[SVC38-P09] 新潟焼山第3・4期噴出物の石基組織解析及び化学組成分析による噴出プロセスの検討
キーワード:新潟焼山、焼山溶岩流、大谷火砕流堆積物、前山溶岩流、早川火砕流堆積物、斜長石マイクロライト
新潟県西部,妙高火山群の北端に位置する新潟焼山火山は,約3000年前から溶岩流と火砕流を流出する噴火を繰り返してきた,火山群の中で最も新しい活火山である(例えば早津,1993;1994;2008).焼山活動史上最大規模であったとされる第3期の活動では,前山溶岩流・早川火砕流が噴出し,それに続く第4期活動では、現在の山頂溶岩ドームを形成した焼山溶岩流と良く発泡した溶岩を含む大谷火砕流 I が噴出した(早津,2008).第3期噴出物は安山岩質とデイサイト質からなる不均質な溶岩で(前山溶岩流:SiO2=52.8~63.9wt.%,早川火砕流堆積物:SiO2=54.8~64.1wt.%;小林・石崎,2014),𠮷田・齋藤(2018,JPGU)では,これらを対象に石基マイクロライトの組織解析を行い,安山岩とデイサイトのマイクロライトは過冷却度の異なる条件下で噴出した可能性を示した.今回は,第4期噴出物の石基組織解析と第 3・4 期噴出物の長石結晶の化学組成分析を行い,組織解析と化学組成分析の結果から各噴出物の噴出プロセスについて考察する.
大谷火砕流堆積物 I の組織分析の結果,早川火砕流堆積物(NA=5700~11000)と比べて低い数密度(NA=1300~3300)を示した.結晶度は,早川火砕流堆積物中の安山岩質溶岩(φ=0.23~ 0.27)とデイサイト質溶岩(φ=0.02~0.03)の中間の値(φ=0.10~0.25)を示した.斜長石結晶の化学組成分析の結果,第3期噴出物の斑晶からAn#(Ca/Ca+Na)=065~0.84 が得られた.前山溶岩流の安山岩質溶岩のマイクロライトは,An#=0.38~0.82 で平均値は An#=0.61 を示す.前 山溶岩流のデイサイト質溶岩のマイクロライトは,An#=0.27~0.73,平均値は An#=0.54 で比較的An成分に乏しい値を示す.早川火砕流堆積物中の安山岩質溶岩のマイクロライトは,An#=0.34~0.91 で平均値は An#=0.58 を示す.第4期噴出物の斑晶は,An#=0.45~0.89 である.焼山溶岩流のマイクロライトは,An#=0.34~0.79 で平均値は An#=0.63 を示し,大谷火砕流堆積物 I のマイクロライトは,An#=0.35~0.90,平均値 An#=0.62 の組成を示す.また,長石マイクロライトの An#は,結晶のサイズが小さくなるに従い低い値となることが示された.
一般に,減圧過程で結晶化する斜長石マイクロライトの組成は,脱水に伴う減圧が進むにつれAn 成分に乏しくなることが知られている(例えば中村,2011).斜長石の An#が低い結晶は,より強い減圧の影響を受けて結晶化したと考えられる.化学組成分析の結果,第3期噴出物に関しては,デイサイト質溶岩の An#が安山岩質溶岩に比べて低い値を示したことから,デイサイト質溶岩はより減圧の影響を受けて結晶が形成されたと考えられる.𠮷田・齋藤(2018,JPGU)では,第3期噴出物のデイサイト質溶岩は安山岩質溶岩に比べ数密度が高く,結晶度が低いことから,過冷却度の高い条件で核形成が多く行われたことを報告した.このことからデイサイト質溶岩は過冷却度が高く,減圧の強い影響を受けたことが示唆される.一方,溶岩流と火砕流とでは大きな違いは認められず,斜長石のマクロライトから,両者の噴火プロセスの違いを明らかにすることはできなかった.第4期噴出物は第3期噴出物と異なり,比較的均質な化学組成を示すことが知られている(SiO2=57.5~59.0wt.%;小林・石崎,2013).第4 期噴出物の大谷火砕流堆積物 I は第3期噴出物の早川火砕流堆積物に比べて低い数密度を示したことから,早川火砕流堆積物と比べて低い過冷却度で結晶化した可能性が示唆される.大谷火砕流堆積物 I の An組成は,早川火砕流堆積物より高い An#の値を示したことから,減圧の影響はより低いと考えられる.大谷火砕流は早川火砕流と比べて噴出速度が低く,そのため過冷却度が低く,減圧の影響も低かった可能性がある.一方で大谷火砕流堆積物 I は良く発泡した溶岩からなり,マイクロライトの結晶化以前に急激な発泡が進行した可能性もある.その場合,結晶化以前にメルトから脱水が進行したことによって,減圧に伴う An#の低下が十分起こらなかった可能性もある.
