[SSS15-P19] 阿蘇カルデラ外輪山北西部，的石牧場Ⅰ断層周辺の浅部地下構造調査
キーワード：的石牧場Ⅰ断層、GPR探査、地形・地質調査、トレンチ調査、2016年熊本地震
１．はじめに
平成28年（2016年）熊本地震（Mj 7.3）では，阿蘇外輪山北西部において多数の線状の地表変位が干渉SARにより検出され（Fujiwara et al., 2016），本震に伴って副次的に変位したと考えられる．その多くは既知の活断層に沿って現れ，そのうちの的石牧場Ⅰ断層においてそのメカニズム解明に向けた詳細な地形・地質調査を実施している（宇根ほか，2018；Nakano et al., 2018など）．本発表では，的石牧場Ⅰ断層周辺の地形発達史を明らかにするために実施した地形・地質調査及びGPR（Ground Penetrating Radar）による浅部地下構造探査結果を報告する．
２．結果と考察
的石牧場Ⅰ断層の断層崖脚部で実施したトレンチ調査により，深いところではGL-3.5m（標高約917.4m），浅いところではGL-0.3m（標高約921.6m）付近でAso-4火砕流堆積物（89ka）とみられる白色の火山砕屑物が確認されている（宇根ほか，2018）．また，周辺の地形・地質調査により，断層北側の渓床（標高約917.8m）や断層南側の丘陵地内のガリ床（標高約935.0m）でもAso-4火砕流堆積物とみられる白色火山砕屑物が確認できた．さらにサイト東方においては，この地域の代表的な堆積構造を示すと考えられる露頭を確認し，Aso-4火砕流堆積物の上位には複数枚のテフラ層を挟む黒ボク及びローム層が厚さ5m程度堆積していた．的石牧場Ⅰ断層を横断する測線で実施したGPR探査（Sensors & Software社製Noggin Plus，アンテナ中心周波数250MHz）では，断層の南側（正断層の上盤側）のGL-2～-4m（標高約915～917m）付近に明瞭なエコーがみられたが，これはこれまでのトレンチ調査や断層南側の水路での地質調査から，地表下の黒ボク層の下位に存在するローム層の上面またはそれを覆う河床礫層を捉えたものと考えられる．断層の北側（正断層の下盤側）ではGL-1～-1.5m（標高約930.5～931m）以深でレーダ波のエコーが急激に減衰しており，上位層よりも比誘電率が大きい地層の存在が示唆されるとともに，GL-4～-5m（標高約927～928m）付近に弱いエコーがみられ，その連続性からAso-4火砕流堆積物の上面を捉えた可能性がある．これらの結果を考慮すると，Aso-4火砕流堆積物上面の形状は概ね現地形に類似しているが，断層南側ではGL-5m以深に，断層北側ではGL-4～-5m付近に存在し，断層を挟むその比高差は約13m以上と推定され，これが約9万年間の的石牧場Ⅰ断層の見かけ鉛直変位量と考えられる．
３．まとめと課題
熊本地震に伴い副次的に変位した的石牧場Ⅰ断層周辺において，地形・地質調査及び浅部地下構造調査を実施した結果，地下浅部構造の推定とAso-4火砕流堆積面の見かけ変位量を推定できた．今後はパーカッションボーリングの結果も参照し，GPR探査結果をより詳細に分析・解釈する予定である．
謝辞：本研究で使用したGPR探査装置は，名古屋大学の鈴木康弘教授よりお借りしました．本研究の一部は，JSPS科研費JP17K01234（研究代表者：佐藤浩）の助成を受けたものです．ここに記して感謝申し上げます．
引用文献：
Fujiwara et al. (2016): Small displacement linear surface ruptures of the 2016 Kumamoto earthquake sequence detected by ALOS-2 SAR interferometry. Earth, Planets and Space, 68:160.
Nakano et al. (2018): Geomorphological and geological characteristics of triggered surface faults associated with 2016 Kumamoto Earthquake sequence around the northwest of the outer rim of the Aso caldera, southwestern Japan, AGU Fall Meeting 2018.
