[SVC38-P19] 伊豆大島最北部碁石浜におけるカルデラ形成以前の火山噴出物とその堆積年代
キーワード:伊豆大島火山、火山噴出物、新島宮塚山テフラ、C14年代測定
はじめに
伊豆大島火山はここ最近では1986年に噴火しており,近い将来噴火が予想される活動的な活火山である.その火山に関する研究は古くから行われており,また多岐の分野にわたって多く研究が行われてきた(例えば中村,1964;小山・早川,1996;川辺,2012など).しかしながら,カルデラ形成以降のカルデラ形成期・後カルデラ火山(川辺,1998)の火山体活動期に関する研究は数多く行われているものの,先カルデラ火山新期山体以前の火山体活動期,またそれに関する火山噴出物の記載の研究は少ない.本研究ではその記載に乏しい伊豆大島火山の先カルデラ火山新期山体以前の火山噴出物の調査を行い,過去の噴火活動を解明することを目的とする.過去の火山噴出物の記載およびそこから考えられる噴火のデータは,今後の噴火予測や火山防災を考える上で重要なデータとなるはずである.
今回の研究対象地は伊豆大島最北部に位置する乳ヶ崎および風早崎の二つの岬に挟まれた碁石浜と呼ばれる海岸で,横幅約1 km,高さ約30-40 mに及ぶ海食崖に沿って火山噴出物が露出している.碁石浜で観察できる火山噴出物の記載は一色(1984)によって行われており,旧火山体である岡田火山および先カルデラ火山古期山体の噴出物の報告が主である.しかしその記載報告は碁石浜内の一部にとどまり,またテフラ層序学的な記載と議論は行われていない.本研究では,碁石浜の海食崖に露出する火山噴出物の調査を改めて詳細に行った.そしてその記載の結果,観察できる層準について新たな見解がいくつか得られたので報告する.
結果
本研究では,31枚の噴火イベント噴出物から構成される降下テフラ群を碁石浜降下テフラ堆積物群と名付けた.同堆積物群内で見られる,黒色腐植土層3層準を試料採取し放射性炭素年代の測定を行ったところ,上位から11076-10713,12027-11747,18117-17803 cal BPという年代値が得られた.これによりこの碁石浜降下テフラ堆積物群が約2万年以降の先カルデラ火山新期山体の噴出物であることが判明した.一色(1984)を含め過去の報告でも,碁石浜で先カルデラ火山新期山体の噴出物記載の報告はない.今後の課題として,この層準と田沢(1980)によるO1~O95の95部層区分を対比する必要がある.
さらに本研究で,碁石浜降下テフラ堆積物群内に,白色を呈した粒径1mmほどの細粒軽石がわずかに散っているのを確認した.その層準を試料採取し,洗浄した後に鏡下観察を行ったところ,無色透明の軽石型火山ガラスが確認された.また,その火山ガラスの主成分化学組成を測定したところ,SiO2=78.07 wt.%,CaO=0.61 wt.%,FeO=0.75 wt.%,Al2O3=12.74 wt.%,K2O=3.29 wt.%という値を示し,流紋岩質テフラであることがわかった.これは玄武岩質マグマを噴出する大島火山起源のテフラではなく,神津島火山や新島火山などの島外の火山起源の流紋岩質テフラと考えられる.碁石浜降下テフラ堆積物群の層準は先カルデラ火山新期山体と考えられるため,この流紋岩質テフラはO55(新島宮塚山テフラ)(齋藤ほか,2007)と対比できる可能性がある.このように本研究では碁石浜の火山噴出物の記載から堆積年代について新たな見解が得られ,また流紋岩質テフラが新たに確認された.今後は今回の調査地と他の露頭との対比,そして流紋岩質テフラの確実な対比を課題とする.また本来の目的である先カルデラ火山新期山体以前の噴火の特徴について解明するというまでに至らなかったため,今後の課題として検討していく必要がある.
伊豆大島火山はここ最近では1986年に噴火しており,近い将来噴火が予想される活動的な活火山である.その火山に関する研究は古くから行われており,また多岐の分野にわたって多く研究が行われてきた(例えば中村,1964;小山・早川,1996;川辺,2012など).しかしながら,カルデラ形成以降のカルデラ形成期・後カルデラ火山(川辺,1998)の火山体活動期に関する研究は数多く行われているものの,先カルデラ火山新期山体以前の火山体活動期,またそれに関する火山噴出物の記載の研究は少ない.本研究ではその記載に乏しい伊豆大島火山の先カルデラ火山新期山体以前の火山噴出物の調査を行い,過去の噴火活動を解明することを目的とする.過去の火山噴出物の記載およびそこから考えられる噴火のデータは,今後の噴火予測や火山防災を考える上で重要なデータとなるはずである.
今回の研究対象地は伊豆大島最北部に位置する乳ヶ崎および風早崎の二つの岬に挟まれた碁石浜と呼ばれる海岸で,横幅約1 km,高さ約30-40 mに及ぶ海食崖に沿って火山噴出物が露出している.碁石浜で観察できる火山噴出物の記載は一色(1984)によって行われており,旧火山体である岡田火山および先カルデラ火山古期山体の噴出物の報告が主である.しかしその記載報告は碁石浜内の一部にとどまり,またテフラ層序学的な記載と議論は行われていない.本研究では,碁石浜の海食崖に露出する火山噴出物の調査を改めて詳細に行った.そしてその記載の結果,観察できる層準について新たな見解がいくつか得られたので報告する.
結果
本研究では,31枚の噴火イベント噴出物から構成される降下テフラ群を碁石浜降下テフラ堆積物群と名付けた.同堆積物群内で見られる,黒色腐植土層3層準を試料採取し放射性炭素年代の測定を行ったところ,上位から11076-10713,12027-11747,18117-17803 cal BPという年代値が得られた.これによりこの碁石浜降下テフラ堆積物群が約2万年以降の先カルデラ火山新期山体の噴出物であることが判明した.一色(1984)を含め過去の報告でも,碁石浜で先カルデラ火山新期山体の噴出物記載の報告はない.今後の課題として,この層準と田沢(1980)によるO1~O95の95部層区分を対比する必要がある.
さらに本研究で,碁石浜降下テフラ堆積物群内に,白色を呈した粒径1mmほどの細粒軽石がわずかに散っているのを確認した.その層準を試料採取し,洗浄した後に鏡下観察を行ったところ,無色透明の軽石型火山ガラスが確認された.また,その火山ガラスの主成分化学組成を測定したところ,SiO2=78.07 wt.%,CaO=0.61 wt.%,FeO=0.75 wt.%,Al2O3=12.74 wt.%,K2O=3.29 wt.%という値を示し,流紋岩質テフラであることがわかった.これは玄武岩質マグマを噴出する大島火山起源のテフラではなく,神津島火山や新島火山などの島外の火山起源の流紋岩質テフラと考えられる.碁石浜降下テフラ堆積物群の層準は先カルデラ火山新期山体と考えられるため,この流紋岩質テフラはO55(新島宮塚山テフラ)(齋藤ほか,2007)と対比できる可能性がある.このように本研究では碁石浜の火山噴出物の記載から堆積年代について新たな見解が得られ,また流紋岩質テフラが新たに確認された.今後は今回の調査地と他の露頭との対比,そして流紋岩質テフラの確実な対比を課題とする.また本来の目的である先カルデラ火山新期山体以前の噴火の特徴について解明するというまでに至らなかったため,今後の課題として検討していく必要がある.