[SSS15-P15] 郷村断層帯における地表から震源域にいたるまでの比抵抗構造の解明
キーワード:郷村断層、電気伝導度、活断層、地磁気地電流法
はじめに
活断層の性状・活動性を明らかにするためには,これらの地表形状のみならず地下構造を明らかにすることも重要である.そのための地球物理学的手法の一つに地磁気地電流法(Magnetotelluric method;MT法)がある.これは,活断層直下および近傍で見いだされる特徴的な比抵抗構造に注目し,それらから断層の地下構造を求める手法であり,これまでにも,多くの断層系に対して広帯域MT法(Wideband MT method;WBMT法)を用いた調査が行われてきた(例えば,Yoshimura et al., 2009).しかし,この手法では,信号として用いる電磁場変動の周波数帯は広いものの,比較的低い周波数帯域の信号を用いているので深部までの探査が可能であるものの,浅部の空間分解能が悪いとの弱点がある.
活断層を対象として,地形学・地質学的手法を用いた研究が精力的に行われてきており,数多くの成果が挙げられている.これらの成果と地下比抵抗構造の成果を有機的につなげるためには,地下浅部(地表~深さ数km程度)の構造が重要であり,このような深度に対して,地形学・地質学的手法による成果との対比可能な空間分解能を持つMT手法としてAudio-frequency MT法(AMT法)がある.
本研究では,活断層の地下浅部から深部までの連続的な構造(特に浅部では高解像度の構造)の解明を目的とし,京都府の丹後半島に位置する郷村断層帯においてAMT法調査とWBMT法調査の両方を同一測線上で行い,地表から震源域にいたるまでの比抵抗構造の解明を行った.
郷村断層帯は京都府の丹後半島に位置する活断層帯で,陸上部は郷西方断層,郷村断層,仲禅寺断層の3つの断層で構成される.郷西方断層は断層長が2.8kmと非常に短く,横ずれ変位を示す地形も不明瞭である.郷村断層では1927年の北丹後地震の際に左横ずれを主とする顕著な地表地震断層が生じた.一方,仲禅寺断層では明瞭な河谷の左横ずれ屈曲が認められるものの,北丹後地震の際には活動しなかった.このように郷村断層帯では断層長,平均変位速度,最新活動時期など断層運動の特性が異なる断層が数km以内に近接し,並行して存在している.さらに郷村断層帯周辺は,ほとんどが花崗岩の岩盤からなり地質構造は一様で単純であるため,断層の地下構造と断層の特性を比較するのに好適である.
観 測
郷村断層帯周辺では2013年,2016年にAMT法調査が行われている(山口ほか,2016;三村ほか,2017).本研究ではこれら調査測線と同じ測線上において.WBMT法調査ではおよそ等間隔になるように7点の観測点を,AMT法調査では過去の観測点を補間するように2点の観測点を配置した.AMT法調査の観測点数は先行研究と合わせ合計27点である.
解 析
AMT法,WBMT法調査のデータ解析は,ともにRemote reference法(Gamble et al., 1978)に基づいてMT応答関数を算出した.両調査において周波数選択を行ったのち次元の判定を行い,AMT法調査では2次元の,WBMT法調査では3次元のモデル計算を行った.AMT法,WBMT法調査のモデル計算にはそれぞれOgawa and Uchida (1996) ,WSINV3DMT (Siripunvaraporn et al., 2005) のインバージョンコードを使用した.
AMT法,WBMT法調査の解析の結果得られたモデルをそれぞれ浅部モデル,深部モデルと呼ぶ.なお,WBMT法調査の解析では3次元のモデル計算を行ったが,観測点は一本の直線上にしか配置していないため,測線に沿った鉛直断面についてのみ議論する.
結果と考察
郷村断層の直下には,浅部と深部の両方に低比抵抗領域が存在する.これらの領域は断層運動によって生じた空隙に流体が浸入したことによって生じた領域であると考えられる.それぞれの領域は中深度(深さ2~5km程度)では連続していないことから浅部の低比抵抗領域は地表付近の地下水が浸入したことによって,また,深部の低比抵抗領域は深部から流体が上昇してきたことによって生じたと解釈した.
郷村断層の断層面は郷村断層の地表位置,浅部の低比抵抗領域,深部の低比抵抗領域および1927年の北丹後地震の震源位置を通ると判断して断層面を推定した.この断層面は震源が集中している領域を通っており,震源分布とも整合的である.
