日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC38] 活動的火山

2019年5月28日(火) 10:45 〜 12:15 国際会議室 (2F)

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、西村 太志(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)、座長:及川 純為栗 健

12:00 〜 12:15

[SVC38-17] 2018年6月16日桜島南岳の噴火に伴う火砕流について

*為栗 健1井口 正人1真木 雅之2中道 治久1味喜 大介1 (1.京都大学防災研究所附属火山活動研究センター、2.鹿児島大学総合科学域総合研究学系)

キーワード:桜島火山、火砕流

桜島火山では1955年以降、山頂火口においてブルカノ式と呼ばれる爆発的噴火を繰り返している。東側山腹の昭和火口では2006年に58年ぶりに噴火が再開し、2009年以降は特に噴火活動が活発化していた。2018年以降は昭和火口から南岳山頂火口に噴火活動が再度移行している。爆発的噴火の特徴として、火山弾の放出、衝撃波の発生、急激な火山灰や火山ガスの放出が上げられる。他にも、頻度は少ないものの南岳山頂火口や昭和火口の爆発的噴火では小規模な火砕流の発生が上げられる。火砕流は高温の火砕物や火山ガスが山腹斜面を高速で流れ下るもので、火山噴火の中で最も危険な現象の一つであり、火山防災上、その発生予測は必要不可欠である。
1967年以降~1985年の間に南岳山頂火口における噴火に伴い7回の火砕流が確認されている(加茂・石原,1986)。さらに、気象庁によると2006年~2014年に昭和火口の噴火に伴い37回の火砕流発生が報告されている。いずれの火砕流も流下距離は2km未満で小規模なものであった。活発な噴火活動を続ける桜島であるが、火砕流はすべての噴火に伴うわけではなく、同規模の噴火でも火砕流が発生しない場合が多く、桜島における火砕流発生メカニズムの解明には至っていない。今後、噴火活動が活発化した際には大規模な火砕流の発生も考慮する必要があり、火砕流を伴う噴火の発生メカニズムの解明と噴火の前兆現象から火砕流が発生した場合の規模予測をすることが重要である。本研究では2012年~2018年に昭和火口で発生した火砕流、および2018年6月16日に南岳山頂火口において発生した爆発的噴火に伴う火砕流について前兆地震活動や地盤変動データの特徴を明らかにする。また、観測される前兆地震や地盤変動から火砕流が発生した場合の流下予測が可能かについて検証を行う。
6月16日に発生した南岳山頂火口における爆発的噴火では噴煙高度4700mに達した。噴石が6合目まで飛散し、火砕流が南西方向に1.3 km流下した。噴火の発生約18時間前から地盤の膨張が観測されていた。噴火の1時間ほど前から散発的に前駆地震が発生していたが、昭和火口の噴火の際に観測される前駆地震と比較するとあまり明瞭な群発活動ではなかった。噴火時の映像から火砕流は噴煙が上昇し始めた約1分後に噴煙柱の根元から降下した噴出物が斜面に流れ下って発生していたことが分かる。火砕流は噴火と同時に発生しているわけではなく、これは南岳活動期に発生していた火砕流と同じ特徴を持っている(加茂・石原,1986)。噴火による地盤変動の収縮量から噴出物量は28万m3と推定される。それら噴出物の全てが火砕流となるわけではなく、火山灰として飛散していくものもある。地盤変動の膨張量から噴火による噴出物量の予測は可能であるが、火砕流の流下予測を行うためには斜面を流下する噴出物量を推定する必要がある。気象レーダーを使用した空中に放出された火山灰量の測定や降下火山灰の実測値などから火砕流となった噴出物量の推定を行うことが可能である。これにより前兆現象である地盤膨張量から火砕流発生時の最大流下距離の予測を行う。