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[SVC36-09] 口永良部島で2018年12月から2019年1月に発生した火砕流の特徴
キーワード:口永良部島、火砕流、噴火
火口から数百~数㎞程度流下する小規模な火砕流は、様々な噴火様式で発生することから発生頻度が高い現象である.しかし,火砕流は突発的に発生し比較的短期間の間に現象が終了するので直接の詳しい観察例の報告は多くはない.口永良部島火山では2018年12月18日,2019年1月17日,1月29日に発生した噴火で小規模な火砕流が発生した.それぞれの火砕流について,分布や堆積状況や速度の復元などが行えるような映像が得られたので,その判読結果を報告する.
気象庁監視カメラの映像によると,2018年12月18日および2019年1月17日の噴火で発生した火砕流は,いずれも噴火直後に噴煙柱の一部が崩れて発生した.気象庁などにより噴火直後に航空機から撮影された写真を判読した結果,2018年12月18日の火砕流は,新岳火口(中心)から,北西側1.1㎞,南西側0.9㎞,東側0.9㎞の範囲に分布していた.火砕流は,火口周辺では面的に流れ下ったが,山麓に下るにしたがって,地形的に低所の谷沿いを流れ下り,ローブ状に噴出物を堆積させたことが写真から読みとれる.空中写真では樹木の燃えた跡や,火砕流によって立木が倒れた様子はなかった.2019年1月17日の火砕流は,北西側1.9㎞,南西側1.5㎞,東側1㎞の範囲であったが,東側では火砕流の末端部を観察できなかった.火砕物が厚く堆積した領域,火砕物が薄く堆積して,樹木を倒壊させている領域,火山灰が植生に付着して白色〜灰色に変色している領域の3種類が認識された.3番目の領域は火砕流の灰かぐらによるものである可能性が高いが,森林火災によると思われる白煙が観察された場所があることから,高温の物質が含まれることを示唆する.2019年1月29日に発生した火砕流は火口からあふれ出るように発生した.気象庁監視カメラの映像から火砕流は新岳火口から西側山麓斜面に最大約600m程度の流下したことが判別できたが,東側については観察記録がない.これらの火砕流は2014〜2015年に発生した火砕流の分布(Geshi et al., 2016)と比較すると,同程度か小規模であり,新岳火口の西側に多くの火砕物が流下する傾向は変わっていない.現地での噴火堆積物の検証が期待される.
気象庁の監視カメラ映像を基に、火砕流の流下速度を計測して,2015年の火砕流と比較した.火砕流の平均流下速度は5-47m/sの範囲で,約20-30m/sの値を示すものが多い.最も遠方まで流れた2015年5月29日の火砕流が最も速く,最も短距離であった2019年1月29日が最も遅い.2019年1月29日の火砕流は発生様式が異なるが,それ以外の火砕流は噴煙柱の一部が崩れて発生した点で共通しており,速度の高い火砕流ほど流下距離が長い傾向を示す.小規模な火砕流について複数の発生・流動機構が観察されたことは,過去の噴火堆積物から噴火形態を復元する際に重要な事例となる.
謝辞:気象庁福岡管区気象台地域火山監視・警報センターおよび鹿児島地方気象台には噴火の映像を提供していただいた.ここに記して感謝いたします.
気象庁監視カメラの映像によると,2018年12月18日および2019年1月17日の噴火で発生した火砕流は,いずれも噴火直後に噴煙柱の一部が崩れて発生した.気象庁などにより噴火直後に航空機から撮影された写真を判読した結果,2018年12月18日の火砕流は,新岳火口(中心)から,北西側1.1㎞,南西側0.9㎞,東側0.9㎞の範囲に分布していた.火砕流は,火口周辺では面的に流れ下ったが,山麓に下るにしたがって,地形的に低所の谷沿いを流れ下り,ローブ状に噴出物を堆積させたことが写真から読みとれる.空中写真では樹木の燃えた跡や,火砕流によって立木が倒れた様子はなかった.2019年1月17日の火砕流は,北西側1.9㎞,南西側1.5㎞,東側1㎞の範囲であったが,東側では火砕流の末端部を観察できなかった.火砕物が厚く堆積した領域,火砕物が薄く堆積して,樹木を倒壊させている領域,火山灰が植生に付着して白色〜灰色に変色している領域の3種類が認識された.3番目の領域は火砕流の灰かぐらによるものである可能性が高いが,森林火災によると思われる白煙が観察された場所があることから,高温の物質が含まれることを示唆する.2019年1月29日に発生した火砕流は火口からあふれ出るように発生した.気象庁監視カメラの映像から火砕流は新岳火口から西側山麓斜面に最大約600m程度の流下したことが判別できたが,東側については観察記録がない.これらの火砕流は2014〜2015年に発生した火砕流の分布(Geshi et al., 2016)と比較すると,同程度か小規模であり,新岳火口の西側に多くの火砕物が流下する傾向は変わっていない.現地での噴火堆積物の検証が期待される.
気象庁の監視カメラ映像を基に、火砕流の流下速度を計測して,2015年の火砕流と比較した.火砕流の平均流下速度は5-47m/sの範囲で,約20-30m/sの値を示すものが多い.最も遠方まで流れた2015年5月29日の火砕流が最も速く,最も短距離であった2019年1月29日が最も遅い.2019年1月29日の火砕流は発生様式が異なるが,それ以外の火砕流は噴煙柱の一部が崩れて発生した点で共通しており,速度の高い火砕流ほど流下距離が長い傾向を示す.小規模な火砕流について複数の発生・流動機構が観察されたことは,過去の噴火堆積物から噴火形態を復元する際に重要な事例となる.
謝辞:気象庁福岡管区気象台地域火山監視・警報センターおよび鹿児島地方気象台には噴火の映像を提供していただいた.ここに記して感謝いたします.