日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC38] 活動的火山

2019年5月27日(月) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、西村 太志(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)

[SVC38-P08] 本白根山における2018年噴火後の自然電位および地磁気全磁力観測

*山崎 明1飯野 英樹1田中 達朗1 (1.気象庁地磁気観測所)

キーワード:草津白根山、本白根山、自然電位観測、全磁力繰返し観測、熱消磁

2018年1月23日、草津白根山の本白根山で水蒸気噴火が発生し、鏡池北火砕丘や鏡池に複数の噴火口が形成された。噴火後、一時活発化した噴火口付近のごく浅部を震源とする地震活動は減少し、また噴気等の熱的な表面活動も同年2月下旬以降は終息している。気象庁地磁気観測所では噴火後の本白根山地下の熱的状態を把握することを目的として、本白根山山頂周辺部において自然電位観測および地磁気全磁力観測を実施した。
 自然電位の測定はこれまでに数多くの火山で実施され、火山活動との関係について研究され、主に火山地下浅部の熱水対流との関係性について議論されてきた。しかし、最近の研究では、自然電位分布は比抵抗構造や浸透率、ゼータ電位等に依存し、解釈が難しい面のあることも指摘されている。本白根山においては、2003年の第4回草津白根山集中総合観測(以下、2003年集中観測と略す)で実施された自然電位観測の中で、鏡池北火砕丘の北部から東部の遊歩道沿いで自然電位測定がなされたのが唯一であり、山頂部周辺の自然電位の全体的分布はこれまでわかっていなかった。
 こうした背景を踏まえ、2018年6月30日から7月2日にかけて本白根山山頂部周辺の約130点において自然電位の測定を実施した。電極は銅・硫酸銅電極を使用し、測定間隔は約50m、測定方法はいわゆる全電位法で行った。地形効果の補正は、鏡池の東側斜面の測線において標高と電位に明瞭な負の相関(-1.3mV/m)が認められたため、この相関係数を全測点に適用することにより行った。その結果、本白根山山頂部周辺では200~500mVの正の電位分布を示すことがわかった。特に鏡池の西~南西側や、2018年の噴火の主噴火口がある鏡池北火砕丘の周縁部などで局所的に電位が高い領域が認められた。これらの領域では、山体上部への熱水の流れが周囲よりも卓越していることが可能性の一つとして考えられる。また、2003年集中観測時の測定結果と比較したところ、鏡池北火砕丘噴火口の北~北東部において100mV程度の有意な電位の時間変化のあることがわかった。この変化は2018年の噴火に関連して地下水の流れが変わったことを反映している可能性も示唆される。
 地磁気全磁力観測については、本白根山山頂部周辺に全磁力繰返し観測点を10点選定し携帯型のプロトン磁力計を用いて観測をおこなった。2018年6月(6/28-30)に1度目の観測をした後、8月(8/28-29)および10月(10/7)に繰返し観測を実施した。その結果、約3ヶ月の期間に明瞭な全磁力変化は観測されず、噴火後の本白根山において急速な熱消磁もしくは冷却による帯磁は発生していないことが確認された。
 なお、自然電位および地磁気全磁力とも今年再度観測を行い、時間的変化の有無を調査する予定である。