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[SSS16-02] 西南日本前弧ウエッジの変形と1707年宝永地震の関係
キーワード:南海トラフ、地殻変動、フィリピン海プレート、1707年宝永地震
西南日本外帯の南北方向の隆起帯や沈降帯の成因と、南海トラフ沿いの多様な海溝型地震が発生する原因を、波曲したフィリピン海プレートの斜め沈み込みによって統一的に説明できるモデルを提案する。西南日本の太平洋沿岸では、プレートの沈み込みによる応力蓄積と、100-150年間隔で発生する地震時の応力解放に伴う地殻変動が観測されてきたが,それら変動の変動は打ち消し合い累積性がない。一方、島弧と大きく斜交する赤石山地,紀伊山地など南北方向の隆起帯及びその間の沈降帯が第四紀の間に成長してきた。それらの分布とフィリピン海プレートの形状を比較すると、以下のような関係が認められる。紀伊半島及び赤石山地の隆起域は大きく湾曲するフィリピン海プレート上面の走向がNE-SWになる領域に、紀伊水道や濃尾平野などの沈降域はプレート上面がNW-SEから東西走行になる領域にほぼ一致する。このプレートの波曲形状の軸がフィリピン海プレートに固定されて斜めに沈み込むことによって、プレートの走向がNE-SWの場所ではプレート境界が浅くなり、プレートの走向がNW-SEから東西の場所ではプレート境界は深くなる。プレート境界が浅くなる領域は隆起域に、深くなる領域は沈降域にほぼ一致することから、プレート境界の深度変化が隆起帯および沈降帯の形成原因であると考えられる。隆起生物遺骸群集は1707年宝永地震に生じた紀伊半島の隆起は累積し、1854年と1944及び1946年の海溝型地震の隆起は累積していないことを示す。このことから,紀伊半島下に数百年に1回しか破壊しない固着域が存在し、その破壊によって紀伊半島に累積的な隆起が生じ,同時に南海トラフ全体が一度に破壊すると考えられる。隆起域である赤石山地下のプレート境界にも独立の固着域が存在する可能性がある。大きく波曲するプレートの斜め沈み込みが、プレート境界の深部に数百年間隔で破壊する固着域と、南北方向の隆起帯を形成していると考えられる。