[SVC38-P22] 伊豆諸島神津島火山の最新期活動におけるテフラ層序とその噴火史
キーワード:テフラ層序、14C年代、噴火史、神津島火山
伊豆諸島神津島火山は,流紋岩の溶岩ドーム及び同質の火砕丘群で構成されており,その形成史は地質層序及び岩石鉱物学的特徴,ESR法等の各種年代値によって構築されている(谷口,1977;一色,1982;菅ほか,1992,2003;横山ほか,2004等)。これらの知見を基づくと,神津島火山は,現在の陸上火山体の土台をなす基底溶岩(砂糠山,観音浦等;約70~ 64 ka,長浜,面房等;約52~35 ka)の噴出後,それに載る溶岩ドーム群及び火砕丘群(那智山,じょうご山,高処山-松山鼻・長っ崎火山列等;約32~23 ka,神戸山-花立山火山列,天上山等;約3.4 ka以降)が形成され,全体として,数万年間隔で活動活発期と休止期を繰り返してきたようにみえる。また,現在の活発期の前に約2万年以上の休止期の存在が推定されるが,比較的新しい火山地形が複数確認できるにも関わらず,この時期における噴火堆積物の有無等に関する知見はなく,噴火活動の実態は不明である。
本研究では,神津島南部から噴出し島全体を覆う火砕堆積物である秩父山Aテフラ(約22~26 ka:菅ほか,1992,2003)より新しい活動を「最新期活動」と定義し,この間のテフラ層序を構築するとともに,神津島火山のより詳細な噴火履歴の構築を目指して調査を進めている。
DEMデータを利用した地形判読の結果,最新期活動に関連する新しい火山地形として,神津島中央部を構成する天上山火山体(火砕丘,溶岩ドーム群),島北部に神戸山-花立山火山列(溶岩ドーム群),櫛ヶ峯(火砕丘)を抽出した。
地質調査の結果,最新期活動期において,少なくとも8の噴火イベントに関連する堆積物を確認した。神津島北部の那智山北部(Loc. 16)では,上位より,軽石・火山礫及び粗粒火山灰等の互層からなる火砕サージ堆積物(no. 16-1:天上山テフラ(AD 838)),変質した火山礫・火山岩塊を含む降下火砕物(no. 16-2),層厚10 cmの軽石混じりの中粒~細粒火山灰からなる降下火砕物(no. 16-3),径数mmのスコリアの密集層準(no. 16-4),粗粒火山灰の密集層準(no. 16-5)を確認した。一方,神津島南部のあかばね洞門(Loc. 4)では,天上山テフラ(no. 4-1),粗粒火山灰の密集層準(no. 4-2),層厚約3 cmの軽石混じり中粒~細粒火山灰(no. 4-3),径数mmのスコリアの密集層準(no. 4-4),層厚9 cmの細粒火山灰(no. 4-5),層理構造が発達する火山礫・粗粒火山灰の互層からなる火砕サージ堆積物(no. 4-6)を確認した。また,K-Ah起源の火山ガラスをno.4-2とno. 4-3の間の層準から多く検出した。これらの噴火堆積物のうち,no. 16-2は神津島中央~北部にしか分布しないことから,これらの地域を給源とする噴火活動の存在が示唆される。また,軽石混じり中粒~細粒火山灰(no. 16-3 とno. 4-3を対比),細粒火山灰(no. 4-5)は,非常に明瞭な地層を形成することから,比較的規模の大きな噴火による噴出物で広域性を有するテフラとして着目できる。
テフラ層直下の腐植土もしくはローム層中に散在する炭化木片を対象に14C年代測定を行った。no. 16-2に対比される降下火砕物の下位より1300±20 yr BPの年代値を得た(Loc. 15:262m山北西)。また,Loc. 4では,no. 4-2上部で5790±30 yr BP,no. 4-3の上位及び下位で8850±30 yr BP及び9390±30 yr BP,no.4-6直下で12030±30 yr BPの年代値を得た。暦年較正及び他テフラとの層序関係を考慮すると,最新期活動期におけるテフラの年代は,約1.1~1.2 ka(no. 16-2),約7.5 ka(no.16-3 / no. 4-3),約10 ka(no. 4-4),約13.5 ka(no. 4-6)と解釈できる。