活断層の性状・活動性を明らかにするためには,これらの地表形状のみならず地下構造を明らかにすることも重要である.そのための地球物理学的手法の一つに地磁気地電流法(Magnetotelluric method;MT法)がある.これは,活断層直下および近傍で見いだされる特徴的な比抵抗構造に注目し,それらから断層の地下構造を求める手法であり,これまでにも,多くの断層系に対して広帯域MT法(Wideband MT method;WBMT法)を用いた調査が行われてきた(例えば,Yoshimura et al., 2009).しかし,この手法では,信号として用いる電磁場変動の周波数帯は広いものの,比較的低い周波数帯域の信号を用いているので深部までの探査が可能であるものの,浅部の空間分解能が悪いとの弱点がある.
活断層を対象として,地形学・地質学的手法を用いた研究が精力的に行われてきており,数多くの成果が挙げられている.これらの成果と地下比抵抗構造の成果を有機的につなげるためには,地下浅部(地表~深さ数km程度)の構造が重要であり,このような深度に対して,地形学・地質学的手法による成果との対比可能な空間分解能を持つMT手法としてAudio-frequency MT法(AMT法)がある.
本研究では,活断層の地下浅部から深部までの連続的な構造(特に浅部では高解像度の構造)の解明を目的とし,京都府の丹後半島に位置する郷村断層帯においてAMT法調査とWBMT法調査の両方を同一測線上で行い,地表から震源域にいたるまでの比抵抗構造の解明を行った.
郷村断層帯は京都府の丹後半島に位置する活断層帯で,陸上部は郷西方断層,郷村断層,仲禅寺断層の3つの断層で構成される.郷西方断層は断層長が2.8kmと非常に短く,横ずれ変位を示す地形も不明瞭である.郷村断層では1927年の北丹後地震の際に左横ずれを主とする顕著な地表地震断層が生じた.一方,仲禅寺断層では明瞭な河谷の左横ずれ屈曲が認められるものの,北丹後地震の際には活動しなかった.このように郷村断層帯では断層長,平均変位速度,最新活動時期など断層運動の特性が異なる断層が数km以内に近接し,並行して存在している.さらに郷村断層帯周辺は,ほとんどが花崗岩の岩盤からなり地質構造は一様で単純であるため,断層の地下構造と断層の特性を比較するのに好適である.
観 測
郷村断層帯周辺では2013年,2016年にAMT法調査が行われている(山口ほか,2016;三村ほか,2017).本研究ではこれら調査測線と同じ測線上において.WBMT法調査ではおよそ等間隔になるように7点の観測点を,AMT法調査では過去の観測点を補間するように2点の観測点を配置した.AMT法調査の観測点数は先行研究と合わせ合計27点である.
解 析
AMT法,WBMT法調査のデータ解析は,ともにRemote reference法(Gamble et al., 1978)に基づいてMT応答関数を算出した.両調査において周波数選択を行ったのち次元の判定を行い,AMT法調査では2次元の,WBMT法調査では3次元のモデル計算を行った.AMT法,WBMT法調査のモデル計算にはそれぞれOgawa and Uchida (1996) ,WSINV3DMT (Siripunvaraporn et al., 2005) のインバージョンコードを使用した.
AMT法,WBMT法調査の解析の結果得られたモデルをそれぞれ浅部モデル,深部モデルと呼ぶ.なお,WBMT法調査の解析では3次元のモデル計算を行ったが,観測点は一本の直線上にしか配置していないため,測線に沿った鉛直断面についてのみ議論する.
結果と考察
郷村断層の直下には,浅部と深部の両方に低比抵抗領域が存在する.これらの領域は断層運動によって生じた空隙に流体が浸入したことによって生じた領域であると考えられる.それぞれの領域は中深度(深さ2~5km程度)では連続していないことから浅部の低比抵抗領域は地表付近の地下水が浸入したことによって,また,深部の低比抵抗領域は深部から流体が上昇してきたことによって生じたと解釈した.
郷村断層の断層面は郷村断層の地表位置,浅部の低比抵抗領域,深部の低比抵抗領域および1927年の北丹後地震の震源位置を通ると判断して断層面を推定した.この断層面は震源が集中している領域を通っており,震源分布とも整合的である.