10:15 〜 10:30
[SVC36-06] 南阿蘇村立野に分布する先阿蘇溶岩の層序と化学組成
キーワード:先カルデラ期、溶岩流、凝灰角礫岩
カルデラ形成を伴うような破局的噴火の先駆活動について理解を深める上で先カルデラ期火山噴出物の地質学的,岩石学的研究は重要である.阿蘇火山先カルデラ期には溶岩流が卓越する火山活動があり,それらの火山噴出物を総称して先阿蘇火山岩類と呼んでいる.本研究では阿蘇火山先カルデラ期の火山活動の変遷を詳細に明らかにするために若い年代の先阿蘇火山岩類が分布するカルデラ西方の地質調査を行い,それを基に採取した溶岩試料の岩石記載・全岩分析・鉱物分析を行った.
調査地域には少なくとも12枚の溶岩流が分布し,層厚は一般に5-20 mである.また溶岩の頂部では板状節理が発達することが多く,風化色を呈する.溶岩底部は明瞭にはクリンカーは識別できないことが多い.溶岩流の間には凝灰角礫岩や赤色土が挟在している.凝灰角礫岩は基質が赤色であり,角礫もしくは亜角礫の単一の礫種からなる.その他にも亜円礫から亜角礫の多様な礫種からなるものも認められる.前者は風化したクリンカーもしくは火砕流堆積物,そして後者は土石流堆積物と考えられる.その他にもたまねぎ状に強風化した溶岩がみられ,見かけ上凝灰角礫岩と類似している.これらをもとに各ルートの柱状図を作成しそれぞれでの層序関係を確認した.
作成した柱状図に基づいて試料採取を行い,各試料の岩石記載を行った.採取した27試料のうち,18試料がかんらん石両輝石安山岩(タイプA),7試料がかんらん石普通角閃石両輝石安山岩(タイプB),1試料がかんらん石単斜輝石安山岩(タイプC),1試料が両輝石安山岩(タイプD)の4タイプの岩種に分けられた.さらに,タイプA,タイプBを詳細に区分するために化学組成分析を行った結果,K2O含有量に基づいてタイプⅠ-Ⅲの3つに区分した.その結果,タイプAの18試料のうち3試料,タイプBの7試料のうち2試料について顕著な類似性が認められ,この2試料についてのK-Ar年代測定を行った結果,それぞれ0.45±0.04 (Ma),0.48±0.03 (Ma)の年代値が得られた.岩石記載,化学組成そしてK-Ar年代値の結果はタイプBの2試料が同一の溶岩流である可能性を示す.
阿蘇大橋崩落現場の大崩壊地に分布する先阿蘇溶岩のK-Ar年代値は標高729 mの地点で採取した試料が0.66±0.34(Ma),標高650 m地点の試料が0.78±0.19(Ma)であった.タイプAのうち顕著な類似性が認められた3試料は大崩壊地より採取した試料であり,標高はそれぞれ690 m,685 m,665 mで年代測定試料の標高の間に分布する.タイプBのうち顕著な類似性が認められた2試料は大崩壊地西方に約1 km離れた標高520 m地点に分布する.従って,大崩壊地に分布する先阿蘇溶岩はタイプB溶岩より標高が100 m以上高いにも関わらず,より古い年代の溶岩が分布していることが分かった.この違いは2つ溶岩流の給源が異なり,より若い溶岩の給源は古い溶岩の給源より標高の低い位置に存在した可能性を示唆する.現在の立野渓谷では黒川に沿って流れた3 kaの赤瀬溶岩がより古い(5.5 ka)立野溶岩の低い位置にへばり付く関係が見られるが,同じ関係が先カルデラ期に存在したこと,断層運動等によって渓谷が形成した可能性が考えられる.
調査地域には少なくとも12枚の溶岩流が分布し,層厚は一般に5-20 mである.また溶岩の頂部では板状節理が発達することが多く,風化色を呈する.溶岩底部は明瞭にはクリンカーは識別できないことが多い.溶岩流の間には凝灰角礫岩や赤色土が挟在している.凝灰角礫岩は基質が赤色であり,角礫もしくは亜角礫の単一の礫種からなる.その他にも亜円礫から亜角礫の多様な礫種からなるものも認められる.前者は風化したクリンカーもしくは火砕流堆積物,そして後者は土石流堆積物と考えられる.その他にもたまねぎ状に強風化した溶岩がみられ,見かけ上凝灰角礫岩と類似している.これらをもとに各ルートの柱状図を作成しそれぞれでの層序関係を確認した.
作成した柱状図に基づいて試料採取を行い,各試料の岩石記載を行った.採取した27試料のうち,18試料がかんらん石両輝石安山岩(タイプA),7試料がかんらん石普通角閃石両輝石安山岩(タイプB),1試料がかんらん石単斜輝石安山岩(タイプC),1試料が両輝石安山岩(タイプD)の4タイプの岩種に分けられた.さらに,タイプA,タイプBを詳細に区分するために化学組成分析を行った結果,K2O含有量に基づいてタイプⅠ-Ⅲの3つに区分した.その結果,タイプAの18試料のうち3試料,タイプBの7試料のうち2試料について顕著な類似性が認められ,この2試料についてのK-Ar年代測定を行った結果,それぞれ0.45±0.04 (Ma),0.48±0.03 (Ma)の年代値が得られた.岩石記載,化学組成そしてK-Ar年代値の結果はタイプBの2試料が同一の溶岩流である可能性を示す.
阿蘇大橋崩落現場の大崩壊地に分布する先阿蘇溶岩のK-Ar年代値は標高729 mの地点で採取した試料が0.66±0.34(Ma),標高650 m地点の試料が0.78±0.19(Ma)であった.タイプAのうち顕著な類似性が認められた3試料は大崩壊地より採取した試料であり,標高はそれぞれ690 m,685 m,665 mで年代測定試料の標高の間に分布する.タイプBのうち顕著な類似性が認められた2試料は大崩壊地西方に約1 km離れた標高520 m地点に分布する.従って,大崩壊地に分布する先阿蘇溶岩はタイプB溶岩より標高が100 m以上高いにも関わらず,より古い年代の溶岩が分布していることが分かった.この違いは2つ溶岩流の給源が異なり,より若い溶岩の給源は古い溶岩の給源より標高の低い位置に存在した可能性を示唆する.現在の立野渓谷では黒川に沿って流れた3 kaの赤瀬溶岩がより古い(5.5 ka)立野溶岩の低い位置にへばり付く関係が見られるが,同じ関係が先カルデラ期に存在したこと,断層運動等によって渓谷が形成した可能性が考えられる.