyne社のVLP-32Cを用いてレーザ測量を行い,森林下の詳細な地形データを取得した。得られた点群データはISP社のLandFormsを使用してフィルタリングを行い,地表点のみ抽出した。

地震断層が出現した合計約0.16㎞の範囲を測量し,約15分間の飛行で約6900万点の点群データが得られた。ここから樹木等のデータを除くと地上の点群データは約20万点となった。地上レーザ計測で得られた地表点群データ(約800万点)と比較すると,UAV航空レーザ計測の方がデータ数が少ないものの,点密度に偏りが無くデータの欠損部分が少なかった。地上レーザ計測は,設置した機械点から水平方向にレーザを照射するため点密度に粗密が生じ,機械点から影となる場所ではデータが取得できないという欠点がある。得られた点群から作成した3Dモデルを比較すると,UAVレーザ測量,地上レーザ測量ともにセンチメートルオーダーで地震断層崖の地形を取得できた。

以上のことから,UAVレーザ測量は地上レーザ測量とほぼ同等の地形情報取得能力と精度があり,地上レーザ測量よりも作業時間は圧倒的に短く,データの均一性が高いことが分かった。したがって,森林域などの地震断層調査において非常に有効な手段となり得る。また,センチメートルオーダーでの地形情報が取得可能であり,断層崖の高精度の三次元形状やその後の経時変化などの調査にも有効であることが明らかとなった。

※本研究は革新的研究開発プログラム(ImPACT,代表:東北大 田所諭教授)の成果である。

引用文献

Taro Suzuki, (2010) Precise UAV Position and Attitude Estimation by Multiple GNSS Receivers for 3D Mapping, in The 29th International Technical Meeting of The Satellite Division of the Institute of Navigation (ION GNSS+ 2016), pp. 1455 – 1464.

Maruyama, T., Toda, S., Yoshimi, M., Omata, M., Kohriya, Y., & Nihei, T. (2008). Ground-based LiDAR Mapping of Surface Rupture Associated with the 2008 Iwate-Miyagi Nairiku, Japan, Earthquake (Mw 6.9). In Eos Trans. AGU, Vol. 89, p. Meet. Suppl., Abstract T53D-1998.

Yoshimi, M., Maruyama, T., & Toda, S. (2010). Surface deformation extracted from trees ’ tilt around surface ruptures of the 2008 Iwate-Miyagi inland earthquake, Japan, using ground-based LiDAR point clouds. In Eos Trans. AGU, Vol. 91, p. West. Pac. Geophys. Meet. Suppl., Abstract T33A-07.