日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC35] 火山防災の基礎と応用

2019年5月27日(月) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、吉本 充宏(山梨県富士山科学研究所)、石峯 康浩(鹿児島大学地震火山地域防災センター)、久保 智弘(防災科学技術研究所)

[SVC35-P05] 火山地域における土石流氾濫の推定手法の開発

*山崎 祐介1藤村 直樹1手塚 咲子1水野 正樹1石井 靖雄1菊井 稔宏2吉田 真也2五十嵐 勇気2山越 隆雄2 (1.国立研究開発法人土木研究所、2.砂防・地すべり技術センター)

キーワード:火山地域、土石流氾濫

火山噴火後には、少量の降雨でも土石流が発生しやすくなることが指摘されている。火山山麓の住民の洪水・土砂災害の防災・減災のためには、どこが危険なのか、どこが安全なのかを示すハザードマップや、災害発生時の避難・予警報システムが必要である。このような防災・減災ための基本情報として、噴火後に起こりうる土石流の氾濫を予測しておくことは重要である。
本研究では、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の一部において、火山噴火後における降灰の予測、降雨の予測を入力とし、土石流氾濫の予測を行うことを目指している。そのために、火山山麓における降雨流出および土石流の発生・流下過程の解明を行い、それをモデル化し、予測に役立てることを目的としている。

火山噴火後の降雨に伴う土石流の流出について、筆者らは、降灰により流域斜面の表土層の浸透性が低下することにより表面流が発生し、河床堆積物が表面流の供給により水で飽和して安定性が低下することで、土石流として流下していくものとして想定している。これらを解析するために、桜島有村川流域内の2m2程度の斜面において、降雨、土壌水分、表面流および地表面状態の観測を行っている。また、有村川3号堰堤において、土石流の表面位置、表面流速および荷重を連続的に計測している。本発表では、これらの観測結果を解析し、表面流の発生機構および土石流の流下機構について報告する。

降雨と土壌水分および表面流の発生条件を整理すると、表面流の発生は、先行雨量や雨量強度といった土壌の水分状態や土壌の孔隙構造などに起因する水分特性などに依存していることが確認され、その定量評価を行っている。また、土壌が全層飽和するよりも先に表面流が発生していることも確認できた。また、表面流の発生件数は、従来よりも2018年に増加している。桜島においては、2018年より新たな噴火口が出現し、火山灰の粒度分布が従来よりも細粒化している。このことから、細粒化した火山灰が地表面に供給されたことにより、浸透過程が変化したと考えられるが、そのメカニズムは現在検討中である。

有村川3号堰堤における、水深、表面流速および荷重データを用いて土石流の運動量保存則を検証した結果、概ね妥当と判断されている。土石流の発生地点および堆積物の厚さについて、試行錯誤的に条件を決定し、運動量保存則と質量保存則を数値積分して、土石流の流下過程のシミュレーションを行った結果、観測された土石流の水深および流速の時間変化に近いものが得られた。今後は、土石流の発生地点および堆積物厚の空間分布といった情報を推定していくことが課題である。

この成果は、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期「衛星データ等即時共有システムと被災状況解析・予測技術の開発」の中の火山降灰等シミュレーション広域被災予測技術開発として、「衛星データおよびレーダ観測データ等により降灰厚・火砕流・溶岩流の分布を迅速に把握する技術」と「土石流発生リスク評価システム」の開発の一部となる。2022年度までのこの「火山降灰等シミュレーション広域被災予測技術開発」においては、関係機関と分担して、降灰斜面における土石流発生リスク評価の他、「衛星赤外・SAR画像による溶岩流および火砕流の分布把握と被害域推定システムの開発」、「衛星SAR解析および降灰シミュレーションによる広域降灰厚分布把握技術の開発」、「機動的レーダ観測による火口域降灰分布解析手法の開発」を実施する。