日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 U (ユニオン) » ユニオン

[U-04] 地球惑星科学における高速過程を捉える

2019年5月29日(水) 13:45 〜 15:15 103 (1F)

コンビーナ:芳野 極(岡山大学惑星物質研究所)、丹下 慶範(高輝度光科学研究センター)、座長:芳野 極(岡山大学)、河野 義生(愛媛大学地球深部ダイナミクスセンター)、丹下 慶範

15:00 〜 15:15

[U04-06] 火山噴出物の解析にもとづく噴火物理パラメータの推定 –噴火ダイナミクスの理解進展に向けて−

★招待講演

*前野 深1 (1.東京大学地震研究所)

キーワード:火山噴火、噴出量、噴出率、物理パラメータ

火山噴火で地表に噴出するマグマの噴出量・噴出率は,地殻浅部におけるマグマの蓄積・移動の時空間スケールや,噴火に伴う地表現象の種類・性質の理解において重要な指標となる。1回の火山噴火の「噴出量」は,噴火の規模を決めるための最も基礎的物理パラメータであるとともに,その中長期におよぶ変遷はマグマの蓄積過程や噴火発生頻度と関係し,火山活動全体の理解においても重要である。一方,噴火時のマグマの「噴出率」は,マグマ上昇過程と密接に関係し,噴火様式の多様性や推移,噴火の強度,噴煙高度などを支配するパラメータで,噴出量とともに噴火現象の理解において重要である。これらマグマの噴出量・噴出率(噴火物理パラメータ)の解明は,マグマ上昇に伴い地殻内および地表で発生する様々な火山現象の理解において鍵となり,その推定精度の向上は,火山活動と噴火現象の多様性の原因や,マグマ溜り−火道システムの理解を進めるために必要不可欠である。噴火の多様性を支配する要因の一つである噴出率は,噴出物の微細構造・組織や化学組成不均質など,マグマの上昇・減圧に起因する噴出物の特徴に大きく影響を与える。このような噴火物理パラメータと噴出物の物質科学的特徴との関係解明は,火山噴火の理解を大きく進める可能性がある。一方,近年の火山噴火では,噴出物・堆積物データと地上や衛星からの多様かつ豊富な観測データと比較することで,マグマの地表への噴出から堆積までのプロセスが高い解像度で捉えられるようになってきており,そこから得られる知見は,過去の火山噴火の復元においても重要な制約となることが期待される。噴火物理パラメータの解明は,火山噴火ダイナミクスの理解のみならず,噴火に伴う災害や将来の噴火を予測するにおいても重要である。本発表では,近年の火山噴火や過去の超巨大噴火における噴火物理パラメータの解明研究について紹介し,課題についても述べる。