11:15 〜 11:30
[STT45-03] 2016年熊本地震の副次的断層すべりによるInSAR地表変位とすべり分布
キーワード:合成開口レーダ干渉法、熊本地震、副次断層
2016年熊本地震に関しては、これまで合成開口レーダ干渉法(InSAR)を用いた研究や現地調査から、地震を引き起こした主断層のほかに、副次的に発生した断層変位が多数見つかっている(例えば、Fujiwara et al., 2016, EPS)。本研究では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が運用する陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)のPALSAR-2レーダにより撮像されたSARデータを用い、熊本地震に伴い副次的に発生した阿蘇カルデラ内(熊本県阿蘇市宮地周辺)の断層運動による地表変位をしらべ、さらに断層すべり分布を推定した。
本研究では、異なる視線方向をもつ3つの画像ペアを用い、それぞれ干渉解析処理を行った。解析ソフトウェアにはRINC(Ozawa et al., 2016, EPS)を用いた。通常の干渉処理のあと、干渉画像内の相対変位分布であるInSAR解析結果を国土地理院GEONETの日々の座標値(F3解)を基準とし絶対変位分布に変換した。さらに、3つの視線方向の変位を東西・南北・上下の3成分に変換し、ふたつの水平成分から宮地周辺の地表地震断層の走向(N50E)に平行な水平変動量を求めた。解析の結果認められる地表変位の特徴は以下の通りである。(1)平行な変位不連続トレース(地表地震断層に対応)群が2条認められ、それらの間隔は0.8km程度である。(2)北側および南側の変位不連続トレース群の長さはそれぞれ約1.3km、2.3kmである。(3)細かく見ると、2条のトレースともに雁行した小規模なトレースから構成されている。(4)北側のトレース群の断層変位量は、上下(北落ち)・右横ずれともに、最大5cm程度であった。(5)南側のトレース群の断層変位量は、上下(北落ち)最大8cm程度、右横ずれ最大10cm程度であった。
次に、熊本地震の主要断層による長波長の変動を多項式近似で除去した後、断層の形状とすべり分布を同時に推定する手法(Fukushima et al., 2013, 2018)を用い、断層すべり分布を求めた。断層の形状については、上端をInSAR解析結果から同定される地表地震断層のトレースに固定し(簡単のため、微細な雁行構造は無視)、傾斜角を推定パラメタとした。地表変位の特徴から、横ずれ成分については右横ずれを仮定し、縦ずれ成分については北側が相対的に沈降する向きのすべりを仮定し、非負の拘束条件を課したインバージョンを行った。すべり角については、一様と仮定して推定するインバージョンと、すべり角を固定せずに横ずれと縦ずれ成分を独立に推定するインバージョンを行ったが、より簡単である前者のインバージョンでデータを十分に説明できるモデルが得られたため、一様なすべり角を仮定したインバージョン結果を最終推定モデルとした。
最終推定モデルとして、南側の断層(傾斜角48°)と北側の断層(傾斜角67°)が地下で収斂するような形状が求まった。南側の断層のすべり域下端はちょうど二枚の断層が収斂する深さである1.3kmあたりとなり、また、南側の断層は深さ0.7kmあたりで最大すべり量25cmが得られた。一方、北側の断層のすべりは0.4km程度以浅に限定され、最大すべり量は12cmと推定された。
謝辞
本研究では、PIXEL(PALSAR Interferometry Consortium to Study out Evolving Land surface)で共有しているPALSAR-2データを使用した。これは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と東京大学地震研究所との共同研究契約によりJAXAから提供されたものである。本研究の一部は、東京大学地震研究所特定共同研究(B)「SARを用いた多角的な地殻・地表変動研究」で行われた。RINCソフトウェアは、小澤拓博士より提供いただいた。また、本研究では国土地理院GEONETの日々の座標値(F3解)を使用した。関係各位に感謝の意を申し上げる。
本研究では、異なる視線方向をもつ3つの画像ペアを用い、それぞれ干渉解析処理を行った。解析ソフトウェアにはRINC(Ozawa et al., 2016, EPS)を用いた。通常の干渉処理のあと、干渉画像内の相対変位分布であるInSAR解析結果を国土地理院GEONETの日々の座標値(F3解)を基準とし絶対変位分布に変換した。さらに、3つの視線方向の変位を東西・南北・上下の3成分に変換し、ふたつの水平成分から宮地周辺の地表地震断層の走向(N50E)に平行な水平変動量を求めた。解析の結果認められる地表変位の特徴は以下の通りである。(1)平行な変位不連続トレース(地表地震断層に対応)群が2条認められ、それらの間隔は0.8km程度である。(2)北側および南側の変位不連続トレース群の長さはそれぞれ約1.3km、2.3kmである。(3)細かく見ると、2条のトレースともに雁行した小規模なトレースから構成されている。(4)北側のトレース群の断層変位量は、上下(北落ち)・右横ずれともに、最大5cm程度であった。(5)南側のトレース群の断層変位量は、上下(北落ち)最大8cm程度、右横ずれ最大10cm程度であった。
次に、熊本地震の主要断層による長波長の変動を多項式近似で除去した後、断層の形状とすべり分布を同時に推定する手法(Fukushima et al., 2013, 2018)を用い、断層すべり分布を求めた。断層の形状については、上端をInSAR解析結果から同定される地表地震断層のトレースに固定し(簡単のため、微細な雁行構造は無視)、傾斜角を推定パラメタとした。地表変位の特徴から、横ずれ成分については右横ずれを仮定し、縦ずれ成分については北側が相対的に沈降する向きのすべりを仮定し、非負の拘束条件を課したインバージョンを行った。すべり角については、一様と仮定して推定するインバージョンと、すべり角を固定せずに横ずれと縦ずれ成分を独立に推定するインバージョンを行ったが、より簡単である前者のインバージョンでデータを十分に説明できるモデルが得られたため、一様なすべり角を仮定したインバージョン結果を最終推定モデルとした。
最終推定モデルとして、南側の断層(傾斜角48°)と北側の断層(傾斜角67°)が地下で収斂するような形状が求まった。南側の断層のすべり域下端はちょうど二枚の断層が収斂する深さである1.3kmあたりとなり、また、南側の断層は深さ0.7kmあたりで最大すべり量25cmが得られた。一方、北側の断層のすべりは0.4km程度以浅に限定され、最大すべり量は12cmと推定された。
謝辞
本研究では、PIXEL(PALSAR Interferometry Consortium to Study out Evolving Land surface)で共有しているPALSAR-2データを使用した。これは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と東京大学地震研究所との共同研究契約によりJAXAから提供されたものである。本研究の一部は、東京大学地震研究所特定共同研究(B)「SARを用いた多角的な地殻・地表変動研究」で行われた。RINCソフトウェアは、小澤拓博士より提供いただいた。また、本研究では国土地理院GEONETの日々の座標値(F3解)を使用した。関係各位に感謝の意を申し上げる。