日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS15] 活断層と古地震

2019年5月28日(火) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、大上 隆史(産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、道家 涼介(神奈川県温泉地学研究所)、近藤 久雄(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)

[SSS15-P22] ALOS 30 DEMの3D画像判読によるモンゴルの活断層図試作

*中田 高1鈴木 康弘2渡辺 満久3 (1.広島大学、2.名古屋大学、3.東洋大学)

キーワード:モンゴル、活断層、ALOS 30

発表者らは,「アジアのデジタル活断層マップ」作成のための調査・研究プロジェクトを立ち上げた.アジア全域の広範な地域の活断層を5年間で効率的に判読するために,ALOS 30 DSMから作成したアナグリフ画像をGoogle Earthに取り込んで判読した.さらに,判読した活断層線や関連情報をGoogle Earthの描画機能(線(パス)やポイント(目印))活用して直接マッピングを行った.また,アナグリフ画像の透過度を変えてGoogle Earthの画像をもとに修正作業を行い,活断層のより詳細な位置・形状情報を整備する手法を採用した(中田他,2019).まず,このマッピング手法の有効性や問題点を検討する草地や乾燥した無植生地域が広いモンゴルを事例に広域活断層図を試作している.
ALOS 30 DSMは,JAXAが2006-2011年にかけて「だいち」で取得したデータをもとに作成された水平解像度30m相当のDEMデータセットで,1度×1度単位を1タイルとして提供されている.本研究では地形表現に適した中央値データを,Mac用のフリーソフト(Simple DEM Viewer)を用いて5度×5度の範囲のアナグリフ画像を作成した.その際,低断層崖などの細かな変位地形を認識しやすくするために地形をグレイスケールの傾斜角で表現した.また,メッシュ解像度以上に拡大して観察するために,画像サイズは200%のサイズの画像を作成した.画像はワールドファイルとともに保存し,GIS等でも閲覧できるようにした.
ALOS 30 DEM画像を用いて詳細かつ効率的に広域の活断層判読を行うために,Map Tiler Pro (Klokan Technologies)を使ってアナグリフ画像をkmlファイルに変換してGoogle Earthに重ねて地形を観察する手法(後藤,2015)によって活断層判読を行うことにした.この手法では,ALOS 30アナグリフ画像で判読した活断層を,透過度調整機能を使ってGoogle Earthの拡大した画像上で参照し,それらの位置や形状を詳細に把握することが可能となる.さらに,Google Earthの描画機能を用いて活断層線を詳細な画像に直接記入し,それらの属性情報を「説明」として記録した(中田ほか,2019).
モンゴルは西部を中心に長大な活断層が数多く存在し,20世紀に入っても巨大地震の発生しているBaljinnyam et al (1993).1905年のTsetserleg地震(Ms 8.2) では,左横ずれ2.5m 上下変位2mに達する長さ130kmの地震断層が出現した. また1905年のBulnay地震(Ms 8.3) では,内陸地震としては最大とされる長さ375kmの地震断層が出現し,左横ずれ5-10mの大きな断層変位が詳しく調査・記録された(Rizza et al., 2015など).1957年Gobi-Altai地震(Ms 8.3)ではGurvan Bogd断層系の一部が活動し,左横ずれ7mを伴う長さ250kmの地震断層が現れた.さらに,1967年には中部においてMogod地震(Mw 7.0) が発生し,南北性の長さ45kmの右横ずれ断層が出現した.これらの地震断層については現地調査が行われており,これに関連する活断層の詳細な分布が明らかにされている.これら以外の西部のごく一部の活断層については,SPOT 5画像を用いたNissen(2008)などの詳しい報告がある.また,首都のウランバートル周辺の活断層についてSchlupp et al. (2010)などの一連の報告がある.しかしながら,長大な活断層の存在が推定されているGobi-Altai 山脈やHangay山地周辺の活断層をはじめモンゴル全域の活断層分布の詳細は十分に解明されているとは言えない.
上述の報告者らの手法は,Bulnay断層などの顕著な地震断層において断層変位地形を詳細に認定することができることを確認した.また,これまで西部においてSRTMやGoogle Earthなどの2D画像を用いて明瞭な地形境界や地質断層に沿って認定されていた長大な活断層の存否を再確認するとともに,扇状地などを変位させた断層変位地形をもとに新たに活断層を認定した.また,それ以外の中部や東部においても新たに活断層を認定し,その詳細な位置・形状をもとに活断層図を試作した.今後,これらの活断層については,空中写真やCORONA衛星画像の判読や現地調査を行い,モンゴル全域の活断層図の完成を目指したい.