日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC35] 火山防災の基礎と応用

2019年5月27日(月) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、吉本 充宏(山梨県富士山科学研究所)、石峯 康浩(鹿児島大学地震火山地域防災センター)、久保 智弘(防災科学技術研究所)

[SVC35-P03] Tephra2と気象庁55年長期再解析データ(JRA-55)を用いた降灰シミュレーション

*佐々木 寿1三浦 俊介1成毛 志乃1 (1.アジア航測株式会社)

キーワード:降灰シミュレーション、気象庁55年長期再解析データ、ハザードマップ、確率マップ

降灰(降下火砕物)の火山ハザードマップを作成する場合,過去の実績に基づく方法と数値シミュレーションを用いた方法が用いられる.近年はTephra2(Bonadonna et al., 2005)など無償で公開されているプログラムを用いた数値シミュレーションにより作成されるケースが増加している.Tephra2を用いた数値シミュレーションには,噴煙柱,風向・風速,地形の情報が必要である.噴煙柱に関する設定が最も難しく,この設定のためパラメータスタディを行い,パラメータを決定することが多い.降灰の分布方向や分布範囲に影響を与えるのは風向・風速である.シミュレーションで用いる風データについて,火山防災マップ作成指針(内閣府ほか,2013)では,「風向・風速は,気象庁ホームページの気象庁統計情報にある過去の気象データ検索(高層)で紹介されている月平均値を使うと良い」とされている.ところが,高層気象観測点は日本国内には16点しかなく,海岸沿いに設置されていることが多い.そのため,対象火山から最寄りの観測点まで100 km以上も離れてしまうケースが多い.そこで本研究では降灰のハザードマップ作成に,気象庁55年長期再解析データ(以下,JRA-55と略す)の利用を検討した.JRA-55はラジオゾンデによる定時観測ネットワークが確立された1958年以降の再解析データである.高層気象データと比較した場合のJRA-55を使用するメリットとしては,1.25度間隔の格子データであるため内陸部も網羅できること,欠測が無いこと,1日4つのデータ(0時,6時,12時,18時)があることがある.JRA-55の使用する場面としては,過去の噴火の降灰の再現である.1958年以降のデータがあるため,例えば有珠山1977年噴火や御嶽山2014年噴火などの再現計算を行うことができる.藤原(2018)は新潟焼山1974年噴火の再現計算結果を報告している.火山ハザードマップへの利用としては,過去50年以上の月間の平均データがあるため,月別の降灰が分布しやすい範囲を把握することが可能である.また,長期間のデータを用いた大量計算(例えば,1日4ケース×50年間=約73,000ケース)を実施することで,長期間の風データを考慮した降灰確率マップの作成も可能となる.発表では北海道駒ヶ岳1929年噴火等の具体的事例について紹介する.