日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

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[U-04] 地球惑星科学における高速過程を捉える

2019年5月29日(水) 13:45 〜 15:15 103 (1F)

コンビーナ:芳野 極(岡山大学惑星物質研究所)、丹下 慶範(高輝度光科学研究センター)、座長:芳野 極(岡山大学)、河野 義生(愛媛大学地球深部ダイナミクスセンター)、丹下 慶範

13:48 〜 14:00

[U04-01] 地球惑星科学における高速過程 研究組織の構築に向けて

★招待講演

*芳野 極1 (1.岡山大学惑星物質研究所)

キーワード:高速過程、破壊、衝突、噴火

地球惑星の進化において、巨大隕石の衝突による恐竜の絶滅に代表される地質学的時間スケールでの進化とは異なる短いスケールで起こったイベントが全地球惑星規模の進化、環境に劇的な変化をもたらす。このような事象の理解には、地震活動に代表されるような破壊過程・火山活動における噴火過程・巨大隕石衝突過程のような高速過程の理解が不可欠である。これらの現象は現在においてもいつ起きてもおかしくない事象であることから、防災面においても重要な研究課題である。本講演ではこれらの現象の素過程の解明とそれが及ぼす影響に関する研究を融合させることを提案し、分野融合型の研究組織の構築することを目的とする。

 近年、大型放射光施設やX線自由電子レーザー施設における測定実験技術の進展により、極限環境下で起こるカタストロフィックな現象は、数分(>102s)からフェムト秒(10-15s)にわたる幅広い時間スケールで補足可能になってきた。放射光と大容量プレスによる高圧実験を組み合わせた測定では、静的な過程の観察から変形・減衰・破壊といった動的な過程を捉える方向へと研究の力点がシフトしつつあり、ミリ秒スケールまでの高速過程を検出できる状況が整備されつつある。またX線自由電子レーザーを用いた研究では、高強度レーザーを用いた衝撃圧縮実験時に、衝突過程を100ピコ秒スケールで詳細に追える状況が実現している。さらにスーパーコンピューターを用いた計算機科学分野でも高速過程再現実験の進展が著しく、原子スケールから巨大天体衝突に至るまでシームレスに高速過程を捉える研究を統括できる時期が到来している。高速過程の研究は、それぞれの事象において独立して研究が進められてきたが、高速過程を捉える手法、その素過程における現象は共通する面も多い。これら物質科学・観測・数値モデルといった数多くの手法を取り入れ、効率的に「知」を運用できる研究ネットワークを形成することを目標として、本セッションを企画した。このネットワークを確立し活用することによって、地球惑星科学における高速のダイナミクスを包括的に理解すると同時に、地球規模でのインパクトについても新しい知見を得て、新たなパラダイムシフトを起こすことが期待される。