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[SVC36-03] 阿蘇中央火口丘群起源のテフラに含まれる鉱物のメルト包有物から推定したマグマ供給系の変遷
キーワード:阿蘇火山、メルト包有物、FT-IR
阿蘇カルデラの中央火口丘群起源の軽石及びスコリアに含まれる鉱物中のメルト包有物分析を行った.阿蘇火山は,4度の火砕流噴火・カルデラ形成後に中央火口丘群の活動が始まり,流紋岩質から玄武岩質の溶岩・テフラを噴出する火山活動が繰り返された.その中で,阿蘇中央火口丘第1~6 軽石 (Aso Central cone Pumice: ACP1~6; 高田,1989) は規模が大きく,阿蘇地域における鍵層になっている.本研究では,後カルデラ期のマグマ供給系の変遷と,大規模火砕流噴火のマグマ供給系との違いを見ることを目的として,ACP2, ACP3, ACP4 と,ACP3 と ACP4 の間に存在するかんらん石に富むテフラ (ACP3/4 スコリアと呼ぶ) に含まれる鉱物,メルト包有物,火山ガラスについて EPMA 分析,FT-IR 分析を行った (安田,2011; Yasuda, 2014).分析結果をACP1 (Brouillet et al., 2018), 完新世の杵島岳,往生岳,上米塚,中岳スコリア (川口,私信),さらに Aso-3, Aso-4 大規模火砕流 (Kaneko et al., 2007; Kaneko et al., 2015) の結果と比較した.ACP4 から ACP1 の火山活動で,鉱物の時間変化は見られず,斜長石は,An# = 60~70 に組成が集中し,Aso-3, Aso-4 の斜長石 (An#) とは明瞭に異なる組成を持つ.ACP2 と ACP4 のメルト包有物は,ホスト鉱物による組成の違いは見られず,マトリックスの火山ガラス (ACP4 については,鳥井ほか (2018) より引用) とほとんど同じ組成である.一方,ACP3/4 スコリアのメルト包有物組成はホスト鉱物ごとに大きく異なった.また,ACP3 の輝石に含まれるメルト包有物組成はマトリックスの火山ガラスの組成 (鳥井ほか,2018) と異なる.ACP2, ACP3/4 スコリア,ACP4 のメルト包有物の含水量の最大値は,FT-IR による測定で,それぞれ3.0, 1.3, 3.8 wt.% と求められた.鉱物・メルト包有物組成,メルト包有物の含水量より,ACP2, ACP4 のマグマだまりの温度・圧力は,ACP2 : 890~920 ℃,2 kbar,ACP4 : 900~920 ℃ (P = 2 kbar と仮定) と推定された.