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[SVC38-13] GNSSおよびSARで捉えた2018年噴火以降の霧島山周辺の地殻変動
キーワード:霧島山、新燃岳、硫黄山、地殻変動、GNSS、SAR
はじめに
霧島山では、2017年7月以降、国土地理院のGEONETにより霧島山全体を囲む基線で伸びが観測されていたが、2018年3月の新燃岳の噴火に伴い急激な短縮が観測され、その後、再び伸びが観測されている。2011年の新燃岳噴火の際にも同様の地殻変動が観測されており、その際には新燃岳の北西地下約6~7kmのマグマ溜りの膨張・収縮が推定されている(例えば小林ほか,2012)。また、霧島山の北西に位置する硫黄山では、地球観測技術衛星だいち2号(ALOS-2)のSARデータの解析や硫黄山周辺のGNSS観測により硫黄山付近を中心とする膨張性の地殻変動が捉えられていたところ、2018年4月に硫黄山で250年ぶりの噴火が発生した。
このように、地殻変動は、霧島山の火山活動の状況を把握する上で重要な情報である。本研究では、霧島山周辺のGNSS観測点データおよびALOS-2(だいち2号)のSARデータを用い、2018年の新燃岳および硫黄山の噴火以降の霧島山の地殻変動を調査した結果について報告する。
GNSS
国土地理院では、GEONETに加え、火山周辺の地殻変動を詳細に把握するため、気象庁や防災科学技術研究所が火山近傍に設置したGNSS連続観測点のデータを用い、GEONETのF3解と整合する測位解を得る統合解析(畑中、2012)をルーチン的に行っている。本研究ではその統合解析結果を用いて、2018年3月の新燃岳噴火以降の地殻変動を詳細に調べた。その結果、新燃岳噴火に伴った収縮後、引き続き新燃岳を含む霧島山全体が膨張するような地殻変動が継続していることが明らかとなった。2018年9月以降は山体全体にわたる広い範囲での変動は鈍化したが、硫黄山、韓国岳周辺では変動が減衰しながらも継続し、11月以降は硫黄山付近を除いて変動はかなり小さくなった。
SAR
GNSS観測では変動観測の時間分解能は高いものの、観測点を設置した地点の変動しか捉えられないため、空間分解能に限界がある。霧島山周辺の地殻変動を空間的に詳細に把握するため、ALOS-2による2018年5月以降の観測データを用いてSAR干渉解析を行った。その結果、新燃岳周辺、硫黄山周辺での変動が捉えられた。新燃岳では、火口内では溶岩のわずかな膨張が見られているが、火口外では火口を中心とする収縮性の変動が生じていることが明らかとなった。硫黄山では、硫黄山付近を中心として局所的な膨張性の変動が生じている。
これらの変動について、東西両方向からのSAR干渉解析結果を用いて2.5次元解析(Fujiwara et al., 2000)を行い、準東西、準上下方向の変動量を求めた。新燃岳の火口外の収縮性の変動は、火口を中心とした沈降と東西方向の短縮を示している。なお、噴火以前の2017年までのデータを用いた干渉SAR時系列解析では、火口外では火口を中心とする膨張性の地殻変動が捉えられており(矢来ほか、2018、JpGU、森下・小林、2018、火山)、それとは逆向きである。硫黄山付近の局所的な膨張性の変動については、硫黄山のやや西を中心として隆起しており、隆起量は約7ヶ月で約5cmに達していることが明らかとなった。隆起域は数百m程度の範囲であり、変動源は地下浅部に位置すると考えられる。
解釈
GNSS及びSAR観測により、霧島山全体の変動、新燃岳や硫黄山周辺の変動が明らかとなった。変動の空間分布、時間変化等から、変動源は複数存在すると考えられ、山体全体に変動を及ぼす地下深部の変動源、硫黄山付近の浅部の変動源に加え、硫黄山や韓国岳周辺に変動を及ぼすようなやや深い変動源や、新燃岳火口直下の浅部に変動源が存在する可能性がある。今後、変動源についても考察を進める予定である。