宇根ほか（2018）：阿蘇外輪山北西部・的石牧場Ⅰ断層の活動履歴．日本活断層学会2018年度秋季学術大会．
平成28年（2016年）熊本地震（Mj 7.3）では，阿蘇外輪山北西部において多数の線状の地表変位が干渉SARにより検出され（Fujiwara et al., 2016），本震に伴って副次的に変位したと考えられる．その多くは既知の活断層に沿って現れ，そのうちの的石牧場Ⅰ断層においてそのメカニズム解明に向けた詳細な地形・地質調査を実施している（宇根ほか，2018；Nakano et al., 2018など）．本発表では，的石牧場Ⅰ断層周辺の地形発達史を明らかにするために実施した地形・地質調査及びGPR（Ground Penetrating Radar）による浅部地下構造探査結果を報告する．
２．結果と考察
的石牧場Ⅰ断層の断層崖脚部で実施したトレンチ調査により，深いところではGL-3.5m（標高約917.4m），浅いところではGL-0.3m（標高約921.6m）付近でAso-4火砕流堆積物（89ka）とみられる白色の火山砕屑物が確認されている（宇根ほか，2018）．また，周辺の地形・地質調査により，断層北側の渓床（標高約917.8m）や断層南側の丘陵地内のガリ床（標高約935.0m）でもAso-4火砕流堆積物とみられる白色火山砕屑物が確認できた．さらにサイト東方においては，この地域の代表的な堆積構造を示すと考えられる露頭を確認し，Aso-4火砕流堆積物の上位には複数枚のテフラ層を挟む黒ボク及びローム層が厚さ5m程度堆積していた．的石牧場Ⅰ断層を横断する測線で実施したGPR探査（Sensors & Software社製Noggin Plus，アンテナ中心周波数250MHz）では，断層の南側（正断層の上盤側）のGL-2～-4m（標高約915～917m）付近に明瞭なエコーがみられたが，これはこれまでのトレンチ調査や断層南側の水路での地質調査から，地表下の黒ボク層の下位に存在するローム層の上面またはそれを覆う河床礫層を捉えたものと考えられる．断層の北側（正断層の下盤側）ではGL-1～-1.5m（標高約930.5～931m）以深でレーダ波のエコーが急激に減衰しており，上位層よりも比誘電率が大きい地層の存在が示唆されるとともに，GL-4～-5m（標高約927～928m）付近に弱いエコーがみられ，その連続性からAso-4火砕流堆積物の上面を捉えた可能性がある．これらの結果を考慮すると，Aso-4火砕流堆積物上面の形状は概ね現地形に類似しているが，断層南側ではGL-5m以深に，断層北側ではGL-4～-5m付近に存在し，断層を挟むその比高差は約13m以上と推定され，これが約9万年間の的石牧場Ⅰ断層の見かけ鉛直変位量と考えられる．
３．まとめと課題
熊本地震に伴い副次的に変位した的石牧場Ⅰ断層周辺において，地形・地質調査及び浅部地下構造調査を実施した結果，地下浅部構造の推定とAso-4火砕流堆積面の見かけ変位量を推定できた．今後はパーカッションボーリングの結果も参照し，GPR探査結果をより詳細に分析・解釈する予定である．
謝辞：本研究で使用したGPR探査装置は，名古屋大学の鈴木康弘教授よりお借りしました．本研究の一部は，JSPS科研費JP17K01234（研究代表者：佐藤浩）の助成を受けたものです．ここに記して感謝申し上げます．
引用文献：
Fujiwara et al. (2016): Small displacement linear surface ruptures of the 2016 Kumamoto earthquake sequence detected by ALOS-2 SAR interferometry. Earth, Planets and Space, 68:160.
Nakano et al. (2018): Geomorphological and geological characteristics of triggered surface faults associated with 2016 Kumamoto Earthquake sequence around the northwest of the outer rim of the Aso caldera, southwestern Japan, AGU Fall Meeting 2018.
宇根ほか（2018）：阿蘇外輪山北西部・的石牧場Ⅰ断層の活動履歴．日本活断層学会2018年度秋季学術大会．