日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS15] 活断層と古地震

2019年5月28日(火) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、大上 隆史(産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、道家 涼介(神奈川県温泉地学研究所)、近藤 久雄(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)

[SSS15-P28] ベイズ最適化と有限要素法に基づく断層面形状探索 ― スリップパーティショニングの最大化を例として ―

*竿本 英貴1 (1.産業技術総合研究所)

キーワード:活断層、有限要素法、ベイズ最適化、スリップパーティショニング

断層変位解析を含む三次元有限要素解析は,一定レベル以上の計算時間を必要とするため,多くの解析ケースについての検討は一般に困難である.一方で,観測結果を模擬するためには少なくともいくつかの解析ケースについて検討する必要がある.観測結果とシミュレーション結果の残差に対してモデルパラメータの感度が容易に求まらない場合,グリッドサーチによってパラメータの良し悪しを検討するのが通例であるが,パラメータ数が多くなると検討すべき解析ケース数が指数関数的に増加するため,グリッドサーチは効率的ではない.一方,遺伝的アルゴリズムなど進化計算に基づくパラメータ最適化は感度情報が不必要かつ強い非線形問題についても適用できるという利点があり,広く用いられている.しかしながら,進化計算に基づくパラメータ最適化は1ケースあたりの計算時間が短い場合への適用に限られ,今回対象とする(計算時間が長い)三次元有限要素解析には適用しづらい.

 近年,なるべく少ない試行回数で最適パラメータを求めようとする手法として,ベイズ最適化手法が注目されている.ベイズ最適化はある時点までに実施してきた試行結果を元にして,次の探索候補を逐次的に決定するアルゴリズムであり,グリッドサーチに比べて効率的である上,進化計算に基づくアルゴリズムのように多くの解析ケース(ただし,グリッドサーチよりは少ない)を必要としない.ここではベイズ最適化手法の一つであるTree-Structured Parzen Estimatorに基づく最適化ライブラリOptuna(1)を有限要素解析(COMSOL Multiphysics)と組み合わせることで,スリップパーティショニングを積極的に起こす断層面形状を探索した.ベイズ最適化から得られた断層面形状に関するパラメータセットは,事前に実施したグリッドサーチから得られたパラメータセットと整合的であり,グリッドサーチの結果よりもスリップパーティショニングの程度が大きくなった.今回の検討から,ベイズ最適化手法によって効率的に断層面形状に関するパラメータが探索できることが示された.

参考文献:

(1) Preferred Networks, Inc.: https://optuna.org/