(謝辞)SAR解析で用いたデータは、国土地理院と宇宙航空研究開発機構(JAXA)間の協定に基づき提供されたものです。また、使用したデータの一部は、火山噴火予知連絡会衛星解析グループの活動を通して得られたものです。
霧島山では、2017年7月以降、国土地理院のGEONETにより霧島山全体を囲む基線で伸びが観測されていたが、2018年3月の新燃岳の噴火に伴い急激な短縮が観測され、その後、再び伸びが観測されている。2011年の新燃岳噴火の際にも同様の地殻変動が観測されており、その際には新燃岳の北西地下約6~7kmのマグマ溜りの膨張・収縮が推定されている(例えば小林ほか,2012)。また、霧島山の北西に位置する硫黄山では、地球観測技術衛星だいち2号(ALOS-2)のSARデータの解析や硫黄山周辺のGNSS観測により硫黄山付近を中心とする膨張性の地殻変動が捉えられていたところ、2018年4月に硫黄山で250年ぶりの噴火が発生した。
このように、地殻変動は、霧島山の火山活動の状況を把握する上で重要な情報である。本研究では、霧島山周辺のGNSS観測点データおよびALOS-2(だいち2号)のSARデータを用い、2018年の新燃岳および硫黄山の噴火以降の霧島山の地殻変動を調査した結果について報告する。
GNSS
国土地理院では、GEONETに加え、火山周辺の地殻変動を詳細に把握するため、気象庁や防災科学技術研究所が火山近傍に設置したGNSS連続観測点のデータを用い、GEONETのF3解と整合する測位解を得る統合解析(畑中、2012)をルーチン的に行っている。本研究ではその統合解析結果を用いて、2018年3月の新燃岳噴火以降の地殻変動を詳細に調べた。その結果、新燃岳噴火に伴った収縮後、引き続き新燃岳を含む霧島山全体が膨張するような地殻変動が継続していることが明らかとなった。2018年9月以降は山体全体にわたる広い範囲での変動は鈍化したが、硫黄山、韓国岳周辺では変動が減衰しながらも継続し、11月以降は硫黄山付近を除いて変動はかなり小さくなった。
SAR
GNSS観測では変動観測の時間分解能は高いものの、観測点を設置した地点の変動しか捉えられないため、空間分解能に限界がある。霧島山周辺の地殻変動を空間的に詳細に把握するため、ALOS-2による2018年5月以降の観測データを用いてSAR干渉解析を行った。その結果、新燃岳周辺、硫黄山周辺での変動が捉えられた。新燃岳では、火口内では溶岩のわずかな膨張が見られているが、火口外では火口を中心とする収縮性の変動が生じていることが明らかとなった。硫黄山では、硫黄山付近を中心として局所的な膨張性の変動が生じている。
これらの変動について、東西両方向からのSAR干渉解析結果を用いて2.5次元解析(Fujiwara et al., 2000)を行い、準東西、準上下方向の変動量を求めた。新燃岳の火口外の収縮性の変動は、火口を中心とした沈降と東西方向の短縮を示している。なお、噴火以前の2017年までのデータを用いた干渉SAR時系列解析では、火口外では火口を中心とする膨張性の地殻変動が捉えられており(矢来ほか、2018、JpGU、森下・小林、2018、火山)、それとは逆向きである。硫黄山付近の局所的な膨張性の変動については、硫黄山のやや西を中心として隆起しており、隆起量は約7ヶ月で約5cmに達していることが明らかとなった。隆起域は数百m程度の範囲であり、変動源は地下浅部に位置すると考えられる。
解釈
GNSS及びSAR観測により、霧島山全体の変動、新燃岳や硫黄山周辺の変動が明らかとなった。変動の空間分布、時間変化等から、変動源は複数存在すると考えられ、山体全体に変動を及ぼす地下深部の変動源、硫黄山付近の浅部の変動源に加え、硫黄山や韓国岳周辺に変動を及ぼすようなやや深い変動源や、新燃岳火口直下の浅部に変動源が存在する可能性がある。今後、変動源についても考察を進める予定である。
(謝辞)SAR解析で用いたデータは、国土地理院と宇宙航空研究開発機構(JAXA)間の協定に基づき提供されたものです。また、使用したデータの一部は、火山噴火予知連絡会衛星解析グループの活動を通して得られたものです。