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[SVC38-35] 鬼界カルデラ下の3次元電気比抵抗構造探査
私たちはこれまで、南西日本の海底にある鬼界カルデラ下の3次元電気比抵抗構造(もしくは電気伝導度構造)を明らかにするため、電磁気学的な探査を行ってきた。電気比抵抗値は、海底下の地殻や上部マントルの温度構造、部分溶融帯(もしくはマグマ)や流体の存在により大きく変化する。そのため、鬼界カルデラ下の電気比抵抗構造を明らかにすることにより、このカルデラ下の地殻・上部マントル中のマグマ溜まりの分布、カルデラの火山構造や活動度について重要な知見を得ることができる。本研究の電磁気学的探査は、神戸大学大学院海事科学研究科附属練習船「深江丸」により2016年10月から行っている鬼界カルデラ総合探査の一環として行っている。年2回の探査航海により、海底電位差磁力計(OBEM)を、場所を変えて設置と回収を繰り返し行い、3次元の電気比抵抗構造を解明するために有効なデータを取得している。これまで13の観測点に機器を設置し、10観測点で解析に有効なデータを得ている。これら10観測点は海底の鬼界二重カルデラ域のおよそ13 km × 16 kmの範囲をカバーしており、観測点間隔はおよそ5-10 kmほどである。海底電位差磁力計は、海底での電磁場の時間変動を8 Hzと60 sのサンプリング間隔で測定・記録している。同時に、機器の傾斜と温度も測定・記録している。観測時系列データには、海底において機器が振動していると考えられる期間が見られた。この振動の原因は、この海域付近の黒潮流と島々間の強い海流、火山域の溶岩からできる凹凸の激しい海底上での海底機器の不安定な設置状況によると考えられる。このような観測データを注意深く調べ、使用するデータ期間を選択し、最終的に10の観測点において周期21 sから8192 sのMT(MagnetoTellurics)応答関数をBIRRPプログラム[Chave and Thomson, 2004]を使用して推定した。推定したMT応答関数を用い、3次元の電気比抵抗構造をUsui et al. [2018]のインバージョンプログラムにより推定した。MT応答関数に強い地形効果を及ぼす可能性のある観測点周辺の海底地形の起伏は、インバージョンモデルの中に四面体メッシュで組み込んだ。暫定的な3次元インバージョンモデル(データとモデル計算値のRMSミスフィットは~1.7)は、深さ5-10 kmより浅い部分では3-10 Ω-mの高電気伝導度で、その厚さは西側ほど薄く東側ほど厚いという特徴を示す。一方、さらに深部の10-30 kmの深さでは、30-300 Ω-mのより低電気伝導度の領域が広がるという特徴を示す。