日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS15] 活断層と古地震

2019年5月28日(火) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、大上 隆史(産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、道家 涼介(神奈川県温泉地学研究所)、近藤 久雄(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)

[SSS15-P25] 2018年9月に発生したインドネシア・スラウェシ島地震のLC-InSAR解析

*杉本 惇1小俣 雅志1秋山 佳輝1寳楽 裕1 (1.株式会社 パスコ)

キーワード:干渉SAR解析、LC-InSAR図、2018年スラウェシ島地震、Palu-Koro断層

ALOS-2を用いた干渉解析によって、広域の地殻変動を捉えるのみならず、局所的な地表変状を捉えられることが明らかとなってきた(Fujiwara,2016、小俣ほか,2017)。本発表では、LC-InSARによる解析(三五ほか,2016、小俣ほか,2016)を用いて、2018年9月28日にインドネシアのSulawesi島で発生した地震による地殻変動を検討した。地震の規模はMw7.5、震源の深さは20km(USGS,2018)である。Sulawesi島のPalu市街地の西側、山地と低地の境界にはPalu-Koro断層が分布することが知られていた。Palu-Koro断層はGPSによる5年間の観測で3.4cm/yrの左横ずれを示す(Walpersdorf and Vigny, 1998)ほど活発な活断層であり、今回の地震はこのPalu-Koro断層に沿って発生した。この地震による地殻変動は、地震直後に国土地理院(2018)によって広域観測モード(分解能60m)による干渉SAR解析が実施され、Palu-Koro断層と一致するように南北に走行を持つ断層が確認された。Paluより南側で5m程度の変位が生じていること、左横ずれしているのと調和的な変動がみられることが報告されている。
本発表で行った干渉SAR解析では、高分解能モード(分解能10m)で観測された2018年3月1日と、2018年10月25日の南行軌道のデータを使用し、Palu周辺のより詳細な変動の抽出を試みた。
LC-InSAR図によれば、Palu-Koro断層に沿って、低コヒーレンスが連続するとともに位相の不連続が生じている‘位相不連続ライン’が確認できる。このような‘位相不連続ライン’は地表変状が生じている箇所であることがこれまでのLC-InSAR解析で示されている(小俣ほか,2017)ことから、Palu-Koro断層沿いの‘位相不連続ライン’も地表地震断層を含む地表変状が生じていると推定される。‘位相不連続ライン’はPalu-Koro断層沿いで大きな位相差を生じている箇所のほかに、平行する南北方向の微小な位相の不連続も確認できる。また、主断層から離れた東側の平野部には北西-南東方向の‘位相不連続ライン’が確認される。これらは派生断層もしくは副断層による地表変状を生じていることを示している可能性がある。
今回の地震では、平野部で液状化から大規模な側方流動が生じたとされている(森,2018)。このような側方流動が生じた地域はコヒーレンス値が低くなることから、LC-InSAR図では赤色で表現される。LC-InSAR図と光学衛星写真とを比較してみると、光学衛星で認められる側方流動を生じた範囲より広い範囲においてコヒーレンス値が低く、赤色で表現されていることが判る。コヒーレンス値が低くなるのは地表面の変動だけではないため注意が必要であるが、明らかな側方流動を生じている範囲よりも広い範囲で地表面に何らかの変化を生じていることを示唆している可能性がある。これは、液状化が発生している範囲は、側方流動を生じている範囲よりも広範囲に及ぶ可能性を示唆するものである。
以上、インドネシアのSulawesi島で発生した地震による変動をALOS-2によるLC-InSAR図で検討してみたところ、地表地震断層を含む地表変状、および液状化が生じている可能性がある範囲を抽出することが出来た。ALOS-2のデータを利用することで、国内の災害と同様に海外の災害でも広域に被害が発生した災害の発生箇所およびその範囲を特定できることが再確認された。

国土地理院(2018)2018年インドネシア・スラウェシ島の地震に伴う地殻変動,http://www.gsi.go.jp/cais/topic181005-index.html
小俣 雅志・郡谷 順英・三五 大輔(2016)干渉SARを使用した新たな地表地震断層検出方法,日本活断層学会2016年秋季学術大会講演予稿集
小俣 雅志・三五 大輔・郡谷 順英・谷口 薫(2107)平成28年(2016年)熊本地震において新たな干渉SAR解析によって見出された地表変状,JpGU-AGU Joint Meeting 2017, SSS12-11
三五大輔 ・小俣雅志・郡谷順英(2016)干渉SAR解析と地形表現図とを組み合わせた新たな地表断層抽出手法の研究,日本リモートセンシング学会(平成26年度秋季)学術講演論文集
森 伸一郎(2018)Googleクライシスマップによって提供された衛星画像の解析に基づいた2018年9月28日のスラウェシ地震におけるPalu(パル)市内外の地すべり領域と領域内の被災建物・住家の特定,http://committees.jsce.or.jp/eec205/system/files/Landslides%20Palu%20City-mori.pdf
USGS(2018) Earthquake Hazards Program M 7.5 - 70km N of Palu, Indonesia, https://earthquake.usgs.gov/earthquakes/eventpage/us1000h3p4/executive#executive
A. Walpersdorf and C . Vigny(1998)Monitoring of the Palu-Koro Fault (Sulawesi ) by GPS, GEOPHYSICAL RESEARCH LETTERS, VOL. 25, NO.13, 2313-2316