現在,各テフラについて,鉱物組成,火山ガラスの屈折率及び主成分化学組成の分析を進めており,神戸山-花立山火山列及び櫛ヶ峯起源の火砕物,並びに新島火山起源テフラ(宮塚山,式根島,新島山南部:小林ほか,2018)との対比の観点から検討を進めている。発表では,これらの検討結果を踏まえた,神津島火山の最新期活動における噴火史を報告する。
本研究では,神津島南部から噴出し島全体を覆う火砕堆積物である秩父山Aテフラ(約22~26 ka:菅ほか,1992,2003)より新しい活動を「最新期活動」と定義し,この間のテフラ層序を構築するとともに,神津島火山のより詳細な噴火履歴の構築を目指して調査を進めている。
DEMデータを利用した地形判読の結果,最新期活動に関連する新しい火山地形として,神津島中央部を構成する天上山火山体(火砕丘,溶岩ドーム群),島北部に神戸山-花立山火山列(溶岩ドーム群),櫛ヶ峯(火砕丘)を抽出した。
地質調査の結果,最新期活動期において,少なくとも8の噴火イベントに関連する堆積物を確認した。神津島北部の那智山北部(Loc. 16)では,上位より,軽石・火山礫及び粗粒火山灰等の互層からなる火砕サージ堆積物(no. 16-1:天上山テフラ(AD 838)),変質した火山礫・火山岩塊を含む降下火砕物(no. 16-2),層厚10 cmの軽石混じりの中粒~細粒火山灰からなる降下火砕物(no. 16-3),径数mmのスコリアの密集層準(no. 16-4),粗粒火山灰の密集層準(no. 16-5)を確認した。一方,神津島南部のあかばね洞門(Loc. 4)では,天上山テフラ(no. 4-1),粗粒火山灰の密集層準(no. 4-2),層厚約3 cmの軽石混じり中粒~細粒火山灰(no. 4-3),径数mmのスコリアの密集層準(no. 4-4),層厚9 cmの細粒火山灰(no. 4-5),層理構造が発達する火山礫・粗粒火山灰の互層からなる火砕サージ堆積物(no. 4-6)を確認した。また,K-Ah起源の火山ガラスをno.4-2とno. 4-3の間の層準から多く検出した。これらの噴火堆積物のうち,no. 16-2は神津島中央~北部にしか分布しないことから,これらの地域を給源とする噴火活動の存在が示唆される。また,軽石混じり中粒~細粒火山灰(no. 16-3 とno. 4-3を対比),細粒火山灰(no. 4-5)は,非常に明瞭な地層を形成することから,比較的規模の大きな噴火による噴出物で広域性を有するテフラとして着目できる。
テフラ層直下の腐植土もしくはローム層中に散在する炭化木片を対象に14C年代測定を行った。no. 16-2に対比される降下火砕物の下位より1300±20 yr BPの年代値を得た(Loc. 15:262m山北西)。また,Loc. 4では,no. 4-2上部で5790±30 yr BP,no. 4-3の上位及び下位で8850±30 yr BP及び9390±30 yr BP,no.4-6直下で12030±30 yr BPの年代値を得た。暦年較正及び他テフラとの層序関係を考慮すると,最新期活動期におけるテフラの年代は,約1.1~1.2 ka(no. 16-2),約7.5 ka(no.16-3 / no. 4-3),約10 ka(no. 4-4),約13.5 ka(no. 4-6)と解釈できる。
現在,各テフラについて,鉱物組成,火山ガラスの屈折率及び主成分化学組成の分析を進めており,神戸山-花立山火山列及び櫛ヶ峯起源の火砕物,並びに新島火山起源テフラ(宮塚山,式根島,新島山南部:小林ほか,2018)との対比の観点から検討を進めている。発表では,これらの検討結果を踏まえた,神津島火山の最新期活動における噴火史を報告する。