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[SVC38-24] 火山性地震活動把握のための機械学習による大振幅領域の推定
キーワード:火山地震学、機械学習、御嶽山
御嶽山では2014年噴火以降に地震観測網の整備が進められ、山頂から1 km以内に9点、4 km以内に17点、10 km以内に29点という世界有数の高密度観測網を有するに至った。その観測データから御嶽山では従来ほとんど発生していないと思われていた低周波地震や微動の存在が明らかになった(前田他, 2018連合大会)。これらのシグナルは他の火山での先行研究から火山浅部流体の移動や体積変化によって起きると考えられ、そうした流体の状態・振る舞いを知る上で重要なマーカーである。しかし現状はいくつかの低周波地震・微動を見つけた段階であり、御嶽山におけるこれらの地震活動の全体像は明らかになっていない。というのも風のノイズ等による偽のイベントが多数存在し、それらと真の火山起源のシグナルとの識別が困難なために手作業でのイベントカタログ作成は容易でない。これは多数の観測点の記録を少数の図を用いて十分な時間解像度で比較するのが困難なことが一因である。したがって多数の観測点から有用な情報を引き出す新しい方策が求められる。
本研究では地震・微動の活動を簡便に把握するために振幅が大きい領域の時空間分布を推定する手法を考案した。振幅は初動が不明瞭な地震活動をモニターする上で有用な指標となりうるが、観測点直下の構造の影響を受ける。その影響を軽減するため、本研究では振幅が平時に比べて有意に大きいか否かという情報を用いた。そのためにまず、振幅が平時よりも大きいか否かの判断の閾値を各トレースにおいて5分ウインドウ毎に決定した。そこでは振幅の頻度分布のうちのガウス分布に合う部分を平時、ガウス分布に合わない部分を有意に大きな振幅と見なすという考え方をとる。具体的には5分間の絶対値振幅の小さい順にNサンプルのみを用いて累積頻度分布を作成し、その分布を誤差関数でフィッティングしてずれを求め、Nを変えながらこの計算を行ってずれが最小になるNを探索し、その最適なNに対応する振幅を閾値とした。次に各トレースにおいて有意に大きな振幅をもつデータサンプルの比率を1秒毎に算出した。この比率の空間分布を入力データとして機械学習(ニューラルネットワークモデル)によってその1秒間の大振幅領域を推定した。こうして得られる1秒毎の大振幅領域の空間分布を用いれば真の火山性シグナルと偽のシグナルの識別が容易になると期待される。
御嶽山の2017年11月・12月の連続記録にこの手法を適用した。解析領域内で発生した地震の多くで大振幅領域は震央付近の比較的狭い範囲に推定されるか、または震央付近から時間とともに拡がっていくパターンを示した。一方、遠地地震やローカルノイズでは解析領域全体にわたり大振幅領域が低確率で広がる分布となった。このパターンの違いは真の火山性シグナルと偽のシグナルの識別に有用であった。但しこの方法ではごく小規模な地震・微動の見逃しは避けられない。大振幅領域を用いれば1秒につき1枚の図で済み、連続波形を詳細に検討するよりも簡便に地震活動を把握できる。また大振幅領域の時空間分布を入力データとした2段階目の機械学習による地震・微動の自動検知も試みており、暫定結果としては93%の成功率が得られている。
本研究では地震・微動の活動を簡便に把握するために振幅が大きい領域の時空間分布を推定する手法を考案した。振幅は初動が不明瞭な地震活動をモニターする上で有用な指標となりうるが、観測点直下の構造の影響を受ける。その影響を軽減するため、本研究では振幅が平時に比べて有意に大きいか否かという情報を用いた。そのためにまず、振幅が平時よりも大きいか否かの判断の閾値を各トレースにおいて5分ウインドウ毎に決定した。そこでは振幅の頻度分布のうちのガウス分布に合う部分を平時、ガウス分布に合わない部分を有意に大きな振幅と見なすという考え方をとる。具体的には5分間の絶対値振幅の小さい順にNサンプルのみを用いて累積頻度分布を作成し、その分布を誤差関数でフィッティングしてずれを求め、Nを変えながらこの計算を行ってずれが最小になるNを探索し、その最適なNに対応する振幅を閾値とした。次に各トレースにおいて有意に大きな振幅をもつデータサンプルの比率を1秒毎に算出した。この比率の空間分布を入力データとして機械学習(ニューラルネットワークモデル)によってその1秒間の大振幅領域を推定した。こうして得られる1秒毎の大振幅領域の空間分布を用いれば真の火山性シグナルと偽のシグナルの識別が容易になると期待される。
御嶽山の2017年11月・12月の連続記録にこの手法を適用した。解析領域内で発生した地震の多くで大振幅領域は震央付近の比較的狭い範囲に推定されるか、または震央付近から時間とともに拡がっていくパターンを示した。一方、遠地地震やローカルノイズでは解析領域全体にわたり大振幅領域が低確率で広がる分布となった。このパターンの違いは真の火山性シグナルと偽のシグナルの識別に有用であった。但しこの方法ではごく小規模な地震・微動の見逃しは避けられない。大振幅領域を用いれば1秒につき1枚の図で済み、連続波形を詳細に検討するよりも簡便に地震活動を把握できる。また大振幅領域の時空間分布を入力データとした2段階目の機械学習による地震・微動の自動検知も試みており、暫定結果としては93%の成功率が得られている。