[SSS16-P21] 地表変形のフーリエ級数表現:異なるスケールの地殻変動
キーワード:GNSS、地震間地殻変動、フーリエ展開、歪み速度
プレート沈み込み帯に位置する日本列島では、プレート境界のすべり/すべり遅れに起因する地殻変動と内陸の地殻内非弾性変形(脆性破壊や塑性流動)による地殻変動が重なった状態で観測される。日本列島で観測される地殻変動の要因を正しく理解するためには、これらの原因の異なる変動を適切に分離することが重要である。
陸上のInSARやGNSSの観測データには、プレート境界からある程度離れた場所での地殻変動が記録されるため、プレート間すべり/すべり遅れによる地殻変動は基本的に長波長の変動(~100kmスケール)として観測される。それに対し、地殻内非弾性変形は観測網内で生じるため短波長の変動(~10kmスケール)として観測される。既に、これら2種類の地殻変動の波長が異なることを利用した研究が行われている。Takada and Fukushima (2013 Nature Geo.) は、2011年東北沖地震時のInSARデータにローパスフィルタをかけた結果をプレート境界の地震時すべりによる地殻変動として除去し、地殻内のローカルな変動を抽出することに成功した。一方、データ間隔が等間隔でなく疎らなGNSS観測データに対しては、Meneses-Gutierrez and Sagiya (2016 EPSL) とMeneses-Gutierrez et al. (2018 JGR) がShen et al. (1996) の手法でGNSSデータから推定した歪みに対して移動平均フィルタをかけ、その結果をプレート境界のすべり/すべり遅れに起因する変動として除去している。
スケールの異なる地殻変動を分離するには、GNSS観測データをフーリエ振幅に基づきフィルタ処理することが有用である。変動源の空間的広がりや距離によって地表変形のスケールも変化するが、フーリエ振幅に基づくフィルタならばスケールの異なる変形を柔軟かつ系統的に取り出すことが可能である。そこで本研究では、不等間隔で分布するGNSS変位データをフーリエ変換し、任意の波数帯域の地殻変動を抽出した。具体的には、オリジナルの変位データを、様々な波数の三角関数を重ね合わせた2次元フーリエ級数で表現し、そのフーリエ係数をインバージョンで推定した。この際、波数の小さな項から順に逐次解析を行った。推定された係数が2次元波数領域における変位データのフーリエ変換である。そして、基底関数(三角関数)の導関数を使えば、フーリエ係数から水平歪み分布を直接計算することができる。実際のGNSS観測点の配置を用いて、既知の変位場をデータとした試解析を行い、等間隔データを離散フーリエ変換した場合と同様の波数領域の分布が得られることを確認した。
本手法の適用例として、九州地域の地震間のGNSS変位速度データ(2005~2011年)をフーリエ変換し、その結果から長波長(波長200km以上)と短波長(波長数10~200km)の水平歪み速度分布を推定した。長波長の歪み速度分布は、南海トラフ沿いのすべり遅れ速度分布 (Noda et al. 2018 JGR) から理論計算した歪み速度分布と同様のパターンを示した。また、短波長の歪み速度分布は別府―島原地溝帯や桜島の周辺にローカルな歪み集中を示した。
陸上のInSARやGNSSの観測データには、プレート境界からある程度離れた場所での地殻変動が記録されるため、プレート間すべり/すべり遅れによる地殻変動は基本的に長波長の変動(~100kmスケール)として観測される。それに対し、地殻内非弾性変形は観測網内で生じるため短波長の変動(~10kmスケール)として観測される。既に、これら2種類の地殻変動の波長が異なることを利用した研究が行われている。Takada and Fukushima (2013 Nature Geo.) は、2011年東北沖地震時のInSARデータにローパスフィルタをかけた結果をプレート境界の地震時すべりによる地殻変動として除去し、地殻内のローカルな変動を抽出することに成功した。一方、データ間隔が等間隔でなく疎らなGNSS観測データに対しては、Meneses-Gutierrez and Sagiya (2016 EPSL) とMeneses-Gutierrez et al. (2018 JGR) がShen et al. (1996) の手法でGNSSデータから推定した歪みに対して移動平均フィルタをかけ、その結果をプレート境界のすべり/すべり遅れに起因する変動として除去している。
スケールの異なる地殻変動を分離するには、GNSS観測データをフーリエ振幅に基づきフィルタ処理することが有用である。変動源の空間的広がりや距離によって地表変形のスケールも変化するが、フーリエ振幅に基づくフィルタならばスケールの異なる変形を柔軟かつ系統的に取り出すことが可能である。そこで本研究では、不等間隔で分布するGNSS変位データをフーリエ変換し、任意の波数帯域の地殻変動を抽出した。具体的には、オリジナルの変位データを、様々な波数の三角関数を重ね合わせた2次元フーリエ級数で表現し、そのフーリエ係数をインバージョンで推定した。この際、波数の小さな項から順に逐次解析を行った。推定された係数が2次元波数領域における変位データのフーリエ変換である。そして、基底関数(三角関数)の導関数を使えば、フーリエ係数から水平歪み分布を直接計算することができる。実際のGNSS観測点の配置を用いて、既知の変位場をデータとした試解析を行い、等間隔データを離散フーリエ変換した場合と同様の波数領域の分布が得られることを確認した。
本手法の適用例として、九州地域の地震間のGNSS変位速度データ(2005~2011年)をフーリエ変換し、その結果から長波長(波長200km以上)と短波長(波長数10~200km)の水平歪み速度分布を推定した。長波長の歪み速度分布は、南海トラフ沿いのすべり遅れ速度分布 (Noda et al. 2018 JGR) から理論計算した歪み速度分布と同様のパターンを示した。また、短波長の歪み速度分布は別府―島原地溝帯や桜島の周辺にローカルな歪み集中を示した。