大谷火砕流堆積物 I の組織分析の結果,早川火砕流堆積物(NA=5700~11000)と比べて低い数密度(NA=1300~3300)を示した.結晶度は,早川火砕流堆積物中の安山岩質溶岩(φ=0.23~ 0.27)とデイサイト質溶岩(φ=0.02~0.03)の中間の値(φ=0.10~0.25)を示した.斜長石結晶の化学組成分析の結果,第3期噴出物の斑晶からAn#(Ca/Ca+Na)=065~0.84 が得られた.前山溶岩流の安山岩質溶岩のマイクロライトは,An#=0.38~0.82 で平均値は An#=0.61 を示す.前 山溶岩流のデイサイト質溶岩のマイクロライトは,An#=0.27~0.73,平均値は An#=0.54 で比較的An成分に乏しい値を示す.早川火砕流堆積物中の安山岩質溶岩のマイクロライトは,An#=0.34~0.91 で平均値は An#=0.58 を示す.第4期噴出物の斑晶は,An#=0.45~0.89 である.焼山溶岩流のマイクロライトは,An#=0.34~0.79 で平均値は An#=0.63 を示し,大谷火砕流堆積物 I のマイクロライトは,An#=0.35~0.90,平均値 An#=0.62 の組成を示す.また,長石マイクロライトの An#は,結晶のサイズが小さくなるに従い低い値となることが示された.
一般に,減圧過程で結晶化する斜長石マイクロライトの組成は,脱水に伴う減圧が進むにつれAn 成分に乏しくなることが知られている(例えば中村,2011).斜長石の An#が低い結晶は,より強い減圧の影響を受けて結晶化したと考えられる.化学組成分析の結果,第3期噴出物に関しては,デイサイト質溶岩の An#が安山岩質溶岩に比べて低い値を示したことから,デイサイト質溶岩はより減圧の影響を受けて結晶が形成されたと考えられる.𠮷田・齋藤(2018,JPGU)では,第3期噴出物のデイサイト質溶岩は安山岩質溶岩に比べ数密度が高く,結晶度が低いことから,過冷却度の高い条件で核形成が多く行われたことを報告した.このことからデイサイト質溶岩は過冷却度が高く,減圧の強い影響を受けたことが示唆される.一方,溶岩流と火砕流とでは大きな違いは認められず,斜長石のマクロライトから,両者の噴火プロセスの違いを明らかにすることはできなかった.第4期噴出物は第3期噴出物と異なり,比較的均質な化学組成を示すことが知られている(SiO2=57.5~59.0wt.%;小林・石崎,2013).第4 期噴出物の大谷火砕流堆積物 I は第3期噴出物の早川火砕流堆積物に比べて低い数密度を示したことから,早川火砕流堆積物と比べて低い過冷却度で結晶化した可能性が示唆される.大谷火砕流堆積物 I の An組成は,早川火砕流堆積物より高い An#の値を示したことから,減圧の影響はより低いと考えられる.大谷火砕流は早川火砕流と比べて噴出速度が低く,そのため過冷却度が低く,減圧の影響も低かった可能性がある.一方で大谷火砕流堆積物 I は良く発泡した溶岩からなり,マイクロライトの結晶化以前に急激な発泡が進行した可能性もある.その場合,結晶化以前にメルトから脱水が進行したことによって,減圧に伴う An#の低下が十分起こらなかった可能性もある.