14:00 〜 14:15
[SSS17-02] 霧島山における2011年と2018年噴火に対応した深部低周波地震活動
キーワード:深部低周波地震、霧島火山
深部低周波地震は同規模の通常の地震と比べて低い周波数に卓越する地震である.気象庁のカタログによると日本列島の内陸に発生する深部低周波地震の多くは卓越周波数が1-10 Hzで深さ30 km付近に分布するが,霧島山では深さ10-15 km付近と深さ20-25 km付近に分かれて分布している.深部低周波地震と火山噴火の関係としては,1991年のピナツボ山の噴火の前に深部低周波地震が発生したこと(White, 1996)や,カムチャッカのKlyuchevskoy火山では,噴火を伴う火口付近での長周期(低周波)地震と深部低周波地震の対応が良いことがわかっている(Shapiro et al., 2017).しかしながら,日本の火山ではこれまで,火山活動と深部低周波地震の活動の関係は明らかではなかった(高橋・宮村, 2009).霧島山においても,気象庁のカタログによると観測開始以降ほぼ一定レートで深部低周波地震が観測されており,2011年や2018年の噴火と対応した深部低周波地震活動の変化は確認されていない.本研究では,噴火などの火山活動の推移と深部低周波地震活動の推移を比較するため,波形の相関を用いてイベント間の相対震源位置を決定するネットワーク相関係数法(Ohta and Ide, 2011)を用いて,2004年4月から2015年12月に発生した気象庁カタログ中の深部低周波地震の震源再決定を行うことでより正確な空間分布を求め,マッチドフィルタ法(Gibbons and Ringdal, 2006; Shelly et al., 2007)を用いて2004年4月から2018年3月までの期間で深部低周波地震の網羅的な検出を行い,その活動の時系列変化を調べた.
まず,震源再決定の結果,深さ13 km付近と22 km付近の狭い範囲に集中した震源分布を得た.特に深さ22 km付近に多くの深部低周波地震の震源が集中していた.次にマッチドフィルタ法での検出結果から,2011年の新燃岳の準プリニー式噴火の前後に当たる2010年から2011年にかけて深部低周波地震の検出数が多いことがわかった.この深部低周波地震の増加の期間は新燃岳の北東にあるえびの高原付近の地下約8kmにあるマグマ溜りの膨張(Nakao et al., 2013)による地殻変動が発生している期間と対応していた.震源再決定の結果とマッチドフィルタ法の結果を組み合わせると,2011年の噴火前後の2年間に増加した深部低周波地震は深さ23-25 kmに分布している.一方で,2004年から2018年にかけて定常的に発生した深部低周波地震は深さ13 km付近と22 km付近に分布していることから,2011年の噴火前後の2年間に発生した深部低周波地震の震源はやや深いことがわかった.さらに2011年の噴火前後の2年間に発生した深部低周波地震の波形を観察すると,定常的に発生する深部低周波地震と比べて,より低周波に卓越し,P波が不明瞭であるという特徴があった.この2年間においても活動の活発な深部低周波地震の位置は狭い範囲内で変化しており,噴火の推移とともに活発な深部低周波地震の震源がより深くなる傾向が見られた.また,2010年3月から7月の水蒸気噴火や2011年6月から9月のマグマ水蒸気噴火の時期のみに集中して発生する深部低周波地震が存在することも明らかとなった.2017年から2018年にかけての新燃岳・硫黄山の噴火と対応する深部低周波地震の増加も見られたが,その深部低周波地震には2011年の噴火前後に発生した深部低周波地震のような特徴は見られず,震源位置や波形の特徴は定常的に発生している深さ20-23 km付近の深部低周波地震と同様であった.
これら噴火との時間的対応は,深部低周波地震が深部での流体の移動など火山活動と対応していることを示す.一方で,2回の噴火で発生する低周波地震の位置や特徴が異なることは,噴火による流体の流路の違いなどを示す可能性がある.また,深さ13 km付近の深部低周波地震ではいずれの噴火の際にもその活動度の変化は確認できず,この深部低周波地震はこの時に噴火をしていない御鉢火山と関連している可能性がある.
まず,震源再決定の結果,深さ13 km付近と22 km付近の狭い範囲に集中した震源分布を得た.特に深さ22 km付近に多くの深部低周波地震の震源が集中していた.次にマッチドフィルタ法での検出結果から,2011年の新燃岳の準プリニー式噴火の前後に当たる2010年から2011年にかけて深部低周波地震の検出数が多いことがわかった.この深部低周波地震の増加の期間は新燃岳の北東にあるえびの高原付近の地下約8kmにあるマグマ溜りの膨張(Nakao et al., 2013)による地殻変動が発生している期間と対応していた.震源再決定の結果とマッチドフィルタ法の結果を組み合わせると,2011年の噴火前後の2年間に増加した深部低周波地震は深さ23-25 kmに分布している.一方で,2004年から2018年にかけて定常的に発生した深部低周波地震は深さ13 km付近と22 km付近に分布していることから,2011年の噴火前後の2年間に発生した深部低周波地震の震源はやや深いことがわかった.さらに2011年の噴火前後の2年間に発生した深部低周波地震の波形を観察すると,定常的に発生する深部低周波地震と比べて,より低周波に卓越し,P波が不明瞭であるという特徴があった.この2年間においても活動の活発な深部低周波地震の位置は狭い範囲内で変化しており,噴火の推移とともに活発な深部低周波地震の震源がより深くなる傾向が見られた.また,2010年3月から7月の水蒸気噴火や2011年6月から9月のマグマ水蒸気噴火の時期のみに集中して発生する深部低周波地震が存在することも明らかとなった.2017年から2018年にかけての新燃岳・硫黄山の噴火と対応する深部低周波地震の増加も見られたが,その深部低周波地震には2011年の噴火前後に発生した深部低周波地震のような特徴は見られず,震源位置や波形の特徴は定常的に発生している深さ20-23 km付近の深部低周波地震と同様であった.
これら噴火との時間的対応は,深部低周波地震が深部での流体の移動など火山活動と対応していることを示す.一方で,2回の噴火で発生する低周波地震の位置や特徴が異なることは,噴火による流体の流路の違いなどを示す可能性がある.また,深さ13 km付近の深部低周波地震ではいずれの噴火の際にもその活動度の変化は確認できず,この深部低周波地震はこの時に噴火をしていない御鉢火山と関連している可能性がある.